#22.
お兄ちゃんが星ちゃんに約束させたには理由があると思ってる。
ーーー多分、それは私のせい。
・
中学2年になったばかりの夏を目前にした春、
私は人を好きになると言うことを初めて知った。
クラスの男の子で隣の席になった春井くん。
ーーー無口だけどふと見せる表情に惹きつけられた。
修学旅行の6月、
偶然にも修学旅行実行委員になった私たちは少しずつ距離を縮めていった。
話せば話すほど見た目とのギャップが面白くてのめり込んだ。
ーーー向こうも少しは好意を持ってくれてると思ってた。
実行委員の帰りは一緒に帰ったり、
手を繋いだり、キスもしたーーー。
でも付き合ってるという言葉もなく、
ただ友達以上恋人未満だった。
そして迎えた修学旅行、
男子たちが女子の部屋に遊びに来たーーー。
先生の点呼があっては布団に隠れ、
私は春井くんと同じ布団の中、
至近距離でいることにすごいドキドキしたのを今でも覚えている。
ーーーあんな感覚初めてだったから。
暗い雰囲気で・・・暗黙の了解でキスをした。
お互いをむさぶるようなお互いを求め合うキス。
「ーーー部屋に来て欲しい。」
先生が抜けてから、
先に春井くんが抜けて、
私はトイレに行くふりをして部屋を出て男子の部屋に行った。
もちろん部屋には私と春井くんだけーーー。
言葉もなく、先ほどの続きを求められた。
決して大きくない春井くんの身長だったけど、
小柄な私には十分すぎるほど見上げる形となった。
「ーーー春井くんが好き。」
私はそう伝えた・・・。
でも彼は何も言わずにただ私を求めるだけだった。
言葉の代わりに行動で示している、あの時はそう思った。
私が好きと言えば言うほど、
彼はむさぶるように強引に私に触れた。
ーーー嬉しかった、
好きな人に求められることが。
そして、私は完全に彼の沼にハマり流され・・・
そのまま一線を超えた。
私の初めてだったーーー。
・
「春井と美咲先輩付き合ってるんだって!」
ーーー私がその話を聞いたのは修学旅行から帰ってからすぐのこと。
耳を疑ったーーー。
春井くんが好きなのは私じゃないの?
あの時ーーー、一線を超えたのは何だったの?
もちろん問いただした。
「えっ、好きだなんて一言も言ってないけど?」
間違ってはいない、言葉が返ってきた。
「何であの時私を抱いたの?」
「ーーー広瀬は学内でも可愛いって評判だし?落ちるかなって思ったらコロって落ちて笑えた(笑)」
冷酷で残酷な言葉が返ってきた。
そのせいで私はご飯も通らなくて、
当時炊事担当だったお兄ちゃんを凄い心配させた。
ーーーこの事実を知ってるのはお兄ちゃんだけで、
お兄ちゃんは春井くんに殴りに行こうとした。
でもそしたら色んな人にこのことがバレてしまう、
美咲先輩も傷ついてしまうことを懸念した私はお兄ちゃんを必死で止めたーーー。
「ーーーあんな奴のために傷つくな。もっとルナを大切にしてくれる奴が現れる。2度と傷付けさせない。俺がルナを守る、絶対に・・・」
お兄ちゃんはあの時に誓ったんだと思う。
星ちゃんと付き合うと言った時、
喜ぶ反面心配もしてたのを思い出す。
女癖の悪い星ちゃんだから心配してくれていたんだよね、と今なら思う。
ーーー多分お兄ちゃんは星ちゃんの本気度を試しているんだと思う。
体目的じゃないことを示させているんだと思う。
ーーーだから全部私のせい。
こんなに過保護になってしまったのも私のせい。
星ちゃんに我慢させる要因を作ったのも全部私のせい。
「ーーーごめんね、星ちゃん。」
「・・・ん?」
「お兄ちゃんとの約束、破っても良いよ?」
「ーーーそれは出来ないよ。ルナを大切に思う太陽の気持ち、少しは分かるから。」
ーーー星ちゃんは知ってるの、私の黒い過去。
お兄ちゃんは話したのかな、と不安になった。
「ーーーゴメンね。」
星ちゃんは何も言わずに私を抱きしめた。
ーーー罪悪感に苛まれながら、私は涙を流した。
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