【 わたしの好きなひと 】#50. 最高のプレゼントを*

わたしの好きなひと。

#50.

今日は星ちゃんの23歳のお誕生日ーーー。
私は朝からキッチンをフル稼働させて大忙しだ。

昨日の夜から仕込んでおいた鶏肉のハニーマスタードをグリルにインする。
その間にリクエストされていたハンバーグを作って、ポテトサラダも添えた。
それだけでは足らない気がしてエビフライも揚げるだけだけど添えてみた。
うん、二人だけだしこんなもんで良いかな。

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そして次はケーキ・・・。
料理は得意でも不得意でもないけど、甘いものを作るのは大の苦手。
だからもう事前にネットで予約して、
あとで星ちゃんと取りに行く約束をしている。

肝心の星ちゃんはまだ夢の中ーーー。
昨日の夜、遅くまでいろいろな話をしたからきっと起きるのは遅いかなとは思ってる。
それに毎日毎日午前中は普通に仕事をこなしていても、
午後は夕方遅くまで練習をする日々を送っている人。
そりゃ疲れているわけで、休みの日くらいはゆっくりと休ませてあげたいとさえも思う。

そっと寝室を覗いてみるけど起きる気配は全くなくて、
夢のまた夢の中にいるーーー。
私は・・・そっと・・・
起こさないように彼の近くに寄り添って寝顔を見つめるーーー。
いつ見ても綺麗な顔立ちをしている、外国人みたいだとさえ思う。
長いまつ毛にサラサラのストレートヘアは何よりも羨ましい。
星ちゃんの顔を見るたびにいつも思う・・・
この顔に何人、何十人の人が騙され傷ついてきたんだろう、と。
そしてそんな彼を今、独占できている自分に対して少しの優越感を感じたりもしていた。
「うわぁ!!!」
寝ているのを良いことにボーと妄想の世界に入っていたら、
突然私は布団の中に引き込まれたーーー。
布団の中で星ちゃんの腕の中に抑え込まれた私は、幸せを感じた・・・。
「起きてるなら言ってよ。」
「楽しそうにニヤニヤしてるからお邪魔したら悪いと思って?(笑)」
私はふざける星ちゃんの胸を叩いた。
「お誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」
私たちは軽くキスを交わした。
何度も何度も軽いキスを交わした・・・。
きっと星ちゃんはその先を望んでいるだろう、
でも今の私はそこまでは叶えてあげられないこと、お互いにこの間思い知った。
だから、そういうことで私は星ちゃんを苦しめてしまうんじゃないかな、と思ったりしている。
だけど星ちゃんは大丈夫、そう言ったからその言葉を信じようと思う。

布団の中で数十分だらだらした私たち、
星ちゃんを無理矢理にでも起こしてシャワーに向かわせた。
すっきりするでしょ?と思ってね。
そして星ちゃんの準備を待って私たちは外出した、
私が作ったお料理は夕ご飯までのお楽しみってことで。

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真夏の真昼間は人手がとても少なかった。
「暑いね・・・」
「あちい・・・」
「こんな暑い中、星ちゃんはボーグを着て練習してるんだもん、すごいよね!」
「だろ?(笑)もっと敬意を払ってもらっても全然大丈夫だからな(笑)」
「はいはい(笑)」
私たちは手を繋いで街中を歩く、
周りを見てもカップルが多いー-ーー。
一時期は兄妹にしか見れないとかさんざん言われていたけど、少しはカップルに見えるようになったかな?
「ケーキ屋はそこの角のお店なの。」
「オッケー!!!」
星ちゃんは甘いものが苦手・・・
だから私はケーキ注文もすごく迷ったんだけど特別な日だからと、
この日だけは我慢してもらうようにお願いした。
「おぉぉ、名前が書いてあるぞ!しかもアメフト!!俺の背番号10番だし(笑)」
「広瀬様からのご要望でこういう形になりましたが、いかがでしょうか?」
「す、すごいですね!食べるのが楽しみです!」
星ちゃんが想像していたのは普通のショートケーキ、
でも私が注文したのは甘さ控えめのオーダーメイドケーキ、
だから星ちゃんはすごくすごく喜んでくれた。

暑すぎてケーキだけを受け取って、近くにあったゲーセンで柄にもなくプリクラを撮影。
寄り道はこれだけで、すぐにアパートに戻る・・・。
こんな暑い日にお母さん、頑張って生んだんだなと思うと本当に尊敬しかない。
「そういえばご実家には帰らないの?」
確か毎年誕生日会をされると言ってた記憶がある・・・。
「あっ、帰る帰る!ちょうど週末が長野で合宿なんだよ、その時に顔を出してくるよ。」
「きちんと祝ってもらうんだよ。」
「ほんと、めんどくせぇ。子供じゃないんだからって思うよ(笑)」
「それでもお母さんにとっては大事な子供だからね(笑)」
ここまで仲の良い親子も珍しいのかもしれないけど、
もし私に子供が生まれたら同じようにずっと仲良い関係でいたいと思うんだ。
だから星ちゃんもこれからもご家族と今のように交流を持って欲しい、心からそう思う。

