【 わたしの好きなひと 】#71. 星ちゃんの弱音*

わたしの好きなひと。

#71.

お正月時期は帰省者も多いため飛行機は高い。
星ちゃんはあえて繁忙期を避け、1月の中旬に一度帰国した。

私は星ちゃんと成田空港で待ち合わせをしていた。
4ヶ月ぶりの生の星ちゃん、
テレビ電話で毎日話していてもやっぱり生で会うのとは話が違ってくる。
だからー--・・・
何かいつも以上に緊張している自分がいた。

成田空港に向かう電車の中から星ちゃんに会ったら何を話そう、
普通にふるまえるかな、そればかり考えていた。
だけどそれ以上に、電話越しじゃない、直接会って星ちゃんと話せることに私は興奮を隠せなかった。
ー--だから星ちゃんの到着予定より一時間半も早く到着してしまった。
一時間半・・・
長いなぁ、と感じつつもとりあえずスタバに入って大好きなチャイラテを飲む。
大好きな一人のカフェ時間だからこそ時間はあっという間に過ぎて・・・
気が付いたらもうすぐ星ちゃんが到着する時刻になっていた。

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ーーー16:38着予定。
電光掲示板を見ても到着済み、と書いてあるだけで人の流れはまだ来ていないように見える。
国際線は荷物も多いし、そんな簡単に来ないかーーー。
「・・・もしもし。」
「もう空港についてる?」
「うん、今ロビーにいるよ。」
「税関終わったところだから、あと荷物取ったら行けると思うよ。あと少し、ごめんな」
「全然、外で待ってるね。」
星ちゃんからの着信ーーー、
普通のことなんだけど、たったそれだけのことなんだけどすごくすごく嬉しかった。

ようやく彼が出てきたのは17時を過ぎた頃ーーー。
4ヶ月振りの再会だったのにも感動の再会なんてものはなく、
彼はとにかく疲れ果てた顔をしていた。
いつものイケメン星ちゃんはどこへ・・・(笑)
長時間の飛行機で疲労困憊と言った感じかな・・・。
とりあえずどこにも寄ることなく私たちはまだ私が住んでいるあのマンションに戻った。
ーーー元気だったらそのまま実家に顔を出そうって話も出ていたけど、
明らかにそんな元気は彼には残されていなかった。
話を聞いてみたら・・・
飛行機の気圧が強すぎて揺れが酷く、星ちゃんが恐怖を感じたらしい。
そしたら寝なきゃならないのに全然寝られなかった、ということだった。
ーーー意外と繊細なのね、なんて心で思いながら私は星ちゃんの話を聞いていた。

「はぁぁぁぁぁ、疲れた・・・。マジで疲れた・・・。」
「お疲れ様ね?今日はもう寝た方が・・・」
2人のマンションに戻った星ちゃんは片づけることなくお風呂に浸かった。
いつもは速攻で出る星ちゃんだったけどこの日に関しては結構長風呂していたんじゃないかなと思うよ。
ーーー変わらないこのマンションに安心する星ちゃん、
前と変わらず隣に座って手を繋ぐこの瞬間・・・
当たり前だった光景が当たり前でないことを思い知らされていた4ヶ月だった。
ーーー寂しかったな、そう思った。
「男の影がないか、確認させてもらうまでは寝ないよ?(笑)」
えっ、さっきまでの疲れ果てていた星ちゃんは?
と疑いたくなるほど彼はなぜか元気になっていたーーー。

「ーーーアメリカにいてもさ、ルナが隣にいないってだけで居心地悪いんだよなぁ。今、この家の方がホッとしてる。」
男女の情事を終えて、男の影が全くないことを確認した星ちゃん。
満足したような顔をして、私にも星ちゃんに女の影がないことを確認させていた・・・。
そんなことをさせる時点でないって確証があるんだろうけどね。
「私は・・・やっぱり寂しかったかな。この家とも今月末でサヨナラって思うと、それもやっぱり寂しいかな。」
「だよな。でも・・・ルナを日本に残すのがお前にとって一番良いことだとは分かっているんだけど、自分の為だけに言えばやっぱり一緒に来て欲しいと思ってる。」
「行くよ、私そのつもりだし。」
何を言ってるのだ(笑)
月末にここを引き払ってアメリカに行く準備も出来ているし、
大学だって編入するんだから。
星ちゃんの隣にいることが私の幸せなんだからーーー。

「私の幸せは星ちゃんの隣にいること。星ちゃんがいなかったらどこにいても幸せになれないの。」
ーーー私は彼を強く抱きしめた。
きっと疲れすぎて心が弱っているんだと思った。
早く寝て欲しいと思うのに、
彼はまさかの二回戦に挑んできて、その直後に寝た・・・。

彼の寝顔を見ながら思った。
ーーー初めて弱音を吐いた星ちゃん、
初めて弱い部分が見えた星ちゃん。
思っている以上にアメリカでの生活は大変なのかもしれない、と。
私ももっと覚悟を決めて付いて行こう、
そう思った。

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