#54.
ーーー正月休みも終わり、私たちは日常の生活に戻った。
・
私は不安だった・・・。
星ちゃんが会社に行きたがらないんじゃないか、
不安に思っていることがまだあるんじゃないか、
もし自分だったらやっぱり復帰するのは辛いから・・・。
「ーーー今日、監督と人事部長に朝一で呼ばれてるから早めに出る。」
私が起きる時間に珍しく起きた星ちゃんはそう言った。
「うん・・・。きっと大丈夫だから。ーーー連絡待っているからね、自信持ってね。」
頑張ってね、とは言いたくなかった。
だって頑張っている人に対して、その言葉を言うのはおかしいから。
大学の講義の最中も今日はいつも以上に上の空だ。
ーーー星ちゃんのことが心配で仕方ない。
どうだった?、とこちらから連絡すれば済む問題だけど急かしてるみたいで逆効果になることもある。
だから、今日に限っては待つしかない。
・
でもね、昼になっても・・・
待てど待てど連絡がないーーー。
何度メールを送ろうか、と考えたことか。
その度に画面を消して頭を振り出しに戻すように横に振る。
「ーーーなんていう不細工な顔してんだよ(笑)」
「あっ、お疲れ様です。」
1人カフェテリアで1時間、次の授業まで潰す。
そこに現れたのは昨日会ったばかりの佐久間さん。
「今日は講義ですか?」
スーツ姿だったから就活に行ったのは分かる。
「そっ。夕方に面接があるから、このままだわ。」
栞ちゃんから佐久間さんはどうしてもやりたい職業があるから受けられる会社は限られてるの、と聞いたことがある。
「順調ですか?」
「ーーー微妙だな(笑)お前もあと二年したら気持ちがわかるよ(笑)」
「分かりたくないですわぁ。」
ーーー佐久間さんとの会話が少しの不安を和らげる。
佐久間さんにちょっと感謝をしよう。
・
講義が終わって学校を後にする頃にも連絡ない。
でも今日は本当に私から発信はしてはダメな気がしたから携帯はすごく気になるけど発信はしなかった。
「えっ、星ちゃん?」
学校を後にして帰路に着く私を改札で待つ人物、
星ちゃんがそこに立ってた。
「よっ。一緒に帰ろうと思って待ってたわ。」
まだ6時前なのに会社はーーー?
私に不安がよぎる。
「うん、帰ろうかーーー。」
私はいつも通り星ちゃんの手を繋いだ。
冷たくて、手袋が欲しくて、
でも星ちゃんの温もりを感じていたくて、
そんな複雑な気持ちだった。
「ーーー監督たちと話したよ。」
夕飯を囲んで私たちは手につける。
「ーーーうん。」
「結論としては・・・制裁はなし。」
「ほんと!?」
私は座ってる椅子から立ち上がった。
「ちょうどシーズンオフに入ったことも助けられたってのはあるかもな。ーーーただ厳重注意はされて3ヶ月の減給になった。」
それくらいなら良かった、そう思った。
「ーーー良かった、退職にならなくて。」
「うん。ただ今まで自分のしてきたことを今すごく恥じてる、たくさんきっと傷つけた人もいたんだろうと思うと後悔してるよ。」
「ーーーそうだね、その気持ちを大切に前を向いていくしかないよね。」
「ーーーだな。」
「チームの人たちは大丈夫?」
「やらかしたな、とだけ(笑)あとは時間が解決するよ、とは言ってたよ。会社としても一応俺は顔もしれてる立場だから今後もあるなら名誉毀損で逆に出ることも検討すると、そうならないように相手側に忠告をしたと。ーーー監督に守られたなと思ったわ。」
「アメフトで期待に応えないとね。」
「頑張るわ。」
私もホッとしたけど、
それ以上に星ちゃんのホッとした顔が見れて安心した。
・
食後のソファでの寛ぎタイム、
星ちゃんはシャワー上がりの私の髪を乾かす。
これも日常になった。
人に髪の毛をやってもらうことがこんなにも気持ち良いとは。
ーーー相手が星ちゃんだからかな。
私は彼の手にそっと自分の手を添えた。
そんな私を星ちゃんは後ろから抱きしめたーーー。
「ーーールナ。」
「ん?」
「ーーー・・・まだ怖い?おれ、そろそろ・・・」
同じだーーー・・・。
私もね、星ちゃんとそろそろ繋がりたいと思ってたよ。
私は振り向いて星ちゃんにキスをした。
軽い口づけだけど、私たちにとっては本当に久しぶりの口づけだった。
「ーーー良いのか?無理してるなら・・・」
私は彼の首元に手を回した。
「良いの、私も星ちゃんとまた一つになりたい。」
星ちゃんは私をお姫様抱っこしてベットに連れて行った。
ーーー覚悟は出来ている、問題ない。
軽いキスから始まり濃厚なキスへと変わっていく。
私に触れる彼の優しい手つきが好き。
時に激しくなる、その綺麗な手が好き。
整った顔に苦しみがかった顔になる瞬間が好き。
私はそっと彼の頬に手を添える。
その度に唇を落としてくれる、優しい瞳で。
きっと私以外いないーーー、
彼をこんなにも愛してて彼からこんなに愛しそうに見られる女性は。
そして私たちは約半年ぶりにつながった。
そうーーー・・・、
今回は無事につながることができた。
藍沢さんに見えることもなく、きちんと星ちゃんだった。
私は克服できた、そう思ったら嬉しくて涙が止まらなかった。
・
「ーーー体痛くないか?」
「痛いよ!加減を知ってよ(笑)」
そう、一度じゃなかった・・・。
彼は何度も何度も私が達してもやめることなく、
お互いに何度も頂点に行き着いた。
「悪い悪い、学校行けそうか?」
「ーーーいくよ、星ちゃんは?」
「社会人は休めませんから(笑)」
私はそっとお腹に手を添えるーーー。
星ちゃんと触れるたびに思う、
この人との子供が欲しいと。
学生の身で無責任なのは分かってる、
でも愛した証拠が欲しい、と願ってしまってる自分がいる。
ーーーそんな自分が怖かった。
こんなに人を愛したことがないから、
自分が自分で無くなりそうで怖かった。
「ーーー近い将来、作ろうな。」
ーーー星ちゃんはそう言った。
気づかれていたんだね、私の気持ち。
申し訳なさと嬉しさと悲しさと悔しさと、
いろんな感情が混み合って私は涙を流した。
そんな私を星ちゃんはずっと抱きしめていたーーー。
お互いに生まれたての状態で抱き合い笑い合う。
そこに恥じらいなんてなくて、
ただ愛しさだけが溢れていた。
コメント