さて夕方6時になったのでそろそろ夕飯の準備ーーー。
星ちゃんは明日の外出について同期の友達と電話で話している・・・。
確か先週も同期に祝ってもらっていたけど、
話しを聞いていると星ちゃんだけじゃなくて色々な同期が何回も祝ってもらっているっぽい。
こっちもこっちで仲良くて羨ましいなぁと思うよ。
「ーーーちょっと待って、確認するわ・・・折り返す。」
ちょうどそれだけ聞こえた私、キッチンから不思議そうに寝室から出てきた星ちゃんを見る。
「何か問題でもあったの?」
「今、薫から連絡があったんだけど・・・明日、うちに来ても良いかって。同期6人なんだけど(笑)」
えっ、同期の人たちが来るの?
「えっ・・・あの・・・」
「あいつは来ない、太陽も日曜だから彼女が家にいる日だから来れない。」
私が確認する前に星ちゃんが答えてくれた・・・。
だよね、さすがにそこまで無責任じゃないか、と思った。
「ーーー良いよ。あの人が来ないなら私は大丈夫。」
「本当に?無理してないか?」
無理してないと言ったらウソになるけど、星ちゃんの同期がどういう人なのか見てみたい気持ちもあるのは嘘じゃない。
「大丈夫、明日の午前中に買い出しに行こうか。楽しみにしてるって伝えておいてね。」
「ーーー断り切れなくてごめんな。」
星ちゃんは寝室に戻ってまた電話をしている・・・。
祝われる方も大変だな、、と思った。

夕飯の支度も終わって食卓を囲むわたしたちーーー。
「すげーーー!!!しかも俺の大好きなハンバーグ!ルナ、ありがとう。」
「お誕生日は特別だからね。さっ、食べようよ!」
星ちゃんは一つ一つじっくり丁寧に食べてくれた、
どれも美味しい、と何度も何度も言ってくれてなんだか胸がくすぐったい気持ちになった。
「もう食えねえ・・・」
「全部食べ切らなくても良かったのに・・・。残しておけば・・・(笑)」
「うまかったから全部食べたかったんだよ(笑)」
星ちゃんはそのままソファに倒れた。

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食器洗いを終えて私は星ちゃんの横にポツンと座る。
「なんでそんな離れて座るの?(笑)」
「だって寝たいかなと思って(笑)」
「遠慮するな、ルナの席はここ!」
そう言って星ちゃんの前に座らせて私をバックハグしてきたーーー。
幸せだなぁ・・・。
心からそう思った。
「あのね、これ・・・バイトもそこまで入っていないから大したものは買えないんだけどプレゼント。」
「マジで!?」
私は星ちゃんが会社の日、
誕生日プレゼントを選びに何度もお店に足を運んだ。
最終的に選んだのはボロボロだったキーケースとネクタイだ。
「知ってる?ネクタイって相手を束縛するって意味があるんだってよ(笑)」
そうなの?知らないんですけど・・・。
「知らない・・・別にそういう意味で買ったわけじゃ、確かに束縛してるかもしれないけど・・・」
「違う違う!だから俺は嬉しいってことよ(笑)」
「嬉しいの?」
「だって大好きなルナに束縛されるってことだろ?嬉しいに決まってる(笑)」
なんだかよく分からないけど喜んでくれているので、良かったのかな?

「ーーーちょっと待ってて。」
星ちゃんは突然何かを思い出したように寝室に消えてすぐに戻ってきた。
「俺もルナにプレゼントがあるんだわ。」
「えっ?私にプレゼント?誕生日じゃないよ?ネックレスももらっているし、色々もらいすぎな気が・・・えっ・・・」
でも私は星ちゃんが差し出したものに言葉を失った。
「ーーー魔除けっていうの?ルナは俺のものだから触るなって言いたい(笑)ーーー俺の方が独占欲強いな(笑)」
差し出されたのはシルバーリングで、
中にはSeiya to Runaと刻印されているものだった。
「なんで・・・?」
予想もしていなかった指輪に私は涙を流し始めた。
「なんでって・・・ルナを誰にも取られたくないから?俺はルナのものだから安心しろっていう自信も持って欲しかったから、かな?一応店内では一番人気らしいぞ、大事にしろ(笑)」
「ーーーありがとう、大切にするね。」
「今はシルバーだけど・・・いつか本物渡すからそれまではそれで我慢して。」
ねぇ・・・それって・・・
そういうことなんだよね?
わたし・・・待っちゃうよ?
うぬぼれちゃうよ?良いの・・・?

星ちゃんの誕生日だったはずの土曜の夜、
私は最高のプレゼントをもらった・・・。

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