#72.
次の日の夕方、
私と星ちゃんは彼の実家がある長野に向かった。
・
入籍してから向かう実家は今日で2回目。
3回目の実家だけど、やっぱり何度お邪魔しても緊張する。
「ーーーまたそんなに固まってんのか?笑」
自分の実家だから星ちゃんは心置きなく行けるけど、
私は変なことをしでかしたらご両親からの印象が悪くなる、
ただでさえ息子を1人でアメリカに行かせて、と思われているかもしれないとネガティブが働いて固まってしまっていた。
「ーーーそりゃ何度行っても緊張するよ。」
「大丈夫だって。ちょっくら挨拶してホテルに移動するぞ。」
実家に泊まろうと思えば泊まれるのに星ちゃんは私の気持ちを計らってホテル泊にしてくれた。
これについてもご両親からしたら不服なのかな、と全てをマイナスに考える自分がいた。
近くに住んでいるお姉さん家族も来ていてくれて、
昔からお兄ちゃんのことを知ってるお姉さんのおかげで私自身楽しく過ごすことができた。
ご両親も相変わらず明るい家庭を築いてきて、
この賑やかな家庭の中に育っだ星ちゃんだからこんなにも朗らかな性格なんだろう、とつくづく思った。
「ーーー蘭、可愛いだろ?」
「うん、可愛いね。一歳半なんだよね?」
「そっ。俺の小さい恋人だから(笑)」
お姉さんの愛娘、蘭ちゃんは本当に可愛らしいよく笑う子だった。
お姉さんが愛情たっぷり育てているのが身に染みて伝わるし、性格もあるだろうし、だけど蘭ちゃんの笑顔はその場にいる大人たちの心を癒してくれた。
「子供、考えたりしてるの?」
お姉さん、陽子さんが話しかけて来た。
「今すぐってわけではなくて、いつかは・・・って思っています。」
「えっ?!」
つかさず星ちゃんは突っ込んでいたけど、私は微笑を浮かべて視線が絡んだ星ちゃんから目を逸らした。
・
「ーーー子供、欲しかったんじゃないのか?」
ホテルに向かう車内でセイちゃんは私に問いかけた。
うん、すごく欲しかった・・・ーーー。
星ちゃんと繋がる何かがないと不安で、
それを彼との愛の結晶である子供だと私は考えた。
「欲しかった、かな?」
「過去形?」
「ーーーあの時は、星ちゃんととにかく繋がっていたいって気持ちが強くて欲しかっただけなんだ。」
「・・・今は?」
「今はーーー・・・、こうして星ちゃんと離れていても一緒にいても繋がってる安心感がある。だから・・・もう少し2人の夫婦としての時間を楽しんでも良いのかな、って思うようになってる。勝手だけど・・・ダメ、かな?」
星ちゃんは安心したかのように、ふっと笑った。
「いや・・・俺も同じ意見というか、自然に任せれば良いかなって思ってる。ーーー俺はルナが大好きで繋がりたいと思うからルナを抱くし、その流れで子供ができたらそれは幸せなんじゃないと思うよ。」
運転席から私の頭をポンと撫でたーー。
「うんーーー、ありがとう。」
長野のホテルに一泊して、
観光することもなく私たちは東京に戻った。
・
そうーーー、
ここからは本当に忙しい。
月末に一緒に旅立つ準備で、
まだ終わらない荷造りに配送手続き、
アパートの引き払いなど大忙しだった。
1人でも頑張っていたけど無理もある、
お兄ちゃんも時々手伝ってくれていたけど星ちゃんと私の家だからと遠慮していた部分もある。
だからこうして夫婦として荷造りをして新しい門出に向かって家を空けるのは寂しくもあり嬉しくもあった。
そして月末、
アパートも引き払いも終え、
数日だけお兄ちゃんの家にお世話になった私たちはついに日本にサヨナラをしてアメリカへ旅立った。
ーーー誰もが行きたいと思う国の一つ、
アメリカ合衆国へ。
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