【 わたしの好きなひと 】#65. 気持ちの温度差*

わたしの好きなひと。

#65.

ーーーもう1月、
彼は毎年恒例のように実家に1週間、
私も数日だけ実家に戻ることになった。

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久しぶりに会うお兄ちゃんとの会話に弾んだ3日、
変わらないお父さんとお母さんとの日常。
前よりも両親との関係は良好にあるように思える。
どんなに親しい中でもある程度の距離感は大事なのかな、と思うようになった。

一足先に東京に戻った私は、
休むことの知らない病院に足を運んだ。
「あれ?明後日からじゃなかった?」
小児科のナースステーションに顔を出しては言われて苦笑い。
「ピアノ、お借りしても良いですか?」
「もちろん、お好きなように使ってね。」
優しい婦長さんの言葉に甘えて、私はピアノを借りることにした。

「るなちゃん!るなちゃんだー!」
ピアノを奏でること15分、
小児病棟から6歳の杏ちゃんと3歳の志穂ちゃんが出て来た。
お正月も自宅に帰れずに入院生活を送っている子供たちの頑張ってる姿を目の前にすると涙が出そうになる、
それに自分ももっと頑張ろうと思える。
2人のリクエストに応えて、わたしはチューリップの曲ときらきらひかるの曲を演奏した。
それに合わせて歌う2人の姿が愛しくてたまらなかった。

それから間もなくして星ちゃんが戻って来た。
実家での1週間のこと、
地元のお友達のことだったりご両親やお姉さん家族の話をたんまりと教えてくれた。
特に星ちゃんは一才になったばかりの姪っ子ちゃんにメロメロで、笑うと俺にそっくりなんだ、とかおじバカ発言をしていた。
ーーー星ちゃん、そんなに子供が好きなのに自分の子供は欲しいと思わないの?
わたしは・・・やっぱり星ちゃんとの未来を思い描いてしまうよ。
それだけ気持ちの差が違うってことなのかなーーー。
「ルナは?」
突然の問いかけにハッとした。
「わたし?」
「久しぶりのご両親との再会だったろ、ゆっくり出来た?」
「あーーー、うん、普通かな(笑)特に何もないよ(笑)」
星ちゃんの人生に比べて、わたしの人生ってちっぽけでつまらないんだなって思った。
星ちゃんはそのときその時を楽しんでる、
私は星ちゃん中心に考えてるーーー。
実家にいても星ちゃんのことばかりだった。
ーーー温度の差ってこういうことなんだなって思ったよ。

学校も始まり、私たちは少しずつ就活の準備に入る。
本格的に始まるのはまだだけど、
どういった職種があり、自分がどういう職種に適応しているかの検査をしたり事前にやっていても損しないことはたくさんある。
わたしは理央と一緒にその適性検査を受けに行った。

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バイトを始めて早数ヶ月、
ピアノの道に進むのは厳しいと嫌でも実感してる。
幼児に対するピアノは問題なく弾けても、
時折誰もいない時間に借りて演奏する自分の音楽はやはり感覚を失って弾けないから。
こんなんではピアノが好きです、と伝えても伝わらないことくらい分かってる。
ーーーそう考えたらやっぱり星ちゃんと一緒にいたいと思ってしまう。
でも彼はそれを望んでないーーー・・・。
そう考えると、今専攻している英語の道しかないのかな、と思うーーー。

適性検査の結果、わたしは営業などの総合職よりも事務職の方が向いていると診断された。
ーーーそれくらい自分でも分かっていたけど。
理央は逆に表舞台に立つ総合職診断がされていた。
性格が真逆な2人だからこの結果に異論はない。

適性検査の後に一度学校に戻った私たち、
そのあと偶然小林先生に会って、
前に行ったレストランに3人で行くことにした。
「この前入学したと思ったら、もう就職なんですかぁ、早いですねぇ。」
他人事のように遠い目をして小林先生は言う。
「私の古英語は地獄でしたから(笑)」
「わたしも!先生、何語話してるの?!と真剣に思ってた!」
3人で先生の古英語の授業について話す。
「4年までの間にもう一度取らないといけないので、もっと難しくなりますね(笑)」
意地悪な先生が言う。
ーーー古英語だけは、本当に取りたくない授業だ。
「就職も大事ですけど、留年しないようにしてくださいね笑」
また意地悪な先生が出て来た。
ーーーくだらない話をしてはや2時間、時計の針は9時を指していた。

「そろそろお開きにしましょうかーーー・・・」
時計を確認した先生が言う。
私たちは身支度をして、会計に行く・・・

ーーー ギャハハ ーーー
会計に行く途中で賑やかな団体が目に入った。
派手な集団、女性も男性も派手で、でもすごく楽しそうな雰囲気。
ーーー明らかに合コンの雰囲気だった。

「えっ・・・」
そしてわたしは一際女性に囲まれている1人の男性と目が合った。
お互いに驚いた顔をしたーーー・・・。
でもわたしはすぐに視線を逸らし、
先生の待つ会計へと向かった。
ーーー今日も先生は私たちに支払いを許さなかった。

「るな、今のってさ・・・」
気がついた理央は私に問いかけた。
「ーーーだよね(笑)」
私は彼女に苦笑いをこぼした。

古英語のクラス知ってます?
私が大学の時に必須で取っていたのですが、
小説に描いた通り、英語とは思えないほどの言語でした!
全く理解できない科目でした(笑)

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