#156. 最終話
僕たちに喜びの声援が贈られている。
盛大な拍手が送られている。
僕はーーー、
なんだか手が震えて今にも泣きそうな気分になった。
聖ちゃんに恋したあの夏ーーー、
誰にも応援してもらえなくても良いと思ってた。
ただ聖ちゃんさえそばにいてくれれば良いって思ってた。
ーーーでもやっぱり違う。
誰かに喜んでもらえてこうして声援を送られるのでは違うんだ。
あの時、別れを選んだ意味はあったのだと今確信している。
・
「最後に花束贈呈と言いたいところなのですが、ここでもう一つ聖さんからお手紙を拝借したいと思います。聖さん、よろしくお願いします。」
えっ?と僕が驚いた顔をしていると聖ちゃんはニコッと微笑んでさらに手紙を読み始めた。

僕は予想もしていなかった聖ちゃんからの手紙を聞いて涙が止まらなくて・・・
ティッシュでは足らないくらいの溢れるばかりの涙を堪えるので精一杯で、
会場にいた場がその不細工な姿で笑いが起きていることさえも気がついていなかった。
だからーーー、
どうやって両親への花束贈呈を行い最後に何を挨拶したのかさえ覚えていない。
唯一覚えているのは山江島からはるばるやって来て来れた父さんも涙を流していたことだった。
立派な大人になったな。
そう言われているような気がして、せっかく落ち着き始めた僕の涙がまた溢れ出した。
ーーー父さんの言葉のおかげで僕は今日まで頑張って来れたよ。父さんみたいな立派な父親になりたい。
過去はどうあれ、僕は強くそう思った。
・
それから1年の月日が過ぎたーーー。
僕たちの生活は何も変わらない。
僕の聖ちゃんに対する敬語も、聖ちゃんのちょっとお茶目なところも、相変わらず美人妻なことも、僕たちがとても愛し合っていることも、子供たちを大切に思ってることも一年たっても何も変わらない。
愛する子供たちも無事に2歳を迎え、だいぶ言葉もしっかりしては毎日驚かされている。




結婚式から1周年を迎え、
家族みんなでベランダから見える空を眺めながら思い出話をしていた。




こうしてゆっくり過ごす家族の時間、
愛しい人と愛する子供達がそばにいる。
それだけのことなのに安心感と幸福感。
君が笑ってくれるだけで僕の心に光をもたらす。

聖ちゃんは大きくなった自分のお腹に手を当てた。

そう、聖ちゃんのお腹の中には今もう一人、僕たちの子供が育っている。
ーーー澪と潤に弟が出来る。
二人とも大きな赤ちゃん返りは今のところ目立たなく、
2歳ながらに理解して楽しみにしてくれているのだと思う。
僕もそっと聖ちゃんのお腹に手を当てた。
澪と潤も続いて手を当てたーーー。

お腹に向かって僕は声をかけた。
ーーーうん、僕はこの先何があってもこの大切な人たちを守っていくんだ。
それが今の僕の生きる術。
The End.
Thanks for reading*。
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