【 わたしの好きなひと 】#17. 絶望*

わたしの好きなひと。

#17.

星ちゃんはうちから星ちゃんの家までのほんの数分だけど、
強く強く手を握り締めてくれていた。
ーーーそれがどんなに心強かったか。

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「ーーー大丈夫か?」
星ちゃんは私に水を差し出した。
水の置かれたカタンという音でハッとした。
「ゴメン。ーーー無力だなぁと思ってね。」
「無力?」
「だってお母さんのことをお母さんと認めることもできない。お兄ちゃんのことも救うこともできない。まだ高校生って法で守られていて何も出来ないんだなぁって思った。」
「お母さんのことは記憶にないんだからさ、ルナは特に仕方ないんじゃないの?ーーー太陽は、大丈夫だ(笑)アイツは・・・なんとかするだろ(笑)」
「ーーー星ちゃんにまで迷惑かけてごめんね。」
「良いってことよ。まぁさ、夜遅くに行った俺も悪かったし、そこは今後は気をつけるわー。」
全て話して星ちゃんは夜は控えると言ったーーー。
そんなの嫌だと、思った。
今までお父さんも仕事で不在が多く、
星ちゃんと過ごす時間がどれだけ私に勇気を与えてくれていたか。
精神安定剤だったのに・・・
それが減ってしまうなんて嫌だと思った。
「ーーーそんなのイヤだよ。」
「えっ・・・」
「今までだってそんなに会えてるわけじゃないのに、これ以上会えなくなるのはイヤだよ。わたし、何でもするから・・・そんなこと言わないでよ・・・」
元々情緒不安定だった私は聖ちゃんの言葉でもう止められなくなり、
その場に泣き崩れた。
「ーーーごめんな、余計なこと言ったな。悪かった・・・」
焦った星ちゃんは急いで私の元に来て抱きしめてくれた。

朝を迎えたーーー。
初めて泊まった星ちゃんの家、
この前も思ったけど隣に好きな人が眠ってるってすごく幸せなことなんだと思う。

私は星ちゃんの気持ちよさそうにしている寝顔を見て昨日のことを反省した。
いくら相手が星ちゃんでもノーと言える状況を作ってあげられなかったこと。
彼も彼なりに考えて言ってくれた言葉であったことを理解してあげるべきだったと思った。

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「ーーーおはよう」
「やべ、もう昼なの?!起こしてくれたら・・・」
「お昼軽く作ったよ、食べる?」
ーーー昨日長時間運転して長野から帰ってきて疲れているのに私の家庭の都合に付き合わせちゃったから文句は言えないよ。
それに私も同じ空間にいるだけで幸せだった。
「午後どっか行くか?元々出かける予定だったし。」
「ーーー一つ聞いても良い?」
「ん?」
「ーーー引っ越しするの?」
実はさっき偶然見つけてしまった何個かの間取り図。
おそらく引っ越しするんだろうとは思ったけど、
何も聞いてなかったから少しショックだった。
「あーー・・・みちゃった?話そうとは思ってたんだけどさ。」
「ーーー見るつもりはなかったんだけど。」
「この家からだと職場が1時間かかるんだよ。俺が朝弱いの知ってるだろ?ーーーだから少しでも近い、良い物件があれば引っ越したいな、と探してること、なんだよなぁ。」
「ーーー星ちゃんに見合う物件見つかると良いね。」
私は笑顔でそう伝えたーーー。

結局私たちはどこも行かずに静かにのんびり過ごし、
3時頃に私は自宅に戻った。
「ーーー夜に帰れば?」
何度も星ちゃんは言ったけど、私も譲らなかった。
学校が次の日から始まることを理由にしたけど、
本当は星ちゃんと一緒にいることが辛くなってしまったから。

ーーーなるべく夜には行かないようにすると言った昨日の言葉を思い出してみても、
星ちゃんは別に私に会えなくても寂しくないってことなんだなと裏を返せば繋がった。
今も彼のバイトや友達付き合いでなかなか会えない日が多くて、
会いたいとも私も言えなくて・・・
私は毎日でも会いたいと思うのに、
彼は会えなくても全然平気な人だもんね。
ーーーやっぱり私の方が気持ちが強くて、
思い出を増やすことが辛いと思った、
ただそれだけだった。

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