【 わたしの好きなひと 】#55. 大学との交流試合*

わたしの好きなひと。

#55.

そして新緑を迎える4月、
私は大学2年生になった。

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ここ最近、大きめのキーボードを買った。
突然弾けなくなったピアノを久しぶりに弾いてみたいと思ったから。
だからと言って簡単に感覚が戻るわけでもなく、
私は星ちゃんがいる時にだけ教える、という理由をつけて弾くようにしている。

去年、星ちゃんは私が奏でる音色が好きだと言ってた。
だからこそ、彼のためにも音感を戻したいと思うのに人生はなかなかうまくいかないものだなと思う。

そして星ちゃんは減給という問題も乗り越え、
社会人2年目になり会社にもチームにも新しく後輩が出来てやり甲斐を少し覚えているっぽい。

私も星ちゃんとの生活にだいぶ慣れ、
帰宅が遅くても待つことなく先に寝て不安に感じることは無くなった。
それはきっと・・・
星ちゃんがたくさんの安心と愛情を毎日くれているからだと思ってる。
それに去年の彼のお誕生日にもらった指輪が私の心に強い安心感をもたらしている。
でも油断はしてないーーー・・・
彼と会話する時はちょっとしたことでも見逃さないように努力はしている。
だって安心感で相手を見なくて後悔だけはしたくないから。

「ーーー大丈夫か?」
今日も一緒にピアノを弾いたけど、
やっぱり同じ音源のところで手が止まってしまう。
特別ピアノを今すぐ弾いたいという気持ちがあるわけじゃないけど、
やっぱり大好きで学んでいたピアノをいつか戻したいとは思ってるーーー。
「大丈夫、ただ不思議なんだ。」
「不思議?」
「どうして突然弾けなくなっちゃったのかな、って。どんなに検査しても出てこなくて、原因が分からないなんて気分が悪い!(笑)」
「いつか、きっと弾けるよ。」
いつも私が少しでも落ち込むとこの笑顔が私を救う。
ーーー大好きな笑顔がそばにある、
それだけで私は本当に幸せもんだと思う。

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ーーーいつもの水曜日、
大学2年になってだいぶ授業の取り方もコツを掴んだ。
というよりもいかに楽するかを学んだ。
1日でも休む日が欲しかった私は、
月曜と金曜は朝から6限ギリギリまでみっちりと詰めて、
水曜は比較的楽をするためにお昼前には帰ってバイトを長時間入れるようにした。
今日もその日、
2年になって古英語から解放され、
今度は英語史という授業を取っている。
また英語のクラスもBクラスに戻ることが出来、
今は次の試験でAクラスに行くことを目標にしている。
だって必須英語は2年で最後だから、
最後くらい1番良いクラスでいたいと思うからね。

ーーーそして2限が終わると私はいつもカフェテリアでお昼を頬張りながら宿題と復習を終わらせてしまう。
自宅に戻るとバイトの後でやる気がないからーーー。

「生星也さん本当にカッコよかった!」
カフェテリアで勉強していると聞こえた一組の声。
ん?生星也さん?
耳を大きくしてその人たちの会話を聞いていると、
彼女たちはチア部の2人な様子。
ってことは大学のアメフトチームの応援もするし、
星ちゃんのことも知らなくはないのでは、と思った。
「まだ校内にいるのかなぁ?食べ終わったら探しに行ってみようか!」
そう聞こえるーーー。
学校のどこにいるのかしら?
本当に星ちゃん?

ーーー私は咄嗟に電話を取り出し彼に発信。
「・・・バレた?今?図書室の奥にあるミーティングルームにいるよ。」
何事もないようにお茶目な星ちゃんの声が届き、
私はそのまま電話を切って急いでその場所に走った。

ーーーいない。
星ちゃんの姿はない、
でも代わりに大学でも評判の高いアメフト部のキャプテンと副キャプテン、そしてお兄ちゃんがミーティングルームで話しているのが見えた。
あれ?星ちゃんは?
ーーーそもそもなぜお兄ちゃんまでいるの?
いろんな疑問が浮かんで近づくのを躊躇っていると、
突然影から出てきた手によって男子トイレに連れ込まれた。

強引なキスーーー。
でも優しいキス・・・
「ちょ!ここ男子トイレ!私出れない!笑」
「ーーーいいから黙れ。」
星ちゃんは私の唇から口を離そうとしない。
私が着ていたブラウスに手をかける、
なんかいつもの星ちゃんと少し違う。
「ーーーなんかあったの?」
「ない。だけど・・・学校って興奮しねえか?(笑)」
ニヤッと笑ういつもの星ちゃんがいる。
ーーーそして私はそのまま彼に流され、
まさかの男子トイレの一室で最後まで流されてしまった。
「もうっ!」
「でも満足したろ?(笑)」
なぜこの人はこんなに自信満々なんだろう、
確かにそうなんだけどさーーーー。
「もう一回・・・」
「ダメ!」
私は自分のブラウスを元に戻し、彼を睨んだ。
「ーーーるなが学校でこうしているだけで嫉妬する。俺のものにしたいって思っちまった、ゴメン。」
謝らないで、謝られちゃったら私も申し訳なくなっちゃう。

私は・・・
星ちゃんがミーティングルームに戻るのを見て、
バイトに向かった。

「ねぇ、今日はどうして学校に来たの?」
バイトを終わらせ、帰宅すると珍しく星ちゃんが帰宅してた。
私は寝る準備だけして彼の隣に座る・・・ーーー。
「急遽、練習試合が入ってその打ち合わせ。」
「ん?うちの大学と?」
「そっ。来月にやるよ、応援来れば、大学の(笑)」
「ーーー行きたいなぁ、でもなぁ・・・」
「・・・藍沢なら転勤したからいないよ。」
そうーーー、藍沢さんは4月を期に別チームへ移籍をしたと聞いた。
「いや、違くて。また星ちゃんが人気出ちゃうなぁと思って(笑)どこでやるの?」
「ルナの大学のグランドだって、今度はこっちが出向くみたいだぞ。」
「ーーー楽しみだね、応援は考えておく(笑)」

そして5月、
ゴールデンウィーク最終日に星ちゃんの会社と大学の交流試合は行われた。

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