【 わたしの好きなひと 】#33. 初恋の人との再会*

わたしの好きなひと。

#33.

気づけばもう日付が変わってたーーー。
やっぱり夢中になると時間が過ぎるのは早い。



朝方、私は我慢できないほどの頭痛に襲われた。
ーーーここ最近ある体調不良の要因の一つでもあるこの頭痛。
昔から偏頭痛持ちで、
きっとそれが悪さしているのは分かってるけど。

いつも頭痛が始まると私は星ちゃんの隣から離れる。
起こしてしまっては大変だから。
今日も同じく彼の元を離れ、庭園にあるベンチに座った。
ちょうど朝日が見える時間帯で、
日が昇る瞬間を見るのは感極まるものだった。
「ーーーお願い、治って・・・」
私は祈るようにベンチに座った。
ーーー手と手を合わせてすがる気持ちだった。
その願いが届いたのか、
しばらくしたら頭痛が消えていたーーー。

朝食の時間は8時、
私はそれまでのんびりお風呂に入ったり帰りの支度をしたりした。
ーーー星ちゃんは寝ている。
でも今日の私にとってはそれが好都合だった。
朝食の時間までじっくり寝かせてあげ、
運ばれてくるバタバタという音がしてから起こした。

ご飯も食べのんびりしてからのチェックアウト。
ーーー今、星ちゃんが、支払いをしている。
私はお土産屋さんで何かないかなとボーと見てる。
「・・・広瀬?」
そんな時、ふっと呼ばれた私の名前。
広瀬、と呼ぶ人だから私のことを知ってる人。
顔を上げると・・・
会いたかったような会いたくなかったような人がいた。
「ーーー春井くん?久しぶり、元気だった?」
テンパってることを悟られたくなくて普通に話す。
「ーーー旅行?」
「あっ、うん・・・。春井くんも?」
「ーーー高校の友達と卒業旅行。ってこっち移動しようか。」
ちょうどチェックアウトの時間帯もあり、
お土産屋さんも混雑していたので私たちはトイレや自動販売機のある通路に移動した。
向かい合って話す春井くんはあの一件があって以来。
ーーー大人っぽくなったな、と思った。
「ずっと会いたいと思ってたんだ。」
「えっ?」
話すことなくて俯く私に驚く一言が振る。
ーーー会いたいわけないでしょ、あんな酷い仕打ちをしたんだから。
「ーーー大人っぽくなったな。」
春井くんは私の髪に触れたーーー。
今日はおろしていたからーーー・・・。
視線に困る私ーーー。

あの時もそうだったね、仲良くなった時も私をこうして見た。
その瞳に私は騙されたんだよね。
ーーー今もその瞳から目を離せられない。
「ルナ、行こうか。」
星ちゃんの遮る声でハッとしたわたしーーー。
「あっ、うんーーー・・・」
彼の方に歩き出そうと一歩踏み出した時に、
春井くんに腕を掴まれた。
「えっ?」
「ーーーまた会いたいんだ、だから連絡する。」
そして私を星ちゃんの方に押した。

「ーーー知り合い?」
「あっ、うん・・・。中学の同級生。」
「ふぅん・・・」
それ以上、星ちゃんは聞いてこなかった。

本来の予定ではちょっと軽くどこかに寄って東京に戻る予定だったけど、
私が上の空だったり軽い頭痛がすることもあって直帰することに決めたーーー。

「・・・な、るな?」
「あっ、ごめん。・・・なんか言った?」
行きはあんなに話していた星ちゃんとの会話もほぼ上の空ーーー。
帰宅してからもずっと春井くんのことが頭から離れない。
ーーー連絡するって言ってた、本当に来たらどうしよう。
ちゃんと断れる自信がないーーー・・・
「ーーーアイツのこと考えてる?」



「えっ?」
ソファに座りながらテレビを見てる私たち、
星ちゃんは私が考えてることを察しててた。
「あいつに会ってからずーと上の空。・・・どういう関係だった?差し支えなければ教えて欲しいかも。」
良くないと思ったーーー、
星ちゃんに気にさせちゃダメだと思った。
私の終わった恋だから・・・。
「ーーー私の初恋の人。そして初体験の人ーーー。」
超簡単に説明した。
「初恋は苦い思い出が多いよなーーー・・・」
きっと星ちゃんもそうなんだろうね。
「ーーーそうかもしれないね。でも私の場合は私の気持ちを遊ばれていただけで、体だけ重ねたらあっさり他の人と付き合っちゃったよ(笑)だから・・・今更会いたかったと言われても何で?って考えてしまって・・・」
ーーー私は素直な気持ちを口にした。
「ーーー会うなよ。」
「ーーーうん。」
ヤキモチから言ったわけではないのは分かってる。
多分私の身の安全を思って言ってくれたんだとは思う。
でも、正直に嬉しかった。
「何か連絡来たら必ず言えよーー・・・約束。」
「ーーー分かった。」
私は嬉しくて隣にいた星ちゃんに腕を絡ませた。
「ーーー今日はどこも寄らずにごめんね、気を遣わせちゃってごめん・・・」
きっと私がもっとしっかりしていたら今日も楽しんでいたんだと思う。
「俺はこうしてる方が好きだから。ーーーそれに体調も悪かっただろ?」
「えっ・・・」
気づいていたんだね、でも何も言わないで合わせてくれるのはやっぱり大人だなって思った。
「少しは良くなったか?」
「ーーーうん、ありがとう。」
私は頭ごと彼の腕に擦り付けたーーー。
嬉しいんだもん、なんか胸がくすぐったくて。
そんな私の頭を撫でて、
私は星ちゃんを見上げると愛しいものでも見るように、
優しい瞳と微笑みで私を見つめていたーーー。

そんな彼に愛しさが込み上げて、
私は彼の胸にしがみついた。

ーーーそして一足先に星ちゃんは入社式を迎えた。

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