#42.
次の日、私は寝不足による頭痛をもたらしたーーー。
でもここで私が体調不良を訴えてしまったら星ちゃんは絶対に自分を責める、
だから普通にとにかく普通に過ごしたーーー。
・
「はっ?」
「だから・・・エッチしてる時に昔の彼女と比べたりします?」
ーーーそして今、私は大学のカフェテリアにいる。
偶然にも佐久間さんの彼女の栞ちゃんと仲良くなった私は時々こうして三人でランチをとる。
「オレは・・・しないな(笑)愛されてねーんじゃないの?笑」
前までの私ならそう思ったんですけどね・・ーーー。
「それはないと思うんですよねぇ。」
「ーーーるなちゃん、惚気てる?(笑)逆に考えて、特に何も感じてないから無意識に発言してるってこともあるよね。」
「栞ちゃんもそういう経験ある?」
「ーーーしぃ、こいつの質問には答えなくて良い(笑)」
ーーー栞さんは佐久間さんの横でニコニコ笑ってた。
この2人は高校の先輩後輩らしくて、
ずーと付き合っていて栞さんが追いかけるようにこの大学に入ったんだって。
2人の話を聞いていると素敵だなぁって思うの。
ぶっきらぼうだけど本当はすごい優しい佐久間さんのこと栞さんすごい好きなのわかるし、
佐久間さんも彼女をすごく大切に思ってるのがわかる。
もし私が星ちゃんと同じ大学だったら、
こんなふうに一緒にいられたのかな?と思うと顔がニヤニヤしちゃった。
・
「ーーーるな、来週の日曜予定あったっけ?」
今日は土曜日ーーー、
昨日は体調不良で早く寝ちゃった私。
そして飲んで帰ってきた星ちゃん、
だから顔を合わせることもなかった。
「いや、特にないけど?」
「空けておけよ。ーーーBBQ行くぞ!」
「えっ!誰と?(笑)」
「ーーー会社のチーム。妻子、そして妹弟彼女彼氏全員参加だ笑」
「ーーー分かった(笑)」
いろんな付き合いがあるんだなぁ、と思いながら昨日はチームの人たちと飲んだのが分かって少し安心した。
それに私は友達同士でもBBQしたことがないから、
すごく楽しみの行事の一つになった。
ーーー星ちゃん、
私信じて良いんだよね・・・?
・
BBQの日を迎えるまでにーーー・・・
一つだけ解決しなければならない問題があった。
それはーーー、
古英語の小テストでほぼ0点を取ったことだ。
手術前からそうだったけど日本語で説明してるはずの先生が日本人に思えないほど理解出来なかったの。
退院した今、必死に追い返していると思ったけど全然分かっていなかったってこと。
「ーーー何で呼ばれたか分かってるよな?」
そして私は先生の研究室に呼ばれた。
当たり前だよね、ほぼ0点なんだもんーーー。
「ーーーはい。すいません、全然先生の話してることが分かりませんでした。」
「どこがわからない?ノートを見せてみろ。」
先生の向かい合わせに座った私は自分のカバンからノートを差し出す。
「ーーーこれでも家で復習したりしてるんです、信用ないかもしれないけど・・・」
「そんなことないぞ、何度も消した跡があるし答案用紙を見ててもお前は本気で分からないんだと伝わったから呼んだんだよ。本気で勉学をしない子には先生だってこんなことで呼び出さないよ(笑)」
「ーーー先生・・・」
私は先生の優しさに泣きそうになった。
「良いか、この例文は・・・」
私の感情なんて興味なさそうに先生は私のノートを復習のさらに復習をしだした。
小林先生は若くして授業を持っていると英文科でも話題の先生、
きっと優秀なんだと思う。
だって今マンツーマンで聞いてるととても分かりやすくて頭に入ってくる。
私のノートを真剣に見る先生を私は眺めたーーー。
眉毛が長い・・・ーーー。
そして色が白くてサラサラの髪の毛、
とても白衣が似合う先生だと思った。
「ねぇ、先生。」
「なんだ?」
「メガネ取ってみてくれない?」
いつも付けている黒縁メガネ、
それを取ったらどんな表情になるのだろう。
ーーー切れ目で瞳が大きな先生だから・・・
「なんでだ(笑)」
「何となく、私の好きな人に似てる気がするの。」
そう、何となく星ちゃんに似てる気がしたの。
「ーーー断る。」
「ちぇ、まぁ良いもん。」
それだけ言って私は先生に出された難題に苦しむことになった。
ーーー結局家に帰してもらったの6時過ぎ、
お詫びにお茶もらったけどこれだけじゃ足らないわ!と怒っておいた。
・
そして迎えたBBQ、
7月に入ったというのに蒸し暑い・・・。
梅雨みたいなどんよりした気候だったけど午後から晴れるという予報を信じて私たちは向かった。
下っ端星ちゃんたちはお肉担当、
途中お兄ちゃんと合流してお肉の調達。
もう1人の同期の藍沢さんは反対方向だからと言って先輩たちとドリンク担当になったんだって。
「未来さんは?」
「ーーーあいつ土日仕事なんだよ(笑)学校はどうだ?」
