【 わたしの好きなひと 】#63. 進路について・・・*

わたしの好きなひと。

#63.

私が刺されるというアクシデントが起こり少し休憩扱いとなっていたシーズン、
10月末の肌寒い時期に再開されることになった。
ーーー今メディアにも会社にも期待されている星ちゃん、
毎日練習で大忙しそうだ。

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私たちは前と同じようにすれ違わないように朝食を一緒に摂る約束をした。
私は早起きで星ちゃんはギリギリまで寝ている人、
だから私も出る直前にご飯を食べて、
星ちゃんは起きた直後にご飯を食べるようになった。

「今日、遅くなると思うよ。」
「どうして?」
「監督から飯に誘われた、話でもあるんだろうなぁ・・・」
なんの話なのか怖いと言ってる星ちゃん、
でも何も問題がないなら悪い話ではないんじゃない?と私は思った。

その日は私もバイトの日で、
マロンの新メニューが出たばかりで、
とにかく出る出る出る、
その度にてんてこまいになって疲れ果てて帰宅した。

もちろん星ちゃんはまだ帰ってないけど、
彼も疲れて帰ってくる。
だから私はお風呂のスイッチを押し、
そのままソファでお風呂のお湯が沸くのを待った。

「ーーーな、るな・・・」
夢の中で私を呼ぶ声がする。
心地よい私を呼ぶ大好きな声ーーー・・・
揺さぶられている気が・・・
そしてハッとして、目が覚めた。
「やだ、寝ちゃって・・・」
「こんな所で寝たら風邪ひくよ?」
学校のカバンもソファ、
自分自身もまだ着替えてない状態で寝てしまったことに罪悪感を感じた。
「ゴメン・・・」
「バイト疲れたんだろ?無理すんなって。お風呂沸いてるから入ってこいよ。」
星ちゃんは私が寝ていても何かをしていても絶対に文句は言わない。
そこは私を尊重してくれる。

「ーーー目、覚めた?」
最近では定番となった、星ちゃんが私の髪の毛を乾かす。
一時期よりは髪の毛も伸びて、
少しずつ時間が掛かるようになった。
「ごめんね、今日は疲れちゃって・・・」
「るな、寝ていても良いんだぞ?」
もう一度一緒に暮らし始めてから私は彼が帰宅するのをなるべく待つようにしている。
少しでも話す機会を増やしたいから、
すれ違いが出るのが嫌だから合わせられる方が合した方が良いと思って。
ーーーでも逆に待たれると思うと変なプレッシャーになるのかな、と不安にもなった。
「ーーーだよね、明日からは10時以降は寝ていようかな。」

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「ーーーこのシーズンが終わったらプロ契約するかもしれない。」
「えっ!?凄い!」
話題を変えた星ちゃんは今日の監督の話が、プロ契約の話であったことを教えてくれた。
頑張ってるもんね、今シーズン。
「だろ?(笑)」
ドヤ顔で言う星ちゃんも嬉しいんだよね。
プロ契約になると会社のためにアメフトでお金をもらうことになるから今働いている午前中もなくなりフルでアメフトに専念できると言うわけだ。
ーーー日下部さんも去年プロ契約になったと聞いた。
凄いなぁ、本当に。
星ちゃんは夢を叶えてプロになろうとしている、
私が今やりたことってなんだろう?
英文科に通いただ英語や外国に関することを中心に勉強していて・・・
来年になったら就活が待っている、
星ちゃんたちみたいに明確にやりたいことがあるわけでもない。
ーーーわたし、何がしたいんだろう?

考えても考えても私の中心はやっぱり星ちゃんだ。
まだ時間はある、
ゆっくり考えていこう、そう思った。

今日は土曜日、
私は久しぶりに晴菜とランチの約束をしている。
星ちゃんはーーー遠征で福岡にいる。

「先生とそんなことがあったの?」
この日までのことを簡潔に話すと晴菜は驚きを隠せない様子だった。
「そうなんだよ(笑)いろいろあったんだよ。」
「ーーー素直になりなさいよ(笑)でも、一つ教えてあげる。彼氏中心の気持ちでいたらいつか絶対に自分の心が壊れるよ。だから彼氏よりも優先できる何かを作った方が恋人と長持ちするんだよ。」
「晴菜もそうなの?」
「ーーー私は彼氏よりも追っかけだから(笑)」
そう言って携帯を見せてきたのは、
1人のアイドルの人ーーー・・・。
そこについて彼氏は何も言わないと言うより、
彼女がそれで生き生きしているならそれで良いと言ってるなんと寛大な心の持ち主の彼氏なのだ。

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・・・彼氏よりも大切なもの。
なんだろう?
昔はピアノに没頭していた、
高校に入ってからは特に何もなくて、
ピアノを弾けなくなってからさらに何もなくなった。
ーーー趣味のお菓子作り?
それとも手芸?
それとも・・・なんだろう。

探そうと思って見つかるものではないけど、
晴菜の言ってることが正しいような気もして私は少し焦った。

・・・もう2年も半分が過ぎた、
就職活動も目前に控えている今、
私は自分の人生・・・
これまでの自分、そしてこれから何をしていきたいのか就活も踏まえて真剣に考える決意をした。

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