【 わたしの好きなひと 】#40. 幸せの時間*

わたしの好きなひと。

#40.

私は無事に手術を終えて退院した。
入院して良かった、そう思えることが一つだけある。
星ちゃんが・・・
本当に心から私を好きでいてくれることがわかった。
ーーー初めて彼の涙を見た時、
私は確認した。
あんなに美しく尊い涙は見たことはないーーー・・・。

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私が退院して1ヶ月、
学校にもバイトにも復帰した。
それまでは危険がないように、という約束で1人でリハビリに行ったり散歩したり日常を取り戻せるように努力した。

「退院おめでとう!」
そして今日は私の退院祝いをバイトのみんながしてくれている。
「ありがとうございます、ご心配おかけして・・・」
まりえさんから花束をもらい、参加してくれた数名のスタッフから大きな拍手をしてもらえた。
「これからまた頑張って働いてね!」
「どうせ忘れてんだろ?また1から教えてやるよ笑」
オレ様佐久間さんも健全だった。
しばらくは遅れた学業を挽回しないとダメだからバイトは少なめだけど、
またみんなと一緒に働けることがとても嬉しかった。

バイト仲間のみんなとの時間もあっという間に過ぎ、
私は10時過ぎに帰宅したーーー。
「ごめんね、遅くなって・・・ーーー」
玄関もリビングも灯りは付いていてもとても静か。
奥に進んでみると案の定、ソファに星ちゃんが寝ていた。
ーーー眠いのを我慢して待ってくれていたんだと思う。
私は起こさないようにそっと荷物を置いてシャワー浴びて寝るだけの体勢に入った。
ーーー星ちゃんの隣に無理やり押し入って、くっついた。
このままソファで寝ることも考えたけど、
絶対に痛くなるーーー・・・。
「ーーー星ちゃん、起きて・・・」
何度も何度もそう呼んだ、けど彼は相当疲れているようで無反応だ。
ーーー生きてるよね?
心臓の音を耳で確認して一安心する。
少し考えーー、私はあることを実践した。

滅多に見られないこんなに爆睡している彼の顔。
この整った美しい顔ーーー・・・。
何人もの女性を泣かせては虜にしてきたこの顔に悪戯してやろうと思った。
今は・・・
少なくとも今はそれは私にしか出来ない特権だから。
「星ちゃーーん・・・」
何度呼びかけても反応なし。
ーーーよし。
私は彼の顔をちょんちょんしたり、胸元をクンクンしたり色々試したーーー。
でも反応なくて、今度は彼の顔を豚顔にしてみたりアヒル口にしてみたりとにかく思い当たること色々やって一つずつ写メした。
ーーーきっとこの先滅多にない光景だから。
もう面白くて面白くてパシャリ撮りまくり、
1人で楽しんでいたらーーー。
「ーーー随分と楽しそうですね(笑)」
とドスのきいた声がソファの上から落ちてきた。
どれどれ見せてごらん、と携帯も取られ。
「お前なぁ・・・このオレの顔に・・(笑)」
「起こしても起きない星ちゃんも悪いんだよ!笑」
「オレのせいにすんなよ(笑)ーーー絶対に太陽を含めて人に見せんなよ。」
「ーーー消さなくて良いの?!」
「何で?ルナが撮影したのに消せなんて言わねーよ。」
「ーーー大好き!」
私はぎゅっと彼に抱きついた。

そして彼は私に覆いかぶさるようにソファに押し倒した。
「あと2週間・・・あー、くそ・・・」
ちゅ、ちゅっと何度も軽いキスを交わしながら真面目な顔をして言う。
退院してから何も制限はされていないけど、
まだ傷口が痛むこともあるから激しい運動は1ヶ月半は控えるように言われた。
ーーー星ちゃんは体を重ね合うことが激しい運動に入ると思ってて、退院した日に断言したの。
・・・1ヶ月半はきっちり守る、と。
辺なところ真面目なんだなぁって思った。
でもそんな星ちゃん、私は好きだなって思った。
「いいよ、軽くなら・・・」
私の発言に星ちゃんは目を見開いた。
「はぁーーー。」
私に覆いかぶさり大きなため息をついた。
「ルナっておとなしそうに見えるけど大胆だよな。」
「そう?」
「芦ノ湖旅行行った時もすごい思ったし、今も・・・。今抱いて内出血でもされたらそれこそ自分を責めることになるから・・・オレは待つ!」
自制を保つためか星ちゃんは私から離れて、
キッチンに水を飲みに立った。
私は良いのに、って正直思った。
ううん、星ちゃんになら何されても良いって思ってる。
「ーーー今までの男もこんなルナにハマっていたんだなと思うとすげームカつくし嫉妬してる。」
星ちゃんが、嫉妬?
ありえないでしょ。
「ーーーないよ、私付き合ったことはないし。」
「そうかもしれないけど、お前のことを好きだった奴はたくさんいたと思うわ。ーーーそんなルナの姿、もう誰にも見せたくねぇと独占欲湧くわ。すごいわ、ルナ沼は。」
褒められてるのかけなされてるのかよくわからないけど、
嫉妬してくれた事実を知れたことが嬉しかった。

「ーーー明日、練習見に行っても良い?」
「明日は木曜だなーーー。公開練習の日じゃないから・・・」
あっ、決まってるんだ、って思った。
この前は偶然に行ったけど、さらに偶然で公開練習だったんだーーー・・・。
「なら良いや、自宅に帰ろうかな。」
「ーーーおれ、ルナの作る蜂蜜レモン食べたい。太陽がめちゃうまいって昔褒めていたんだよなぁ。沢山作ってこいよ、それ口実に入れてもらうから。」
「ーーーありがとう!」
私はベットに横になる星ちゃんに抱きついた。
「だからぁ、お前は・・・本当こっちの気も知らねえよな(笑)」
そう言っても優しい星ちゃんーーー、
結局私のことを抱きしめてお互いに眠りについた。

それはそれはーーー・・・
とても幸せな夜だった。

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