#29.
星ちゃんと一つになったあの日から、
少しずつわたしたちの関係は変わっているように思える。
・
「ーーー今日はバイトの送別会があるから練習が終わったらそのまま行くからな。ルナも初バイト頑張れよ!」
朝起きておはようのキスから始まる毎日、
朝ご飯の支度も何も苦に感じないーーー。
それどころか幸せすぎる、そう思ってる。
「うん、ありがと!星ちゃんも楽しんでね!」
先週、彼は卒業が近いことやチームで練習していることも兼ねてバイトを早めに辞めた。
バーテンダーとして働いていた数名が同じ4年生だったからということもあって、
店長が定休日の今日、送別会を開いてくれることになったんだって。
星ちゃんを見送って、
私はバイトに行く支度をするーーー。
先日申し込んだカフェのバイトは見事に落ちた。
そして今後の参考にもなるかな、と言う思いで応募したイタリアンレストランに採用してもらえることになった。
学校が始まってからはまだどうなるか分からないけど、
それまでは夕方前まで入れれば良いかなと思ってる。
「ーーー今日からよろしくお願いします。」
店長に挨拶をして着替えて、
スタッフの皆さんにも挨拶をする。
「広瀬さんが慣れるで指導してもらう佐久間くんだよ。」
「よろしくお願いします!」
「ーーーこちらこそよろしく。」
見た目は怖そうな人だけど大丈夫かしら、
と不安になりながらも私は笑顔を絶やさずに挨拶をする。
「こいつ見た目は無愛想だけど根は優しいから笑」
店長からのフォローに苦笑いをこぼし、
周りのみんなはワハハと笑っている。
「とりあえずテーブルナンバーは最低でも覚えてもらいたいからこっち来てもらえる?」
慣れている光景なのか、佐久間さんは私にテーブル番号の記憶をオープンする前までに覚えるように指示してくれた。
そこまで大きなレストランではないためテーブルNOを覚えるのは難しくなかったけど、
次に説明されたメニューの多さに驚き、
スマホを渡されその画面に映ってるメニューと番号を今度は覚えなくてはならなかった。
「こ、こんなに・・・」
「見て覚えられるもんじゃないから、実際に注文を受けながら覚えていって。」
佐久間さんはクールにそう言う。
「はいっ!」
実際にレストランが開店してから少しずつお客さんが入り、
何よりも忙しい時間帯はやはりランチタイムだった。
ーーー3つのランチセットがあり、
それは画面上にもすぐ出てるので覚えた。
次は単品で頼まれるカルボナーラ、ボンゴレビアンコ、ボロネーゼが社会人の方の注文が多く大盛りサイズ変更も覚えた。
別でサラダやポテトなどのサイドメニューもこの日は覚えることが出来た。
・
「ーーーただいま。」
星ちゃんが送別会から帰宅したのは23時過ぎ、
私は初めてのバイトで疲れ果てたこともあり夢の中だった・・・。
「んっ・・・。やだ、寝ちゃった・・・」
まだお風呂にも入ってなかった私は焦った。
「ーーー疲れたんだろ。風呂入って早く寝な。」
優しい微笑で私の頬に触れた星ちゃんは言った。
「ありがとう、先にシャワーしちゃうね!」
ソファから立ち上がった私は、
寝起きすぎて少しよろめいた。
「ーーー少しこのままでいて欲しいかも。」
星ちゃんに支えられた私は、
そのまま抱きしめられたーーー。
私の腰に回された手、
私もそれに応えるように星ちゃんの腰に手を回す。
やっぱりどんなに疲れていても、
好きな人の力ってすごいなって思う。
ーーーこんなにも力が抜ける、
少しずつ疲れが取れていってるように感じるんだから。
「ーーー星ちゃんのココ、すごい落ち着く。」
「またお前は・・・」
苦笑いして私を見つめた星ちゃんはキスをした。
背が高い星ちゃんと背の低い私が抱き合ったりするとすごく差を感じるけど、
それを感じさせないように彼は合わせてくれる。
ーーー色んな優しさが彼には溢れている。
ーーーその夜、また私は彼に抱かれた。
今まで溜まってた1年分の鬱憤を晴らすように、
彼は私を頻繁に抱く。
でもそこに愛があるのはすごく分かる。
星ちゃんからの愛情がすごく伝わるの。
彼の優しさも、
彼のもがく姿もーーー。
全てが愛しい。
ーーーこの人を、愛してる、そう思った。
コメント