#24.
2月も終盤に入り、
少しずつ暖かい陽気が感じられるようになって来た。
・
お兄ちゃんは私より一足先にマンション契約をして引っ越しをした。
私は4月に入ってから、
それと同時期にお父さんとお母さんも引っ越すことが決まった。
そして誰よりも先に引っ越しをしたのは星ちゃんだった。
同じ都内ということもあり、引っ越しやすかったから。
「ーーーこのコップはどう?二つ合わせると顔になるよ(笑)」
「いやいや、絶対こっちの方が良いと思うぞ(笑)」
私たちは今日、一緒に暮らす新居のコップや歯ブラシなど最低限必要なものを購入しに来た。
生活で必要なベットや洗濯機などのものは既に星ちゃんが揃えてくれた。
「じゃあお皿はこっちだからね、良い?」
「どうぞどうぞ(笑)」
お互いに譲り合いながらお買い物を進める。
こう言ったやりとりがとても楽しく感じる。
( 見て!あの人かっこいいーーー!モデルみたい!)
でも星ちゃんと並んで歩くと不安になることもある。
こうして一緒にいるだけで目立つ星ちゃんは、
色んな女性から声をかけられることもあるし、
今みたいに小声で会話されることも多い。
ーーー当の本人は全く気にしてないんだけどね。
「ーーーそういえば卒業式いつなんだ?」
「3月9日だよ、星ちゃんは?」
「21日だわ笑。入学式まで時間あるんだろ?ーーー前言ってた大学祝いの温泉でも行くか?箱根だっけ?」
「うんっ、行きたい!」
新しく出来たばかりのイタリアンに入ってナポリタンを食べる私とカルボナーラを食べる彼。
デザートにわたしはチョコレートパフェを食べて、
星ちゃんは甘いものが苦手だからドン引きしてる。
でも1人では食べきれないから、
星ちゃんも嫌そうな顔をしながら食べてはウェッとやってて失礼な客だ(笑)
ーーーこんな幸せな時間は本当にあっという間に過ぎていく。
結局星ちゃんの新居によることもなく私は自宅に戻った。
・・・もう少し一緒にいたかったけど、
明日は学校だから仕方ない、と自分に言い聞かせた。
・
「単刀直入にいうわ、星也先生と別れて。」
次の日、私はみのりちゃんに呼び出された。
ーーー貴重な私のお昼時間を彼女に少し費やしてあげたのを感謝してもらいたい。
「えっ・・・」
「昨日、見たのよ。あなたと星也先生が一緒にいるところ。」
ホラッと写真まで盗撮していたよーーー。
でもそれ以前にみのりちゃんは私と星ちゃんの関係を知ってるんだよね?
「・・・望月くんを使って、私をつけさせたのみのりちゃんなんでしょ?ーーー星也先生も知ってるよ。」
みのりちゃんは望月くんから何も聞いてなかったのか、
悔しそうなしかめっ面をした。
「あいつ・・・広瀬さんたちの関係を学校にバラすことだってできるのよ?」
「ーーー彼は誰かの所有物じゃないよ。・・・それに私が彼と別れたとしても、みのりちゃんのところには来ないと思うけど。」
私も今までされて来たイライラもあり、
普段はあまり意見は言い返さないけど今日は言いたいことを言った。
「何様なの!ほんとあんたみたいな人大嫌い!顔が可愛いからって調子乗んな!」
私も言い過ぎたかな、と思ったからヤバいと思ったけど時すでに遅しでみのりちゃんに突き飛ばされた。
いたっ・・・。
みのりちゃんは私に比べたら背も高くガタイも良い。
ーーー中学の時は陸上部だったと聞いたしね。
それに比べて私は身長もとても低く小柄な体型なので彼女に押されたらもちろん転ぶのは許容範囲。
案の定、尻もちをついてしまったーーー。
彼女はそんな私を睨みつけながら教室に戻っていったけど、
