#56.
結構私の大学でも星ちゃんたちの交流試合は話題だった。
学校の掲示板にも大きく書かれていたし、
毎朝正門のところではアメフト部の誰かしらがチラシを配っていたからってのもある。
ーーーでもそれ以上に先日、星ちゃんがテレビに出てインタビューを受けたことも関係しているのかもしれないなとは思った。
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試合当日、私は朝から緊張していた。
なぜ私がっていう話だけど、正直どっちを応援するべきなのかも悩んでいた。
そんな私を見て星ちゃんはただひたすらからかっては笑っているだけだったけど、
今日は自分の大学を応援しろ、と最後に彼は言った。
ーーーううん、やっぱり星ちゃんを応援したいな。
そう思ったんだよ。
試合開始は11時から、
連休最後とは言えお休み中なのに結構な人が学内に集まっている。
ホームだから応援は大学側の人の方が断然多いけど、
星ちゃんたち側の方も応援が続々と増えている。
私はチア部である理央と途中まで一緒に向かい、
試合開始されるまでグランドの人だかりの隙間に入らせてもらった。
本当は社会人側に行って応援したい気持ちはやまやまなんだけど、
それでは学生側の子たちから白い目で見られそうで怖くて臆病な私には出来なかった。
ほどなくしてヘルメットを持ちユニフォームに着替えた選手たちが入ってくる。
今日まで知らなかったけど、
アメフト部の部員は私の学校でも人気があるようで、
キャプテンや副キャプテンだと思われる人物の名前を呼ぶ声が非常に鳴り響いていた。
そして社会人側も日下部さんを先頭にお兄ちゃん星ちゃんが入場してきては、
黄色い奇声がこちらまで響いてくるーーー。
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私はアメフトのディフェンスとオフェンスがぶつかり合う瞬間が大嫌いだ。
ヘルメットとヘルメットが当たる音が心臓に悪く、
寿命を小さくするーーー。
実際にそのぶつかり合いで脳震盪を起こす選手も少なくないと、なんかの雑誌で読んだことがある。
それにタッチダウンに向かって投げるQBだったり走っているRBだったりWRだったり・・・
色々なオフェンスのポジションの選手に対してもディフェンスは体当たりで来る。
あれが・・・本当に怖い。
それがアメフトというスポーツなんだから仕方ないんだけど、
やっぱり心臓に悪いなって今試合を見ていて思う。
試合開始して同点で終わったハーフタイム、
選手たちはグランドで休憩を取るーーー。
私はチラっと星ちゃんの方を確認するけど、ちょっと遠くて見えにくい。
でもチームのみんなと真剣に話し込んでドリンクを流し込んでいる姿は目に見えた。
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そしてアクシデントが起きたーーー。
後半20分が経過した時、ちょうどリードしていたのは社会人チーム。
RBのお兄ちゃんにQBである星ちゃんがボールを投げ渡したとき、
ディフェンス側だった学生チームの副キャプテンが攻撃して、お兄ちゃんは倒れた・・・。
いつもだったらすぐに起き上がるけど、頭を抱えてうずくまっている。
多分、その場にいた全員が張り詰めた様子をしていたと思う。
すぐにお兄ちゃんに駆け寄った星ちゃんはお兄ちゃんのヘルメットを取ったけど、
お兄ちゃんは意識が朦朧としている。
「すいません、この水もらっても良いですか?!」
「えっ、あっ、どうぞ・・・」
こういう時の私の行動力は自分でもすごいと思うけど、
私は学生側のマネージャーさんに置いてあったペットボトルの水をもらって、
周りの目を気にすることもなくグランドを突っ切りお兄ちゃんに駆け寄った。
そしてそのまま水をじゃーとかけた。
「ちょ、ちょっと!!何するの!!!???」
学生側マネージャーは血相を抱えて私に近寄ったけど、私はその人を振り払った。
だって大丈夫だから、
私はこんなことではお兄ちゃんは倒れないって分かっているもん。
でも私の大胆な行動に驚いていたのはお兄ちゃんもだけど星ちゃんもだったね。
「ちょっと・・・相手チームになんてこと・・・」
マネージャーさんがもう一人来て私にすごい怒ってたけど。
「ーーー大丈夫ですから。軽い脳震盪ですから。」
「すいません、うちの学生が・・あなた出ていきなさい!」
恐らく4年生であろうマネージャーが私に怒鳴りつけた。
「お前さ、やり方があるだろ?(笑)」
お兄ちゃんは体を起こしながら私に言って、その他の日下部さんたち社会人チームの人たちはその光景を見て笑ってた。
「倒れる方が悪いでしょ(笑)ほら、副キャプテン、めちゃ申し訳なさそうにしてるけど?(笑)」
「倒れたんだから仕方ないだろ(笑)」
「あの・・・?」
よそよそとマネージャー二人の隣に近寄った副キャプテンとキャプテン、
すごく不思議そうな顔をしている。
「ーーーあっ、この人、もう大丈夫なんで試合続けてください。お邪魔しました、部外者は出ていきます。キャプテンさん、突き指してますよね?テーピングした方が良いと思いますよ?」
