#11.
実家は非常に落ち着くものだと思うーーー。
私はまだ一人暮らしをしたことないけど、
今、一人暮らしのようなものだけど。
やっぱりお父さんがいる時は心強いし、
気持ちが落ち着くからーーー。
だからきっと星ちゃんも実家を堪能してるんだと思う。
その証に丸2日、全く連絡がないんだから。
・
今日は私の誕生日、成人に近づく18歳。
お父さんやお兄ちゃん、
晴菜に怜くんと友達からのメールを受信した。
たぶんーーー、星ちゃんは私の誕生日を知らない。
今までもお互いの誕生日の話になんてなったことがないから逆に私も彼の誕生日を知らない。
ーーーひとりぼっちの誕生日は今年だけじゃない、
去年も一昨年もお兄ちゃんが大学で家を離れてからはずっとだ。
誕生日の朝はいつもケーキから始まる。
自分のために自分が食べたいホールケーキを作る。
そして、自分が食べたいご飯を作る。
それで良いの、それか私の誕生日の過ごし方だから。
そして夕方にはいつもおじいちゃん達からのプレゼントが届く。
ちょうど自分のための夜ご飯を作り終えた頃、
インターホンが鳴った。
トラックの音もしたし、祖父母からのプレゼントだって分かってる。
ーーーありがたいけど、プレゼントより欲しいものがある。
側にいて一緒に誕生日を祝って欲しい、って思ったの。
苦笑いをこぼしながらわたしは玄関に向かい印鑑を持った。
「今でまーす・・・ちょっと待ってくだ・・・」
玄関先に出るとそこに立ってたのは配達員じゃなかった。
「よっ!」
「えっ、何で?何でここにいるの?」
ーーー星ちゃんだった。
「何でって、誕生日くらい祝わせてよ。って予定より遅くなっちまったんだけど。とりあえず、上がって良い?」
「あっ、ゴメン。どうぞ。」
星ちゃんは慣れた足取りでリビングに入った。
そうだよねー、お兄ちゃんとよく家で遊んでたもんね。
「今からご飯?俺も食って良い?うまそうーーー。」
「ーーーうん、ありがとう。」
一緒にご飯を食べながら、
わたしは人とご飯を食べる温かみをすごく強く感じていた。
「ねぇ、ご実家は?」
「姉貴の買い物に今日は1日付き合ったから、夕方から家出して来た(笑)明日には戻る約束して来たし、文句は言わせねえ。年末って何で実家に戻らないといけないんだろうな(笑)」
ーーー一年の挨拶、って聞くけど実際はどうなんだろうね。
「ーーーあのさ、来てくれてありがとう。本当は1人でご飯なんて食べたくなくて・・・」
気が緩んだわたしは涙をこぼし始めた。
「うんうん、ルナは1人じゃないよ。俺が今はいるからさ安心して泣きなよ。寂しかったな・・・」
私の隣に来た星ちゃんは私のことを抱きしめてくれた。
「ーーー何で今日が誕生日って知ってるの?」
「前に生徒手帳見たから(笑)親父さんが出張中なのは知らなかったけどーーー。ルナ、言えよ。」
「えっ?」
「親父さんと2人暮らしみたいなもんでさ、出張が多いんだろ?こんな広い家に一人暮らしみたいになってたら危ないだろーーー。女の子だし、まだ高校生だぞ?太陽も心配してたし・・・。出張の時は俺の家に泊まるなりもう少し安全に過ごしたほうが良いと思うけど。泊まるとかはないにしろ、家に1人になる時は言って。心配だから・・・」
「ーーーはい」
私たちは見つめあってキスを交わした。
離してはふふっとお互いに照れ笑いをしてまた唇を重ねて、何度も何度も同じようなことを繰り返した。
ただ幸せだったーーー。
久しぶりに誰かに祝ってもらう誕生日も、
星ちゃんがサプライズで来てくれたことも。
今こうして目の前に星ちゃんがいてくれることも、
私を愛しそうに見る姿も全てが嬉しかった。
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