#69.
今の情報社会、
私の個人情報が漏れるのは簡単なことだった。
スポーツニュースには星ちゃんの盛大なプロポーズの様子、
私がお兄ちゃんの妹であることまでもが既に記載されていて情報の速さにびっくりした。
・
「ーーー休んだら?」
「やだよ、悪いことしてるわけじゃないし・・・」
「無理すんなよ。」
ーーー朝から心配ばかりしてる星ちゃんを私は制止して、学校に向かった。
悪いことしてるわけじゃない、
ただ好きで付き合って来たんだし堂々としていれば良いんだ。
自分に言い聞かせながら学校に向かった。
案の定、学校の正門はスポーツ記者でたくさんで私の入る余地なんて全くなかった。
「広瀬ルナさんですね、桐山星也さんの婚約者の・・・お話をお聞かせください!」
私に1人が気がつくと2人3人、もう何人か数えられないくらいの人が寄ってきて逆に引いた。
芸能人もだけどスポーツ選手もこうしてプライベートがなくなって気の毒だな、と思った。
「あっ、あの・・・通してもらえますか?」
あまりの多さに学校に進みたくても進めなくて、
でも負けないと星ちゃんと約束したから私はその人たちを差し置いて意地でも学内に入った。
3年になって1限から古英語を理央と希と一緒に取ってる。
ーーー朝から眠い、小林先生の授業は寝てしまうことが増えた。
「ーーー大丈夫だった?」
「大丈夫、別に悪いことしてるわけじゃないし。」
先に来ていた希の隣に座り、すぐ理央が眠そうにして来た。
「ーーー実際、現場見てどーだった?ドキドキした?」
希は理央にその時の様子を聞いている。
「やばかったよ!それまで星也さんの印象良くも悪くもなかったけど合コンの話を聞いてから嫌悪感あったんだよね!でも・・・昨日の公開プロポーズは本当にやばかった、鳥肌立ったよ!あんなことされたら好きでもなくても受け入れるわ(笑)」
理央は希に大興奮しながら前日のことを一部始終話していた。
「あれ?指輪はして来てないの?」
理央は私が昨日星ちゃんにもらった指輪をしてないことにすぐ気がついた。
「うん、無くすの嫌だから自宅に置いてる。2人で出かけたりするときにつけようと思ってて。」
「へぇぇぇ笑」
「な、何?」
「ルナを好きだった男子たちが昨日の報道により全員失恋だね笑」
「いないから!笑」
ーーーそんな人たちはいない、
私は前々から星ちゃんしか眼中にないし、
極力男子と話さないようにしているからありえない。
「にしても婚約かぁ、素敵だねぇ♡9月に一緒にアメリカに行っちゃうの?」
「ううん、昨日話し合って。先に星ちゃんが行くことにした。私は年明けからかなぁ、それまで日本での準備とか色々やることもあるだろうって。だから、少し遠距離になるんだけど、きっと大丈夫と信じてる。」
「ーーーそうね、世の中の人が昨日のプロポーズの保証人だし、彼は余計なことできないだろうしね笑笑」
「理央ー!不安にさせないでよ(笑)」
「大丈夫!星也さんなら大丈夫だよ、信じてあげなよ(笑)」
力強い言葉をもらって、
私も笑顔で返した。
・
そして今は学校が終わり、自宅に一度戻ってからお兄ちゃんと約束しているレストランにいる。
学校のことなどを含めて一度お兄ちゃんと話した方が良い、と星ちゃんに言われそのままお兄ちゃんと約束を取った。
「ーーー学校大丈夫だったか?」
「マスコミすごかったけど大丈夫!会社もすごかったの?」
「ーーーこっちは慣れてるから星もかわしてた(笑)昨日、びっくりしたんじゃないか?」
「ビックリしたよ!今だからいうけど、ここずっと星ちゃんと喧嘩と仲直りを繰り返してて・・・。アメリカに行くって話を聞いてから9月に別れるってお互いの中で納得していたんだよ。だから昨日のことは本当に想定外で・・・」
「星も色々悩んだんだと思うぞ。ーーーあの遊び人が、まさかルナに落ち着くとは思わなかったけど(笑)」
「お兄ちゃんは、昨日のことは知ってたの?」
「知ってたもこうもないよ、先週頭を下げられたんだよ。お別れ試合の終わった後に・・・って。おれ、兄貴だけど?と思ったけどな(笑)」
星ちゃんが頭を下げたーーー・・・?
意外だったけどお兄ちゃんの話によればチームのみんなに頭を下げて私にプロポーズできる環境に、協力して欲しいと頼んだんだって。
ーーーお兄ちゃんから聞く裏話、知らなかったよ、こんなにも星ちゃんが私のことを考えてくれていたなんて。
お兄ちゃんにそんな話を聞かされて帰宅して私は、
お風呂も入らずに眠ってる星ちゃんに抱きついた。
「ーーーごめんね。たくさん傷つけてごめんね。」
今まで自分が吐いた言葉、
そして勝手に家出をしたり、
すぐに別れを考えてしまったり・・・
どれだけ謝罪しても仕切れないけど、
いつも笑顔で受け入れてくれた。
星ちゃんは本当に寛大で、
でも何よりも私を愛してくれていたんだね。
「ーーー俺はお前が思ってるよりも何倍も大切に思ってるよ。」
起きていたのかな・・・
星ちゃんはニヤッと笑って私の朴に手を添えた。
「ーーー何があっても絶対に離さない。いいか、別れを考える前に俺に相談しろ。喧嘩しても何してでもきちんと話し合って受け止めるから。」
「ーーー分かった。」
私は星ちゃんに唇を重ねた。
わたしからなんてほとんどないから驚いていたけど、
すぐに彼主導に変わり私はまた彼に流された。
ーーー良いんだ、
この行為においては流されることがとても幸せなことだから。
ーーーそれからしばらくして星ちゃんは私より先に渡米した。
コメント