【 わたしの好きなひと 】#19. 離婚の本当の理由*

わたしの好きなひと。

#19.

始業式ほどつまらないものはなかった。
体育館で聞く校長の話も、
慣れ親しんでる先生の話も、
全てがつまらなかった。
唯一楽しかったのは久しぶりの再会を喜んだ友達との会話だ。

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「ーーーこれ、全部星ちゃんが作ったの?買ってきたんじゃなくて!?」
何も買ってこなくて良い、とだけ連絡を貰っていたから本当に何も買わずにお邪魔したらなんと星ちゃんがお昼ご飯を作ってくれていたーーー。
「これくらいは作れますよ(笑)何年一人暮らししてると思ってるんすか(笑)まぁ人にはあまりお披露目はしませんが(笑)」
「すごーい!星ちゃんすごい!しかもめちゃ美味しいし!」
私に作ってくれた星ちゃんの料理はパエリアだった。
ソースから全て手作りだと言う、本当に美味しい。
「ーーーちょっとは元気出たか?」
「昨日は夜中にごめんね。本当に人騒がせな性格だと思っています・・・」
「お父さんと連絡は取れたのか?」
「ーーー昨日の夜にメールはしてて、朝に来ていたよ。今日は帰ってくるって。」
「ならルナもお父さん帰る前に戻らないとな。」
それ以前に星ちゃんがバイトだしねーーー。
「バイトはいつまで続けるの?」
「今月で終わり。来月に卒業旅行に行くからさ、そのお金を貯めてるんだよ(笑)」
「ーーー沖縄だっけ?いいよねー!」
「ルナも福岡に行くんだろ?福岡の女は美人だぞ笑」
「ーーーそんなこと聞いてないし(笑)」
私も高校の思い出として2月に卒業旅行を計画した。
晴菜と二人で行く旅行、すごく楽しみ。
「一応言っておく、卒業旅行には女もいる。ーーーでもみんな彼氏持ちだから不安になることは何もないから。」
「ーーーうん、そうだね。」
すごいなぁって思う。
私はまだ高校生だから・・・男との子の友達と旅行なんて考えたこともない。
男女関係なく仲良くできて旅行も一緒に行ける性格をもつ星ちゃんは本当にすごいと思った。

4時過ぎに星ちゃんのバイト先の近くまで向かって、
私はまた戻るようにして自宅に戻った。
「おかえり。」
「えっ、もう帰ってたんだね。早かったんだね。」
「ーーー昨日は連絡出来なくてすまなかった。」
「お母さんのところに泊まったの?」
「ーーーそうだよ。」
大人なのに、とお父さんは言いたげな表情だった。
小さい頃の記憶はあまりないから分からないけど、
私の記憶がある5歳以降、お父さんに女の気配を感じたことがない。
ここ最近は出張が多いなぁとかコソコソ電話してるなぁと思ってて女の気配かなぁと思ってはいたけどきっとその相手ってお母さんなんだと思う。
ーーーお父さんは離婚したかったわけじゃないんだと思う。
本当はずっとお母さんの事を想っていたのではないかと思った。
「どうして離婚したの?お母さんは育児に自信がなくてって言ってたけど、本当はどうなの?」
「ーーーそれは本当だよ。ルナが生まれてから父さんも出張を断れなかったのも悪いんだけど母さんに甘えて太陽とルナを任せっきりにしてた。だから母さんの心の暗闇に気づいてやることができなかったんだよな。ある日、家に帰ったら真っ暗で、太陽とルナだけ残された状態で母さんからの離婚届と置き手紙があったんだ。」
「えっ、本当に私たち置いてかれたんだ・・・」
衝撃だった、
本当はお母さんの不倫とか真っ当ではないけど納得できる理由があると思っていたけどーーー。
本当に育児放棄だったなんて。
「確かにお前たちからしたら最低かもしれないけど父さんもあの時は本当に忙しくて悪かったんだよ。ーーーだから離婚しても母さんにずっと負い目を感じてて、頻繁に連絡は取ってたんだ。」
「急にどうしてヨリを戻すってなったの?」
「ーーー3年前、久しぶりに会ったときに母さんと付き合っていた頃を思い出してな。良い年した親父がと思うだろうけど、後悔したくないって思ったんだよ。だから・・・父さんからヨリを戻してほしいと伝えたんだ。」
ーーーそっか、やっぱりお父さんはずっとお母さんを想っていたってことなんだね。
それなら応援してあげたいと思う。
私が反対する理由も反対する隙もないと思うから。
「ーーーあのさ、お父さんがお母さんのところに引っ越すのはダメなのかな?」
私は昨日思ってたことを口にしてみた。
「えっ?」
「私も大学に入るし一人暮らしも出来るし、大学費用は負担してもらう形になるけどそれ以外は自分で何とかするし・・・そしたらわざわざこの家を残しておかなくても良いんじゃないかなって思って。」
「この家はもう広すぎるんだよな・・・母さんに相談してみるよ。」
ーーーどうなるかは分からないけど、お父さんからの回答を待とうと思った。

お父さんとのことを誰よりも星ちゃんに話したい。
でも夜中12時までのバイトだから、
今電話したところで出るわけがないのだ。
ーーー私は携帯をベット脇に置いた。
さっき会ったばかりなのにもう会いたいなぁと思ってる自分がいる。
そんな自分を封印するかのように窓から夜空を見上げながら大きく深呼吸をした。

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