#21.
今、私は自宅のベットに横になってる。
どうやって帰宅したのか、
なんも覚えてないーーー。
ーーーとにかく頭が真っ白だ。
・
「ーーーはい。」
そしてさっきから星ちゃんに電話しては出てもらえないのが続いてて、
やっと出て貰えたのは日付が変わろうとしてる時間帯。
「遅くにゴメン、今平気?」
「ーーー何?」
あーあ、怒ってる・・・
当たり前だけど怒ってる。
「今日のことーーー。」
「あー、草田とキスしそうになってたこと?」
「ーーーキスなんてしてない。」
「望月が声かけなかったらそのまましてたんじゃないのかって話だよ(笑)」
「そんなこと・・・」
「まぁ良いよ良いよ、俺がルナに言えた立場じゃないし。」
ーーー相当怒ってるのがもう分かった。
怜くんと一緒に帰った理由も、あそこにいた理由も話そうと思ったけど・・・
今は聞く耳を持ってくれないと分かった。
「ーーー遅くに電話してごめんね。ゆっくり休んでね。」
「じゃ。」
そのままプツンと電話が切れたーーー。
わたし、どうしたら星ちゃんに許してもらえる?
・
「ごめんね、自分でお願いしておいて・・・」
「ーーー俺から説明しようか?」
「ううん、自分で巻いた種だから。ありがとう。」
私は怜くんとはもう帰れないことを伝えた。
自分勝手だけど星ちゃんにこれ以上誤解して欲しくなかったから。
その日もやっぱり誰かに見られてる気がした。
パッと見ると、やっぱりいない。
[ バイト?ーーー駅で待ってる、来てくれるまで待ってる。]
ーーー私は駅に着いてから星ちゃんにメールした。
私をつけてる人が見てるかもしれない、
けどそれより星ちゃんの方が大事だからもう負けないと決めた。
1時間待っても二時間待っても来ないーーー。
多分もう来ないんだろうな。
それでも待つと決めたからーーー、待った。
「ーーーいつまで待つつもりなんだよ。」
「・・・来てくれたんだ、良かった。」
「この真冬に風邪でも引いたらどうすんだ!?」
「あっ・・・寒いこと忘れてた(笑)」
「ーーー今日は卒業旅行のメンバーで色々決めててメール見るのが遅くなってごめん。」
昨日よりは怒ってない、そんな気がした。
とりあえずいつものカフェに行こう、と言う話から当たり前のように横並びに歩き出した。
いつもならすぐに手を繋いでくれる星ちゃんの大きな手、
今日は宙ぶらりんで行き場をなくしているね。
ーーー距離ができてしまったんだ、と痛感した。
「・・・どうかしたか?」
カフェまでの道のり、背後から誰か私を抜かそうとするだけでドキッとする。
抜かされてホッとする自分がいる。
「ううん、何でも・・・」
また次に背後に人の気配を感じてハッと後ろを見る、
ただ私を抜かそうとした人だった。
ーーーそんな時、宙ぶらりんだった私と星ちゃんの手が突然繋がれた。
えっ、と星ちゃんの方を見る私。
でも彼はまっすぐ真剣な顔ざしで前を向いて歩いてる。
「ーーーいつから?」
「えっ・・・」
「いつから背後に人を感じてる?」
大きな星ちゃんは私を見下ろして見つめた。
ーーーバレた。
「・・・多分3週間くらいだと思う。」
「はっ!?そんなに?何で言わねぇかなぁ・・・」
「ゴメン。でも心配かけるから・・・」
星ちゃんは突然私の腕を引っ張って、
カフェとは逆の方向に歩き出した。
「ーーー家に行こう、外じゃ話せないだろ。その前に電話させて。」
相手は望月くんで、貸している雑誌を返して欲しいから持ってこいと言うことだった。
ーーー大切なものなんだろうと思いながら、私たちは聖ちゃんの家に向かった。
「ーーーなぁ、何のために俺がいんの?」
ソファに座りお茶を一口飲んだらつかさず話を続けた星ちゃん。
「だって言ったら絶対に星ちゃん迎えに来たりするでしょ?そんなの関係がバレちゃう。今は部外者でも教育実習に行ってたんだから問題になっちゃう、星ちゃんの進路にも問題が出ちゃう。」
「そんなことどーでも良いんだよ!ーーー草田はそれを知ってて一緒に帰ってたって言う誤解ってことなんだな?」
「ーーーそう。もう毎日怖くて、同じ方向の草田くんに昨日一緒に帰ってもらったの。でもやっぱり気配感じて逃げた先に望月くんたちがいて・・・でも、誤解されたくないから草田くんにはもう断った。」
「ーー1人での登下校危険だろ、何があるかわからないし、ましてやルナの家はお父さんの不在が多い・・・心配要素ありまくりだろ。」
「ーーーわたし、どーすれば良い?」
ーーー ピンポーン ーーー
そんな時にインターホンが鳴った、
望月くんが雑誌を返しに来たんだ。
「わたし、隠れるよーーー。」
「いや、ここにいて良い。ーーー待ってて。」
そしてリビングに置き去りにされたまま、
星ちゃんは望月くんを招き入れた。
「広瀬ーーー?」
「あっ・・・えっと・・・」
「ーーー望月、お前がここに呼ばれた理由分かるよな?」
星ちゃんは凄い冷めた瞳で望月くんを見た。
どういうこと?
