【 わたしの好きなひと 】#59. 3ヶ月後*

わたしの好きなひと。

#59.

あれから3ヶ月ーーー、
私は大学の近くで一人暮らしをしている。

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全ての荷物は彼の家に置いてきた、
取りに行くのも辛くて衣類を含めた全て買い直した。
あの場所にあった私の衣類が今どうなってるのか知らないーーー。
そして彼が今どうしているのかも・・・。
家を出てから何度かの着信とメールはあった。
でも出たら戻ってしまうことはわかっていたから、
私はあえて出なかった。
・・・そして、あの携帯は星ちゃんが契約してくれたものだから彼の名義だということを思い出し電源を切って机にしまった。
いつか笑顔で笑える日が来たら返そう、そう誓って。
その代わりに私はバイトで稼いだお金で自分の携帯を買った。

恋の終わりは人を成長させるという言葉があるのは本当な気がする。
私が星ちゃんと恋の終わりをして泣きはらしてから、
自分磨きをしようと決めた。
髪の毛は長すぎず短すぎず中間を、
そして童顔に見えるから髪の毛を流すようにしたし理央に教えてもらってお化粧も学んだ。
ーーーこの短期間で我ながら頑張ったと思う。
服装とカジュアルなものから大学生らしいワンピースやスカートに変えてみた。
だからなのかな、数名の男子に告白されたんだよ。
あんなに泣いていた毎日も今は泣かなくなったけど、
まだ次の恋に行くには時間がかかるかな、と告白も受け入れられないでいる。

「明日の試合、本当に行かないの?」
「行かないって(笑)心揺れちゃうもん(笑)」
チアの理央は明日の星ちゃんの試合の情報をなぜか知っているーーー。
私も会わなくなったし連絡は取ってないけど、
彼の情報はチェックしてる。
未練がましいと言われたらそれまでだけど。
シーズンが始まってから大活躍の星ちゃん、
2年目なのにとメディアでも話題になってるからこそ知っている。
頑張ってるんだな、と知れてそれだけで嬉しかったんだよ。
「オレも明日応援に行こうと思ってるよ、ルナちゃんも行こうよ。」
いやいや、無理だよ・・・。
まだ学校での肩身が狭い私が、奏先輩と応援に行ったなんて知られたら本気で殺される。
「でもさ、元彼さんはルナの事情今でも知らないんでしょ?」
「ーーーいいのいいの。知らない方が良いこともあるじゃん(笑)」
理央は私が星ちゃんと別れたこと納得してない、
きちんと真正面から向き合うべきだと何度も、
今も言われ続けているーー。

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試合当日の朝、私は頼まれてもないのに台所に立ってる。
昨日、理央たちが変なことを言ったから・・・
人のせいにして台所に立ち彼の大好きだったはちみつレモンを作ってる。
ーーー別れてからお兄ちゃんにも会えてないし、
きっと喜んでくれるかな。
ちょうどホームゲームだから、
そっと行ってそっと渡せれば良いな、と思った。

11時からの試合だから1時過ぎには終わるはずの試合、
だから少しだけ見ようと12:30過ぎに到着するように向かった。
なにがどう転んで向かってるのか・・・。
奏さんも理央が事前に取ってくれていた指定席のチケットを握りしめる。
ーーー勝ち進みますように、怪我しませんように、と祈りながら。

「やっぱり来た(笑)カマかけておいて良かった!(笑)」
えっ、騙された系?
シートに座ると理央がゲラゲラ笑いながら歓迎してくれた。
「勝ってる?」
「うん、すごい活躍してるよ!」
ホッとしたーーー。
アメフトのルールは難しくて全然わからないけど、
とにかく見入ってしまうスポーツだと思う。
怖くて、楽しくて、そんなそそられるスポーツ。

最後の1分、
私は祈るように勝利を願った。
私の祈りは届いて、星ちゃんたちのチームは次に勝ち進むことができた。
トーナメント制だから負けたチームはここで敗退となる。
でも、ファンの人たちにとって勝利は関係なくて・・・
ほとんどの女性ファンがそれぞれの応援している選手にサインや握手を求めに行ってた。
私はそこには興味がないから人気がなくなるまで座席に座り、
ただ星ちゃんの様子を見てた。

ーーー元気そうだった、良かった、そう思った。
チームの人とも楽しそうに話していて、
そんな姿を見れて心から安心した。
楽しそうにファンの人とも話してサインと握手にも対応していた。
星ちゃんといた私だったらこれだけで不安になって困らせていたーーー。
今の私は、良かったね、そう思ってる。
応援してくれる人がたくさんいるから頑張れるんだと前に言ってた言葉を思い出して、
微笑みが溢れた。

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・・・そんな矢先にキラリと光った1つの光。
何だろう?
気のせいか・・・
そう思ってもう一度星ちゃんの方を見ると、
今度は写真撮影に応じてた。
星ちゃんの会社のグランドは大きな芝生で出来ていて今回のように試合があっても仕切りで区切ることはしない。
座席が多く設けられ、その中に指定席と自由席で分類されるけど仕切りがないからファンと選手の交流がやりやすいことで人気のある公式試合でも使われるグランドなのだ。
この選手と交流したいがために応援に来る人もいる、と前に話していたね。
キラリ・・・。
やっぱり何か光ってる、そう思って私はもう一度視線を光の方に向けた。

ーーーヤバいものを見てしまった気がする。
「ねぇ・・・あの人ナイフ持ってない?」
「えっ!ほんとだ!何で?」
理央と奏さんに小声で伝えて、間違いじゃないと確信する。
小柄な小太りのおばさん、
でも視線は星ちゃんをすごい睨んでるーーー。
「ゴメン!ちょっと止めてくる!」
「ルナ!」
私が立ち上がったと同時にそのおばさんもナイフを鞄に隠しながら星ちゃんに近寄っていく。
「どうかしましたか?」
営業スマイルで星ちゃんがその人に笑いかけた瞬間、
カバンからナイフが出されたのを見てその場が凍りついた。
「ーーーあなたのせいで息子は・・・!償ってもらう!」
おばさんはナイフを星ちゃんに向けて走り向かったーーー!

「ダメーーー!」
私はそう叫んだーーー。
「ルナ!」
座席から聞こえる理央の声も、何も耳に入らなかった。

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