【 わたしの好きなひと 】#09. 清算* – Seiya’s Side –

わたしの好きなひと。

#09.

ルナが俺に別れを告げてから・・・
簡単に連絡がくるもんだと思ってた。
いっときの気の迷いで感情的に言ったと思ってた。
ーーーだけど一向に連絡は来ず、
こちらからもする気にはなれずにいた。
・・・今度彼女と連絡を取る時は、
信じてもらえるような人でありたいと思ったから。

ーーーバッチーン!
「ほんと、最低!」
今日はこれで何人目だろうか・・・。
ルナは俺の彼女に対する気持ちが妹と同じ感情だと主張していた。
ーーーまず自分が出来ることをやるために、
彼女に自分の本気を見せるために今まで遊んでいた女の子たちを清算することが大事だと思った。
「こっちだって本気じゃなかったわよ!自惚れないで!」

これまで散々遊んできたのは自分のせいではあるけど、
特定の彼女は作らない、
来るものは拒まないから本気にならない約束で色んな女の子と遊んで来た。
だからビンタされる権利ないと思うんだけど、
相手は本気になっていたってことなんだよな・・・。
どんな理由を述べても最低なことをしていたのは分かってる。
だから俺は反論もせず相手が納得してくれるまで、
ただひたすら彼女たちに謝罪し続けた。

そんな矢先ーーー、
高校時代の部活の監督から着信を受けた。
学校であるクリスマス会に是非出て欲しい、と。
なぜ俺が?と言う気持ちが強かったが、
その時にルナに会おう、そう決めた。
後輩に話を聞いてみるととうやらクリスマス会の日に現役 VS OBの試合をする計画が出ているとのことだった。

当日、俺は太陽と合流して軽食を取る。
基本的に話題は内定先のアメフトのことだけど、
時折太陽の彼女の話が出てくる。
太陽はルナと今の俺の状況を知ってるのか知らないのか、あえて何も話してこない。
コイツは昔からそうだったなーーー・・・。
話せば何でも話を聞くやつだけど、特別に割り込んでこないと言うか。
だから付き合うのにも居心地が良く気持ちが良くて、
いつの間にか親友になってたんだよなぁ、と思い出した。

軽食を取り、3時過ぎに部室へ向かう。
そこには先輩後輩を含めたOBが15人ほどいた。
アメフトは最低9人必要だからOBだけで間に合うのだろうかと思っていたけど、監督頑張って集めてくれたんだなぁ。
久しぶりの再会に熱が燃える中、俺たちはコーチに呼ばれてグランドに出た。

ーーー俺はルナの姿を探した。
「星也先生ーー!太陽先生ーーー!」
鳴り響く悲鳴も遠く感じながら俺は必死にルナを探した。
ーーー見つからない。
辺り一面見渡しても校舎の方を見ても彼女の姿は見えなかった。
太陽が来るから絶対に観に来ると思ったのに・・・
と思った矢先、木陰の方からグランドに歩いてくる1組の男女が目についた。
ルナと・・・草田 怜だ。
俺の予想が当たれば草田は恐らくルナのことが好きだ。
好青年で万人受けする爽やかな青年だと思う。
ーーールナも彼に悪い印象を持ってはいないだろう。

楽しそうにグランドに向かう二人の姿を見て俺はなぜだか今まで感じたことがない喪失感を覚えた。
友達と合流した彼らは楽しそうにしていたけど、
俺を見つけたルナは視線をわざと逃していたーーー。
仕方ないとはいえ、
自分の好きな女に無視されるのは応えることを初めて知った。

試合はOBチームの勝利だった。
俺は元々QBで、太陽はRBというコンビ。
やっぱり太陽とやるアメフトは楽しくて、
もうすぐ同じチームになることを考えると楽しみが増えた気がした。
ただ不覚にも俺は足を痛めたーーー。
ディフェンスに防護された時、倒れた俺は足を痛めたんだ。
在校生はこれからあるダンスパーティーへシャワー浴びて向かい、
OBの先輩や後輩たちも続々と部室を後にした。
ーーー太陽も次の日に予定があるとのことで、足早に大学のある地へ戻った。
「情けねぇなぁ・・・」
一人残った俺はジャージに着替え部室を懐かしみながら、
ダンベルのベンチに横になった。
そのまま両手で頭を覆い、自分が今までして来たことを悔いていた。

