#13. – Seiya’s Side Story –
今日は疲れたーーー。
生後数ヶ月の姪っ子がよく笑ってくれてすごく可愛くて癒される。
でもーーー、
姉貴の抱っこでは泣く姪っ子を見て姉貴がふてくされた。
それを母さんが宥めて、
俺が子守りをしてーーー、
色んな意味で余裕なかった。
・
「ーーーはい。」
リビングで両親と姉貴と大学や就職先について話していた22時過ぎ、
太陽から着信を受けた。
こんな時間に珍しい、余程の用事なんだろう。
「ルナから連絡来てないか?」
挨拶もなく焦ってる様子の太陽ーーー。
「来てないけど・・・何かあったのか?」
「ーーー帰って来ないんだ。」
俺はその言葉を聞いて携帯を落としそうになった。
ど、どーいうことだ?!
「帰って来ないってどーいうことだよ・・・」
「ちょっと珍しくやり合っちまってさ。ーーーそしたら携帯だけ持って出て行ったきり連絡つかねえんだよ。星也に連絡してるかもと思って・・・。他探してみるわ、悪かったな!」
ーーー俺もスウェットからいつでも出れるように着替えた。
「俺も思い当たるところ電話してみるわ!」
ーーーひとつしかない、草田怜だ。
かと言って俺は草田の連絡先も知らないし、
彼女が草田を頼ることを信じたくなかったーーー。
「ちょっと出掛けてくる!」
太陽との電話を切った後、俺は両親に伝えた。
「ーーー待ちなさい。何かトラブルがあったの?」
母さんが俺を止めた。
「・・・広瀬太陽覚えてる?あいつの妹が帰って来ないんだって。ーーー探してくる。」
「太陽くん東京よね?ここ、長野よ?それにどうして星也に連絡が?」
「ーーー今、その妹と付き合ってるんだ。だから、だよ。」
「ーーーあんた、本気なの?さんざん女で遊んで来たアンタが、あんな純粋そうなこと付き合うなんて・・・」
いまは無駄話はできないーーー。
姉貴との会話を中断して家を出ようとした時、
ルナから着信を受けた。
「るな、今どこ?」
「ーーー星ちゃん。あのさ・・・お兄ちゃんとケンカしちゃって。」
「それは知ってる、すごい心配してる。今、どこ?」
「ーーーわたし、寂しくて。会いたくて・・・」
るなの電話の背後から聞いたことある音が聞こえた。
軽井沢の駅でしか走ってない電車の発車音だ。
「ーーーそこから動くな、絶対に。今から迎えに行く。」
俺は急いで身支度をした、
財布と携帯さえ持ってれば良いと思った。
「ーーー星也、待ちなさい。」
「ゴメン、今聞いてる時間ないんだよ・・・」
母さんは俺を呼び止めた。
「あなた飲酒運転するつもりなの?事故したら元もこうもないわよ。ーーー私が行きます。」
「えっ!?」
確かに俺は夕飯の時に父さんとビールを飲んだ。
「ーーーほら、行くわよ。」
すぐ車に乗って5分で駅に着いたーーー。
ルナは軽井沢駅のバス停のベンチに腰掛けていた。
「ルナ!」
俺は母さんにお礼も言わずに車から降りてルナに走り寄って抱きしめた。
強く強く抱きしめた。
「ーーーゴメン。来ちゃって・・・」
「心配させやがって!何があったんだよ・・・このバカが。」
俺は自分が着ていたダウンコートを彼女にかけた。
ーーーおかしいだろ、この季節にワンピース一枚とか。
ここに来るまで寒かっただろう、
無我夢中だったんだろう、と俺まで苦しくなった。
「ーーーただ家に帰りたくなくて、星ちゃんに会いたくて。でも6日まで連絡しちゃダメなのかなって思ったりして・・・わけわかんなくなって、気づいたら来てた。」
震える手で俺の胸元を掴まりながら嗚咽を起こして泣いた。
「ーーーゴメン。来ちゃって本当にゴメンなさい。」
何度も謝罪するルナを俺は抱きしめずにはいられなかった。
「家に来てもらったら?」
戻ってこない俺たちに代わり、車から出てきた母さんは俺たちに声かけた。
「えっ、あっ、お母さまで・・・。えっと、すいません!」
泣いていたルナも母の登場で我に返った様子だった。
「ーーーここにずっといたら風邪ひくから、うちに来ない?」
「・・・いえ、星也さんの顔を見れただけで。私は・・・」
こんな時間にどこに行こうというのだろうかーーー。
俺はつかさず彼女の腕を掴んで、無理やり車に乗せた。
「こいつ、かなり頑固だから強制的にやらないと来ないよ。」
ーーー母さんはそんな俺たちのやりとりを笑ってた。
・
「ーーーお邪魔します。」
「どうぞ。寒かったでしょう?お風呂に先に入っちゃってね。」
母さんは姉貴のパジャマをルナに渡して、
そのまま風呂に案内した。
俺はーーー、その間に太陽に連絡した。
長野まで来たことに驚いていたけど、見つかったことに安堵もしていた。
「ーーー明日迎えに行く。」
太陽はそう言ったけど、俺は断った。
「俺が連れて帰るよ。ーーー多分ルナもその方が落ち着くと思うけど。」
「ーーーまた連絡くれ。迷惑かけて悪い。」
太陽との電話が終わり、家に入るとちょうどルナが風呂から上がったところだった。
母さんが麦茶を出していて、遠慮しながらも口にしてる。
「いやー、あの小さかったルナちゃんがこんな美少女になってるなんてビックリ!」
姉貴はルナに興味津々で質問攻めしている。
星也のどこが好きなの?
こんなタラシで本当に良いの?
学校に良い人いないの?
とか、すべてにおいて俺をけなしている。
「もうやめなさい。星也も本気なのよね、お母さんには伝わったわよ。あんな抱擁、お母さんも昔はあったのよ笑」
ふざけていると、瑠奈が突然立ち上がって言った。
「あのっ、ご迷惑おかけしてすいません。明日には帰ります。今日だけ・・・お世話になります。」
そして頭を下げた。
「もう遅いし、寝るか!ーーー俺の部屋行くぞ。」
家族といても気を使うだけだと思った俺は、
ルナを自分の部屋に案内した。
・
「姉貴がうるさくてゴメンな・・・」
「楽しい家族だと思うよ(笑)星ちゃんの明るさは家族の仲良さから来てるんだね。」
ーーールナは少し遠くを見つめた。
「本当に心配したんだぞ・・・。2度とこんなことするな、分かったか?」
俺はルナを抱きしめた、強く強くーーー。
「ーーー来てごめんね。」
「そういうことを言ってるんじゃなくて・・・」
「分かってる、分かってるから。」
ルナはそのまま俺の腕の中で眠りについたーーー。
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