#01.
幸せには色んな形があるけど、
その中の一つの恋愛は人を最高に幸せにもするしどん底にも落とすものだと思う。
人と人が好き合うことが簡単ではない、
奇跡に近いことくらい分かってる。
ーーーだから側にいられるだけで・・・
一緒に笑い合ってもらえてるだけで良かった。
知ってたよ、
私のことを妹にしか見ていないことくらい。
でも優しいあなたは私に付き合ってくれてた。
ーーー私はその優しさを利用したの。
・
「これどう?可愛い?」
「ーーーうーん。少し大人すぎんじゃねぇの?笑 こういうのは・・・ほら、あの女性みたいに背が高くて細い人が似合う・・・っイテ!」
「最低ー!彼女とのデートに他の女性を見るなんて最低ーーー!笑」
「叩くことないだろー、ひどい彼女だ!(笑)」
彼ーーー、星也くんは私をいつも子供扱いする。
確かに彼に比べたら子供だけど、
対等に並んで歩きたいと思うじゃんか。
女心も知らないで、と思った。
「本当になんもいらねーの?」
「うん、気持ちだけもらっておく。」
「こういう時はな、素直に甘えた方が・・・笑」
「すいませんねぇ、星ちゃんの周りにいるガールズみたいになれなくて(笑)」
「また言うか!笑笑」
そうーーー、この人は悪く言えばチャラい。
とにかくモテる、そして周りに女が絶えないのだ。
初めて出会ったのは4歳年上のお兄ちゃんの親友としてだった。
中学高校とお兄ちゃんと同じアメフト部に所属していて、
一見クールなお兄ちゃんと正反対で人懐っこくスキンシップが強く明るい人ーーー。
背も高くて二重で大きな瞳に引き攣られる、
よく言えば人たらしな人だった。
大好きなお兄ちゃんのそばにいる彼が羨ましくて、
私も負けじといつもお兄ちゃんの隣を取り合ってたな。
「ほんっとに可愛くねぇわ!大きくなっても彼氏できねーぞ(笑)」
思春期の頃からずーと星ちゃんに言われ続けてきた。
「お兄ちゃんがいれば彼氏なんていらないもん!」
そう思っていたけど、
やりあってるうちにいつしか好きになってた。
「ーーーオレ、妹としてしか見れないと思うけど。」
告白した時、はっきりと言われた。
基本的に女の子からのお誘いは断らないと自慢してる人がハッキリと断ったからよほど眼中になかったんだと思う。
「・・・1年。」
「1年?」
「私が高校を卒業するまでの残りの1年間、その時間をちょうだい?卒業したらキッパリ別れるから、それまでは私の彼氏になってよ。」
どこから目線だって話だけど、
久しぶりに好きになった人だったから私も引きたくなかった。
「・・・うー-ん、でも俺は女性から結構誘われるよ?」
「行きたければ行けば良い、そこを責めたりもしない。」
そんな一緒にいてもらえるだけで満足だからそこは求めないー--。
「ーーーその間にオレに好きな人ができたら?」
「その時は別れる、約束する。」
渋々だった星ちゃんも私の強引さに負け、わたしたちの交際は始まった。
そして現在、進学に思い悩む高校三年の夏休みが明け、星ちゃんも大学四年の半分が終わろうとしているー--。
ーーー交際終了まであと半年となった。
大きな喧嘩もなくとにかく平和に過ごしてきた。
この間に彼に好きな人は出来なかったのか?
欲求は満たされてるのか?
いろんな心配や不安はついて来たけど考えたらキリがないから私の頭から抹消させた。
・
「ーーー今日、家に行っても良い?」
「良いけど、今日も1人?」
「うん、明後日にお父さんは帰ってくるって。」
私の両親は私がまだ幼い頃に離婚したーーー。
私はお母さんの顔も覚えていない。
それから男手一つでお兄ちゃんと私を育ててくれている父親、
父が不在の時に父がわりになってくれてるお兄ちゃん、
そのお兄ちゃんが大学での寮生活で不在となった今、
代わりとなってる星ちゃん。
ーーー妹にしか見れなくて当然なんだと思う。
「今回はどこに出張?」
「ーーー宮崎だって。色んなところに行けて羨ましいーー!」
私は父が出張の時、孤独を感じた時に星ちゃんに頼ることが多い。
ーーー数日彼の家に入り浸ることもある。
「高校生の娘を家に置いて仕事は心配だろうなぁ。」
「毎日電話来るし、お兄ちゃんとも毎日テレビ電話してるし!」
「ブラコン!笑」
「うっさいなぁ。でも内定先が同じだから嬉しいでしょ?まさか同じ会社にアメフトで行くとは誰も思わないよね(笑)また同じチーム、楽しみだね!」
「ーーーだな。その前に教育実習があるわ、だるー。」
「あっ、うちの高校に来るんだっけ?いつ?」
「来週。お前、馴れ馴れしく話しかけんなよ。一応先生と生徒なんだから付き合ってるなんてバレたらヤバいんだから。」
「分かってますよーだ。」
星ちゃんの大学はスポーツ科学教育学部、適当にアメフト推薦を受けたらそこになったと言ってた。
念のため・・・将来のためにも教員免許が必要になるとのことで取る予定なんだって。
体育の先生にでもなるのかな、これまた生徒にモテて大変そうだなぁと思った。
「明日からの学校頑張れよ。」
「ありがとう、星ちゃんもね。」
ーーー車で自宅まで送ってもらって、
私たちは軽く恋人らしくキスを交わし別れた。
そっかーーー。
星ちゃんが学校に教育実習でやってくる。
ひとつ楽しみが増えた!
その日から私のカウントダウンが始まった。
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