「あっ・・・はい。」
そして彼もすぐに頷いた。
「だったら本人目の前にいんだから説明しろ。」
本人・・・?
わたし・・・?
「ごめん!広瀬の後をつけていたりしたの、犯人俺です!」
「えっ?なん・・・で?」
「ーーーとにかくつけて怯えさせろ、最悪はどんなことをしても良いって脅されたんだ。」
「どんなことをしても良いって・・そういうことか?」
つかさず星ちゃんが入り、望月くんも頷いた。
「話が見えないんだけど・・・脅されたって誰に?」
「ーーーみのり。あいつ、先生のことマジで好きで。幼馴染のよしみで付き合えって。昔、あいつの背中に火傷を負わせてしまって、これをしたらチャラにしてあげるって言われたんだ。ほんとごめん!」
「つまり、みのりちゃんは私と彼の関係を知ってるってこと?」
「ーーー知ってる。だから広瀬のことが邪魔で許せないって言って・・・。恐怖を覚えさせて別れさせろって言われたんだ。ホントごめん。」
その瞬間、ガツンと強い音がした。
「お前、どんな酷いことをしてるのか分かってるのか!?」
星ちゃんが望月くんの胸ぐらを掴んでいたーーー。
「分かってます!俺だってこんなことしたくなかったですよ!でも、アイツからも解放されたかったんですよ!」
「ーーー星ちゃん、離してあげて。もう良いから。」
「もう良いって、怖い思いして・・・」
「それでも誰か分かったから、もう怖い思いしなくて済むならそれで良いから。」
「ーーー良いか、二度とルナに近づくな。教室内で話すのもやめろ。みのりって誰か知らねえけど、そいつにも伝えろ。良いな?!」
「ーーーはい、本当にすいませんでした!」
望月くんは凄い怯えてたーーー。
星ちゃんに対してなのか、
みのりちゃんに対してなのかは分からないけど。
・
「ーーーどして望月くんだって分かったの?」
彼が帰ってから私はホッとして、
でもやっぱり怖くて星ちゃんにしがみついてる。
「ーーーさっき鏡越しにあいつが写ってるのが見えた。」
「えっ?」
「偶然居合わせたのかと思ったけど、雰囲気もなんか違うし。まぁ、半信半疑だな、あれで間違えていたら謝罪するつもりだったし?(笑)」
「うわぁ、適当!でもカッコよかったよ?」
「えっ、聞こえなかった、何?もう一回言って?」
「いや、言わないー!」
いつものわたしたちに戻った気がしたーーー。
その証として星ちゃんは私を強く抱きしめた。
「ーーー昨日は嫉妬心丸出しして悪かった。」
「そんなことない、悪いのは私だから・・・」
私は星ちゃんの頬に手を添えた。
愛しかったのーーー。
愛しすぎてずっと見ていたいと思った。
ーーー星ちゃんは私の唇を強引に強く奪った。
「・・・この前の二の舞でゴメン。止めるから・・・ちゃんと止めるから・・・今だけは許して。」
星ちゃんはそう言ってもう一度強く私に唇を落とした。
すごく切なそうに、苦しそうな顔をしながら・・。
ーーー私はお兄ちゃんを恨んだ。
どうしてそんな約束をさせたの、と。
どうしてこの約束で星ちゃんを苦しめるの、と。
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