#26.
わたしに続き星ちゃんもシャワーを浴びた。
ーーわたしは今までにない緊張感が漂っていた。
・
「ーーーなんか飲む?」
「えっ、お水で大丈夫かな。」
まだ引っ越す前、卒業式は覚悟しておけと言われた。
わたしの今の頭の中はその言葉がずっと繰り返されていて真正面から星ちゃんの顔を見ることが出来ない。
「ーーーどうかした?疲れたか?」
「違うけど・・・なんか新しい家で星ちゃんとこうしているのが新鮮だなって思ったら緊張しちゃって。」
「アホか笑」
余裕の星ちゃんはきっとなんも気にしてない。
ーーー多分、自分が言った言葉さえも忘れているのではなかろうか。
「ーーー座りな、髪の毛乾かしてやるよ。」
ホラッと、ソファに腰掛けた星ちゃんの下に座るように促される。
「ーーーありがとう。」
「ルナの髪の毛は外国人みたいな髪の毛だよなぁ。」
「カーリーヘアだもんね、小さい頃から言われてたよ。」
「ーーー顔立ちもお人形さんみたいだしな。前世は人形か?(笑)」
「失礼な!(笑)」
髪の毛を触られるだけでドキドキする。
ーーードライヤーを当てるだけなのに人に触られるだけでもこんなにドキッとするもんなんだ。
1本1本の星ちゃんの手が冷たくて触り方もドキッとするいやらしい触り方なんだーーー。
「はい、終わり!良い感じに乾いたんじゃないか?」
慣れた手つきで乾かしてくれ、
また変な不安に襲われそうになるのを無理やり追い払った。
「ありがとう、助かった。」
そして星ちゃんは私を背後から抱きしめた。
「あーー、なんか幸せだよな。こうしてルナがここにいるなんて想像も出来ないわ・・・」
大きなため息をついて私の頭に顎を乗せて安堵してるのが背後からでも伝わる。
「今日、ありがとう。来てくれて嬉しかったよ。」
私は星ちゃんの腕を握り返した。
そして私の顎を自分の方に向かせてキスをした。
ちょっと、ほんのちょっとの軽いキスを。
「ーーーもう遅いし寝るか。」
えっ、と思ったーーー。
今日という今日を待っていたのは私だけなのかと。
「えっ?」
その心の声がどうやら漏れてしまったようだ。
「何?何か期待でもしてた?(笑)」
「ーーーそう言うわけじゃ・・・」
「嘘だよ(笑)ーーーここまで待ったんだ、今日ルナを抱いたら抱くためだけに待ってたみたいになるのが嫌だから今日は抱かないよ、ごめんな。」
「いや、私は別に・・・」
自分の考えを恥じた。
確かに星ちゃんはあの時、卒業式に抱くと言ったけど。
きっとその場の雰囲気だったりもあったろうに。
ーーー私はそれだけを信じて本当に飢えてる子みたいに自分の甘さを恥じた。
星ちゃんは私のことを私以上に考えてくれているのに。
「ーーー今日はルナが隣に寝てくれるだけで十分だわ。」
ーーー私も星ちゃんの隣に横になった。
泊まるにしても寝るときは同じベッドでも少し距離があった今までとは違い、
今日は手を繋いで星ちゃんの真横にべったりくっついた。
「ーーーそこまでくっつかれると俺も男なんで・・・」
苦笑いしていたけどその手を緩めることはしなかった。
そして私は意を決してずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「ねぇ、星ちゃん。」
「ん?」
「ーーーわたしの初めては星ちゃんが良かったな、と今すごく思う。」
「なんだ、それ(笑)」
そう思うのは間違えてるかな?
片道切符より、お互いに気持ちが繋がってる往復切符の方がやっぱり嬉しいよーーー。
中学の時の私は片思いだったから・・・。
出来るなら過去に戻ってあの日をやり直したいとさえ思う。
「・・・私の初めては中学2年・・・」
「ルナ、良いんだよ。俺はルナが初めてでもそうでなくても気にしない。ーーー今のルナを好きになったんだから過去のルナと比べても何も出来ないからさ。」
大人だな、って思ったーーー。
私はやっぱり星ちゃんの過去も色々気になるよ。
「ーーーお兄ちゃんから少し聞いてるの?」
「うーーん・・・」
星ちゃんは少しバツが悪い顔をした。
「ーーー私の過去1の過ちです(笑)」
「詳しくは聞いてないけど、ルナは過去に嫌な思いをしてるから卒業するまで待つことを約束して欲しい。ーーー本気度を見せてもらわないと交際自体を認められない。と太陽に言われて、初めてではないんだろうなとは思ったくらい。ーーー過去に嫌な思いをしたなら俺が上書きする、そのつもりでオレはルナと付き合ってる。過去は思い出すな。」
間違えたことは何一つ言ってない。
「はいーーー。」
「わかったなら、とっとと寝なさい。」
星ちゃんは私のおでこに軽くキスを落として、
そのまま睡眠に入った。
ただ幸せでーーー。
すぐ眠りについた星ちゃんの寝顔をずっと見ていたいと思った。
愛しいと思ったーーー。
だから私の寝つきは非常に悪かった。
ーーー愛しい気持ちを込めて私は眠ってる星ちゃんに口づけをして眠りに入った。
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