私はマネージャーに伝えた。
「ーーーあっ、はい・・・」
私はそのまま先ほどいた定位置に戻り1人観戦を始めた・・・。
チアとして踊ってた理央はその光景を見て爆笑してるーーー。
この中で理央だけがお兄ちゃんだって知っているからだよね、
私は自分の位置に戻って大胆な行動をしてしまったことにハッとした。
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結局試合は社会人チームの勝利だった。
お互いに応援に対する感謝のお礼をして、私は星ちゃんと目が合ってガッツポーズを送っておいた。
そして解散、となった時・・・。
「ルナ!キャプテンにテーピングしてやれ。」
先ほど倒れたお兄ちゃんが元気よく私に叫んだ。
またみんなからの視線を感じるーーー。
「はーい。」
軽く返事した私はお兄ちゃんの言うとおりにキャプテンの近くに寄った。
「先ほどはでしゃばることをして失礼しました。」
「いえーーーだいぶ大胆で驚きましたけど(笑)」
3年生だというキャプテンは気さくに話してくれた。
「あなたテーピングできるの?」
そして隣にいた先ほど私に怒鳴ったマネージャーさんは怪訝な顔で私に言った。
「・・・分からないけどやってみます(笑)テーピング教室には通ってたので記憶をたどります・・・」
すぐ近くのベンチに座ってもらって私はキャプテンのテーピングをやった。
「すげ・・・早い、しかも適格。」
キャプテンは目を見開いて驚いていた、
だてにテーピング教室通ってませんから。
「あなた・・・」
そしてまたマネージャー・・・
この人は若干怖い。
「何でしょうか?」
「ーーー一緒にマネージャーやらない?」
・
3年生だった香川佐知さんという怖いマネージャーさんは話せば実はよい人だった。
ただアメフトが好きで、邪魔をされたのが気に入らなかったのだと正直に言われた。
「ーーーごめんなさい、体力に自信がないので・・・」
マネージャーになる件は断った。
「でもテーピングに通ってたなら、経験があるんじゃんないの?」
「あっ・・あの人専門でテーピングしていたんです。ーーー私の兄なんで。」
「えっ???!!!太陽さんがお兄さん?広瀬…ほんと、同じ苗字なのね!」
「それならぜひマネージャーに・・・」
お兄ちゃんの妹だと名乗った瞬間にキャプテンも副キャプテンもマネージャーにならないかとしつこい。
「だから・・・私は・・・」
あまり多くの男性に来られるのは正直まだ抵抗がある。
悪い人たちじゃないと分かっていても抵抗が大きい。
ーーー私は少し怖くなって後ずさり。
トンとある一人にぶつかった。
「ゴメンね、この子、あまりスポーツとか得意じゃないみたいだよ?見てよ、細いしスポーツ苦手ですって象徴的でしょ?」
星ちゃんだった・・・。
てっきり向こう側でサインでもしていると思ったのに。
「ーーー分かりました、いつでも待っていますから。」
・
ーーー試合が終わって学生側と社会人側は合流飲み会だって。
良いなぁ、星ちゃんと一緒にいられるなんてと思って・・・
変なことを考えないように私も理央と一緒に夕食を食べに行くことにした。
「るながあそこまで大胆な行動するとは予想を超えた!」
何度もそう言っては笑うーーー。
自分でも驚いたよ、でもお兄ちゃんはあんなことでは倒れないって確信していたからこそ出来たんだよ、と返答した。
ただ自分の大胆な行動が、
少し不安になっているのは侮れない。
連休明けの学校が若干不安になった・・・。
私が妹だと知っていた人たちにとっては何でもないことだったと思うけど、
全員が全員そういうわけじゃない。
でしゃばってと思った人もいるかもしれない、
それに相手のチームのお兄ちゃんのファンからしたらすごい不愉快だったと思う。
なんであんな行動をしてしまったんだろう、
自己嫌悪に苛まれることになった。
私は時々・・・
ううん、感情的になると大胆な行動に出ることが多い。
それこそ星ちゃんとケンカして感情的になったら家を出たり、
よく分からない行動をすることが多いのもこれだと思っている。
だから今回の大胆な行動は今回に限らず、
感情的になってしまった自分が招いたことなんだと思っている。
ーーーそしてその肝は当たり、
私は連休明けから学校での居場所が悪くなった。
私は高校時代アメフト部のマネージャーでした♪
ちょうど今の時期、夏の合宿を二週間千葉のふもとで行っていたのを思い出しました*
選手の洗濯物をしながら「母親じゃないのに、自分で洗ってよ。」と文句を言いながらマネージャー同士話していました♪
懐かしいなぁ*
テーピングって簡単そうに見えてすごい難しいんです!
実際に私たちも系列の高校にテーピング指導を受けにいった程、
それでも私たちは習得できませんでした(笑)
選手が自分でやるからと甘やかされ真面目にやってなかったので(笑)
アメフトのお話を描いていたので、懐かし話しでした♪
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