【 わたしの好きなひと 】#10. クリスマス*

わたしの好きなひと。

#10.

まだ星ちゃんとの濃厚なキスが記憶に残ってる。
目を覚ましてーーー、
自分の手で星ちゃんの唇が重なった自分の唇に軽く触れた。
ちょっと思い出すだけで今でもドキドキする。

「えっ、いつまでいないの?!」
「30日には帰る予定ーー。いつも1人にして申し訳ない。」
クリスマスの日の朝、私が星ちゃんの家に向かう準備をしている時に父に言われた。
どうしていつも突然決まるんだろうーーー。
時々こっそり電話したりもしてるし、
何か言えないことでもあるのかな。
「ーーー頑張ってね。いつも私の為にごめんね。」
大学進学を決めた時、お父さんは大丈夫だと言った。
でもーーー、働き詰めな気がするの。
わたし、こんなことさせてまで大学に行きたいなんて思わないよ?
ーーー働くことだって出来るのに、どうしてみんな私に大丈夫っていうの?
ーーーわたし、明後日誕生日なのに。
また今年も1人か、と苦笑いがこぼれた。

「ルナ?ルナ!」
「えっ、あっ・・・ごめん。なんの話だっけ?」
「大丈夫か?具合でも悪い?」
「ごめんごめん、なんでもないの、ボーとしてた!」
星ちゃんも明日から実家に正月明けまで戻るから荷造りで忙しそう。
お兄ちゃんと中高が同じとは言えご実家はすでに少し遠くに引っ越しちゃったみたいで、
ここから2時間かけて帰省する。
特に今年はお姉さんが出産で帰って来ているからアッシーをしなきゃならないと文句言ってた。
それでも知ってるよ、新しくこの世に誕生した姪っ子ちゃんにたくさんのお土産を買ったこと。
そんな星ちゃんをわたしは可愛いと思ったんだよ。
「夜、せっかくだからイルミネーション見に行こうか?車、出すよーーー。」
「でも明日早いんじゃないの?」
「クリスマスにずーと家ってつまんなくねぇ?」
確かにそうだけどーーー、
星ちゃんの負担になるような気がして。
「そうと決まったら支度しろよ、夕飯も外で食うからな!」

行動力ある星ちゃんに連れて来られたのは定番のみなとみらい地区。
「きれー!すごいよー!見て、ブルーライトがすごい!」
「だろ?なっ、来て良かっただろ?」
「ーーーありがとう。」
普段夜の街に出かけないこともあって、
すごい新鮮だし本当に綺麗だし、
やっぱり何よりロマンチックだったーーー。
赤レンガ倉庫から始まり大桟橋方面に歩きながらもイルミネーションを楽しむ、
もうこれだけで十分だった。
大好きな星ちゃんとこんなロマンチックなイルミネーションを見られてわたしは幸せです。

「星ちゃんのご両親はどんな人?」
「俺の親?2人ともよく喋るから誰も人の話を聞かなくて、誰かしら喋ってるうるさい家だよ。母さんはイベントが大好きで、今でも子供たちの誕生日は祝うからって毎年誕生日だけは帰らないとスンゲー嫌味言われるからな(笑)」
「にぎやかそうな家だね(笑)お姉さんもいるんでしょ?」
「にぎやかだよ。今年は姉ちゃんもいるから絶対うるさいわ・・・。急にどうした?」
「お兄ちゃんからも聞いたことなかったし、どんな家族なのかなぁってふと思ったの。」
わたしは握ってる星ちゃんの手に力を込めた。
「変なの(笑)」
そんなわたしの頭に星ちゃんは軽くキスをした。
そして後ろから私を抱きしめた。
「ーーー俺が戻るまでの2週間、耐えろよ(笑)」
「うん、頑張るよ。ーーーあのね、これ。私の小さな小遣いでしか買えなかったんだけどプレゼントなの。」
私はカバンにしまっていたクリスマスプレを渡した。
「ーーー良いのに。でもありがとう。俺は・・・これ。」
そう言って私の首元にひんやりした感触が。
ーーーRと書かれているネックレスだ。
「か、可愛い!ありがとう。大切にするね!」
「なくすなよ笑」
「ーーー無くさないよ!笑笑」
私たちは見つめあってキスをしたーーー。
暗い中で、
多くのカップルの中で、
とても綺麗なイルミネーションに見守られながら、
軽く優しいキスを交わした。

そして、星ちゃんは次の日ーーー。
ご実家に帰った。

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