「友達もできたし楽しいよ。でも古英語が全く分からなくて先生に呼び出しされた(笑)」
「初耳だけど?大丈夫なの、それ(笑)大学に入って呼び出しって初めて聞いたぞ(笑)」
私をからかうように話す星ちゃんーーー。
「い、良いもん、別に・・・笑」
「まっ、頑張れよ!」
お兄ちゃんはフォローになってないフォローを私にした。
ーーー・・・た、高い。
普段ビーフなんて買わないから分からなかったけど、
牛肉って高いのね。
「気にしなくても大丈夫、会社から出るから。」
私の心を読まれ、星ちゃんはどんどんカゴに入れてた。
一番乗りで到着した私たちーーー。
テントやコンロを持ってくる先輩を待つ。
「初めまして、こいつらの二つ上の日下部です。」
「はじめまして、広瀬太陽の妹、ルナです。」
ーーー今日もまた、お兄ちゃんの妹としての挨拶をした。
そして藍沢さんも加わり、みんなでテント張りをしてからのコンロ設置を行なった。
「ーーー座って待ってようか。ルナちゃんは今何歳?」
「19歳です、大学1年です。」
「太陽良いなぁ、こんな可愛い妹ちゃんがいて。」
藍沢さんがつかさず割り込むーーー。
「日下部さんはご結婚とかされているんですか?」
「ーーー残念ながら。彼女もいないよ。」
「えー、モテそうなのにもったいないですね。」
「ーーーじゃあオレの彼女になってくれる?(笑)」
「えぇ、ダメっすよ日下部さん!ルナちゃんはオレが先に目つけたんですから(笑)」
ーーー私は反応に困り苦笑いが溢れる。
「ーーーそういや、太陽と星也、彼女連れて来なかったのか?」
日下部さんが言ったーーー。
「ーーーオレのところは仕事です、保育士だから。」
「あーーー・・・週末も仕事なんてえらいなぁ。」
きちんと人を褒めて労うことのできる日下部さんを私はすごいと思った。
「ーーー星也は喧嘩だろ?(笑)」
「えっ?」
みんなが藍沢さんの言葉に耳を傾けた。
「おれ、昨日見ちゃったんだ。星也と薫がすげー言い合ってるの。」
昨日・・・
昨日・・・
昨日は星ちゃんは同期の人と飲むって言って帰って来た。
「あーーー・・・色々あんだよ。」
星ちゃんは何も言わなかったけど、
私の頭は真っ白だったーーー。
星ちゃんたち下っ端は先輩たちの相手をする。
彼氏彼女同伴って言ってたけど家族連れて来てる人もいないし、
あまり一緒に着てる人もいなかったから私は場違いなのかなって少し思った。
「つまんない?」
「あっ、いえーーー・・・。ただ・・・来て良かったのかな、って思っちゃって。」
私の隣にオレンジジュースを二つ持って座った日下部さんは優しく微笑んでくれた。
「ーーーこれ、着て。」
「えっ?」
私は日下部さんを見上げたーーー。
「この年代の盛んな男子にそのキャミソールは視線のやり場に困るかも・・・」
苦笑いして伝えて来た。
何も考えずに来ちゃった、暑かったからキャミソールワンピしか頭になくて・・・
そんな自分が恥ずかしい。
ーーー私は素直に日下部さんの貸してくれたジャケットを受け取り羽織らせてもらった。
「あの・・・さっきの話なんですけど・・・」
そこに藍沢さんも加わったから私は勇気を出して聞いた。
「ん?」
「桐山さんが揉めていたって・・・どんな話だったんですか?」
藍沢さんはチラッと星ちゃんの方に視線をやって遠くにいるのを確認してから私と日下部さんに話した。
「ーーー聞いちゃったんだ、あなたの子供を身籠ってるのよ!と薫が星也に言ってんの。あれはマジだった・・・」
えっ・・・
耳を疑ったーーー。
「妊娠させちゃったってことですか?」
「ーーー多分、ね。薫は同期入社なんだけど、ずっと星也のファンだったらしくて迫ったんじゃないの?分からないけど、1夜でも寝たら出来ちゃうからねぇ。」
ーーー頭、真っ白だった。
ダメだ、泣くーーー。
そう思って私はトイレだと嘘をついて立ち上がった。
・
川辺でBBQしている星ちゃんの仲間たちから外れて私は少し歩いたーーー。
いや、結構歩いたのかもしれない。
今は・・・誰も周りにいない。
それで良い、それで良かったの。
あと一歩踏み出せば川に入るところに私は腰掛けた。
何かの間違いーーー。
本当だとしても何か理由があるはずーーー。
私は自分に言い聞かせた。
でもね、星ちゃん。
私も本当は心のどこかで思ってたーーー。
好きでもない人でも寝れる、
そう断言していた彼の発言で・・・
星ちゃんと繋がったあの日から思ってた。
このままではいつか妊娠してしまうんじゃないかなって。
それだけなら良かったけど、
彼の子供が欲しいと思ってしまってた自分がいた。
そしてーーー、その時に思ったの。
今まで妊娠させたことはなかったのかな、って。
ずーーーと思ってた。
だからある意味、納得した自分がいた。
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