#31.
ここ何となく体調がおかしい。
ーーー精神的に。
理由は分からないけど、
何となくいろんなことに不安を感じている。
・
そんな私は今日、芦ノ湖に一泊旅行に来ている。
星ちゃんと私の2人だけの卒業旅行。
星ちゃんの運転する車で行くのを提案された今回、
でも今回はロマンスカーに乗りたくて付き合ってもらった。
箱根湯本の駅でまず降りて色んな出店を見て回っては試食タイム。
かと言って誰かに買うお土産は今回ないから私はそのまま違うお店に入る。
そして今回の目的地であった芦ノ湖までは少し遠いけど1時間かけてバスで向かった。
「どした?」
「ううんーーー・・・」
やっぱり私は星ちゃんに触れていないと不安で、
バスの中でも珍しく彼の手を握って彼を驚かせた。
芦ノ湖に着いてお昼を食べて、
遊覧船に乗るーーー。
目的地は箱根園、ここにある小さな水族館に行ってみたかったから。
「あーー、風が気持ち良いね!見て、カモメがいる!」
「あっぶねぇなぁ。お前が飛ばされそうになるなよ(笑)」
デッキで外の景色を眺めて、
ちょうどやってきたカモメが多くて驚いた拍子にバランスを崩して星ちゃんに支えてもらった。
「ーーーゴメンね。」
デッキに腕を置いて空を眺める私ーー。
そういえば前回この船に乗せてもらった時は進路で悩んでる時だったな、と思い出した。
あの時は本当にこの先どうしたら良いのかわからなかったけど、
今こうして未来が少し明るく考えられるのは凄いなぁと思う。
「ーーー星ちゃんは人を元気にする力があるね。」
「どした、急に?」
「前回船に乗った時、私は進路に悩んでた。でも今は進路が決まって入学式を控えてる。前を向けたのはあの時星ちゃんが連れてきてくれたから、と思ってる、ありがとう。」
ーーー私は繋がれた手に力を込めて、
彼の方を向き微笑を送った。
「あぁぁぁーーー!ここが船じゃなきゃ・・・」
と頭を抱えていた星ちゃんを見て笑いが溢れた。
箱根園に到着して、
私たちはしばらく湖を眺めた。
「ーーー星ちゃんが働き出したらこうやって一緒に旅行に来ることも減っちゃうね。」
「まぁ週末使えば・・・っておれ、試合がほとんどか笑」
「またファンが増えちゃうなぁ・・・ーーー」
いつのまにか心の声が漏れてたーーー。
その時、私は星ちゃんに自分のほっぺをムニュっとされた。
「この口か!?またまた変なことを言ってるのはこの口か(笑)ーーーいいか、俺が特別な感情を持ってるのはルナだけだから、絶対忘れるなよ!」
「ーーー・・・うん。」
すごく嬉しかった、
ここ最近の不安定な気持ちが少し和らいだ、
そんな気がした。
ーーー私は彼に涙が見えないように空を眺めた。
箱根園にある水族館は見た目はとても小さかったけど、
奥深くてまた深海系の生き物たちが多くてとても感動した。
年柄にもなくちゃっかり入口で記念撮影までお願いして購入までしちゃった。
そして水族館だけではなくて、
ヤギやヒツジなどに餌をあげられる動物のふれあいも最後の最後にあって驚いた。
小さい子供がたくさんやっていたのを今回は見るだけにしておいた。
・
そして今回予約した旅館に到着したのは4時過ぎ、
6時のご飯には余裕を持って到着できた。
「すごーい!部屋風呂がついてる!」
「ーーーそっ。なんか付けてもらえた(笑)」
今回予約を取ってくれたのは星ちゃん、
旅館とは聞いていたけどこんな立派な旅館だとは想像以上だった。
「せっかくだし先にお風呂入ろうかな?」
「一緒に入るか?(笑)」
その言葉に思わず赤面してしまった私は星ちゃんを軽く睨み、
分かっていたように彼はお腹を抱えて笑っていた。
非日常だけどこうして好きな人と笑い合うのが好きだ。
星ちゃんの隣で笑っている自分が好きだ、
そう思った。
部屋風呂も無事に別々に入り、お互いに浴衣に着替えた。
星ちゃんの浴衣姿は潤しく美しい。
身長も高く目も大きく切れ長で、
髪の毛もうっすら茶髪でサラッとした髪の毛。
そして鍛えられた肉体美ーーー。
ーーーなんというかモデルさんみたいだと思った。
本当に素敵な外見を持つこの人が私の彼で良いのだろうか、と思う。
こんな素朴な私が・・・。
身長も低く天然パーマのロングヘア、
一つの取り柄としては目が大きいことくらいしかない。
そんな私が星ちゃんの彼女で良いのだろうか。
不安になっても仕方ないと頭を切り替えたーーー。
「うぁわ、美味しそう!」
「白米はおかわり自由ですのでいつでもお呼びくださいませ。」
6時になると中居さんが夜ご飯を運び出してくれ、
私たちは目の前に並び終わるまで待った。
用意されたシャンパンを手に持ち乾杯、
私は飲んだふりをして星ちゃんに渡した。
「ーーーお腹いっぱい!もう入んない・・・」
「マジ!?まだまだ食えるわ(笑)」
私は小柄なこともあってあまり胃が大きい方ではない。
だから友達といても家族と一緒に食を共にしても必ず残す。
ーーー星ちゃんは私が残した夜ご飯の全てを食べてくれた。
「ーーもう食えねぇ笑。このまま寝れる・・・」
夜ご飯も終わりお布団も敷きに来てくれた中居さん。
星ちゃんは布団が敷き終わったと同時に横になった。
確かにーーー、普段はへこんでる星ちゃんのお腹、少し出てる気がするなぁ。
「食べさせすぎちゃったかな?ーーーお腹出ちゃったね(笑)」
「ーーーおいっ!笑笑」
「だって(笑)」
私が視線を星ちゃんのお腹に視線をやると、
彼は私の首に手を回し脇をくすぐってきた。
布団の上でじゃれあう私たちー--。
「ーーー責任取れよ(笑)こうしてぶくぶく太る俺の責任取れよ(笑)」
「ワハハ!分かった、分かったからギブ!」
ーーー私が星ちゃんの胸元にバンバン軽く叩いたから彼は止めてくれた。
そして私たちはお互いを見つめ合ったー--。
何もしない、ただ相手の行動を待っているかのようにお互いを見ていた。
負けたのは私が先だった。
・・・旅行の雰囲気なのか私は欲情した。
自分の真上で私を見つめる星ちゃん、
愛しい彼に両手を寄せて顔を引き寄せてキスをした。
やっぱり幸せだーーー。
この人とこうして一緒に過ごせること、
楽しく笑い合えていることが本当に幸せだと思った。
コメント