よっぽど私のことが気に入らないんだろうね。
ーーー好きな人の幸せを願う、それも一つの愛だと思うけど今の彼女には出来ないんだと思う。
実際に私も逆の立場だったら難しいと思う。
わたしはーーー、
念のためにそのことを星ちゃんに伝えた。
「怪我はなかったか?」
「うん、尻餅だけだもん(笑)」
昼休み中の電話なんて初めてに近いから星ちゃんもすぐに電話取ってくれて助かった。
「ーーーなら良かったけど、ルナは力無いんだから気をつけろよ。」
「相手が強いんだよ、わたしが普通なの(笑)」
「それだけの元気があれば大丈夫だな!笑」
その件だけ話してとりあえず電話は切った。
・
その日から私に対する嫌がらせが少し強くなった。
犯人はみのりちゃんだって分かってるし、
向こうもそれを隠そうとはしなかった。
「ビッチ!」
そんなメールが送られて来たり、
靴箱にも紙切れで何枚も入っていたりした。
ーーーもうすぐ卒業だし言いたいように言ってれば良いって思った。
だから私は友達にも星ちゃんにも家族にもあえてこの事は話さなかった。
私の中でも特に重要視していなかったから。
「来週卒業式か、早いな(笑)」
「大学のは遅いもんね、楽しみ?」
「ーーー少し寂しいけどな(笑)」
「だよね・・・」
「そーいや、卒業式の後にあるプロムってまだ生きてんの?」
今日は土曜日、1週間ぶりの自宅デート。
2人でテレビを前にして横並びに座り、
美味しい紅茶を飲みながら団欒する。
「あーーー、生きてる笑。星ちゃん誰かと行ったの?」
「・・・まぁ、ね苦笑」
「ーーー当時の彼女とかですね、聞いた私が悪かったです(笑)」
「ーーールナは?誰といくか決めたのか?」
「4年前はわからないけど今は誰と行かなくても参加して良いんだよ。ーーーまぁ、怜くんに誘われたけど・・・」
「あっ、そーですか笑」
「ーーー断ったよ。卒業式で踊ったカップルは永遠に一緒っていうジンクスがあるんだって、知ってた?」
「いや?おれ、何人かと踊ったけど特にその後何もなかったけど(笑)」
「出ました、クズモテ発言(笑)」
ーーーでも星ちゃんはフォローとかは絶対しない。
私もこれくらいではへこまない、
だって星ちゃんが私のことを好きでいてくれてるのはすごい伝わるから。
それでも私は星ちゃんにしがみついたーーー。
「なんか最近ルナから多くないか?(笑)」
ふざける星ちゃんを私は力ずくで押し倒した。
おっとっと・・・
と倒れていたけど顔は笑ってる人ーーー。
「ーーー離れたら許さないからね?」
私は真顔で言った。
「ーーー離れねえよ。」
星ちゃんも真顔で答えてくれた。
そのまま私は星ちゃんに抱きついて、好き、と伝えた。
床に倒れてる状態の星ちゃんに覆い被さるわたし。
「ーーーその体制はやばいって。」
星ちゃんは強引に私と星ちゃんの立場逆転をした。
「ーーー卒業式、ルナをもらう。・・・待ってろ。」
星ちゃんは私に言った。
「・・・うん、待ってる。」
そしてハッとした。
星ちゃんはわたしが経験ないと思ってるのではない、かと。
それを伝えようか迷ってると彼が続けた。
「ーーー2度と嫌な経験はさせない。」
そう言ったーーー。
知ってたんだ・・・ーーー。
どこまで知ってるか分からなかったけど、
今まで知ってて星ちゃんは何も言わないでくれた。
その優しさにわたしは涙が溢れ、
床に倒れながらもその涙を見られたくなくて両手で顔を覆った。
ーーーそんな私に星ちゃんは優しくキスをしたんだ。
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