ーーー コンコン ーーー
「・・・星也先生、いる?」
聞き覚えの優しい声ーーー。
眠りに落ちそうになってた俺はハッと体を起こした。
「は?何で来てんの?ここ女子禁止だろ?」
「お兄ちゃんから足を痛めてるって聞いて・・・」
「あのやろ・・・」
誰にも気がつかれてないと思ったけど太陽は気づいていたか。
「これ湿布、保健室からもらって来たから。」
ルナは手にしていた湿布を俺に渡した。
「悪い、助か・・・」
最後まで言葉を発する前に俺は優しくて気持ちの良い柔らかいものに抱きしめられた。
それがルナだと気がつくのには時間かからなかったが、
ずっとこのままいたいとも思った。
「心配したんだから!お兄ちゃんから倒れてる、起き上がれないってメールが来て・・・」
彼女の長い癖のあるカーリーヘアが俺の頬をくすぐる。
「見ての通り倒れてないけど(笑)?ーーーそれよりもシャワー浴びてないから臭いよ、離れて。」
ーーー汗臭い自分の匂いが彼女の制服に移っても嫌だと思ったので俺は彼女を突き放した。
「ご、ごめん。わたし、何やって・・・」
無我夢中だったのか、
ハッとした彼女は真っ青な顔をしていた。
「シャワー浴びるから、適当にクラスに戻りなよ。ダンスなんだろ?」
俺は返事も聞かずにタオルを持ってシャワー室に向かった。

俺は困惑していた。
ルナの気持ちは痛いほど伝わるけど彼女自身も葛藤していることがわかるから、
今自分の気持ちを伝えるべきではない気がした。
何となく余計に彼女を混乱させる気がした。

「星ちゃん」
そんなことを考えているとシャワー室のドアノブの向こうから聞こえたルナの声。
「えっ!いつ入って・・・いてっ!」
驚いて俺はシャワーを落とした。
その時に彼女が俺の扉の目の前に裸足でいるのが見えた。
「星ちゃん・・・」
そんな彼女はシャワー室にポツリと座った。
いや、待て・・・
下着もスカートも濡れるだろ。
「今出るから、ルナも濡れるから出ろ。」
「ーーー星ちゃん、ゴメンね。」
俺はシャワー室から出ようとした扉に手をかけたが一瞬止めた。
「ーーーわたし、星ちゃんのこと忘れたかったんだ。こんなに辛い思いするなら嫉妬ばかりするならもう嫌いになりたいって思ったんだ。ーーーだからね、怜くんと付き合えば、好きになれるって思ったんだ。」
俺は自身の腰にタオルを巻いて、
扉に手をかけてルナを立ち上がらせた。
隣にあったタオルでビショビショに濡れた彼女の頭を拭いた。
「ーーー草田と付き合ってるのか?」
こんな会話してるのに制服のジャケットからうっすら見える彼女のブラウスさえも濡れていて下着が透き通って見える。
さらに彼女の濡れた姿が潤っていていつも以上に俺を興奮させている。
「ーーーキスしたの、彼と。私が頼んで、キスしてもらったの。」
「何でそんな・・・」
「ーーーそれ以上もお願いしたの。」
「本気で・・・?」
流石にそれは反応した、
俺でさえ我慢してるのに草田になんで先を越されなきゃならないんだと思った。
いとしの彼女を何で取られなきゃならないんだ、と思った。
「ホントだよ、でも怜くんはキスしかしてくれなかった。本当に好きな人とそういうことをしな、って。わたしもーーー、キスだけでも幸せなんか感じなくてただ申し訳なさと嫌悪感だった。」
「何でそんなことお願いしたんだよ・・・」
「好きでもない人と体を重ねる星ちゃんの気持ちを知りたかったから!それだけ!でも私はどんなに怜くんとキスしても星ちゃんを思い出してた最低な人なの。ーーーやっぱり星ちゃんが好き。傷つけられても凹んでも他の人を抱いてても聖ちゃんが好き。」
「ーーー女友達全部切ったよ。」
ルナは俺の方を見上げた。
「信じてもらえないかもしれないけど、過去に体を重ねた人も友達も異性は全部切った。ルナの不安を取り除けるものは何でもすると決めた。ーーー確かに前までの俺はクズで最低だった、だけどルナに出会ってからの俺はルナ以外とキスどころか2人で遊ぶこともしてない。ーーー誘いの電話は来たり家に押しかけられたりはあったからそれで誤解をさせたかもしれたいけど。ーーー信じてほしいんだよ、俺がルナのことを誰よりも好きだと言うことを。」
ルナは俺に抱きついたーーー。
「ーーーありがとう。」
「あのね、ルナと付き合う時に太陽と約束したんだ。高校卒業するまでは手を出さないって。俺も頑張って色々我慢してんのね。この状況は我慢できるかわからんのだよ。ーーーだから、悪いんだけど一度手を離して着替えようか・・・」
ルナは突然手を離して赤面して、そのまま離れようとした。
「待って、これくらいは良いだろ?」
ルナの腕を掴んで俺は唇を落とした。
約2ヶ月分の溜まった分の口づけを彼女に落とした。
これでもかって言うくらい、
彼女の力が抜けるくらい唇を重ね合わせた。

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