次の日、
僕と聖ちゃんは緊張を露わにして病院に向かった。
僕の場合は期待の方が大きかったけど、
聖ちゃんは不安の方が大きかったと思う。
繋がれた手はいつもよりはるかに冷たく汗が滲んでいた。
*

病院の先生からこの言葉をかけられた時、
聖ちゃんは泣き崩れた。
どれほどの不安を抱えていたんだろう、
きっと僕には理解したくても出来ない範囲で、
どれほど一人で苦しかったんだろうと思い胸が痛んだ。

僕はとっさに先生に投げかけた。

前回はこの胎嚢の大きさも小さめで、
先生からおめでとうも言われることがなかったと聖ちゃんは教えてくれた。
だからこそ [ おめでとう ] というこの一言がどれだけ嬉しかったか、
流石の僕にでもわかった。
*

2人で入ったカフェで聖ちゃんは僕に言った。


聖ちゃんは目の前にあるコーヒーを飲みながら笑った。


聖ちゃんは僕を晶くんと呼び始めて1ヶ月でようやく恥ずかしがることもなく問題なく呼べるようになった。
自分から晶くんと呼びたいと言っていたのに、
この1ヶ月何度黒岩くんと呼びれたことか・・・
そう言っても僕も人のことを言ってられない。
慣れ親しんだ聖ちゃんという呼び方を変えるのに抵抗があること、
そして抜けない彼女に対する敬語を夫婦になるそろそろ改めた方が良いと考え始めているんだから。
想像するだけで恥ずかしくて行動に移せない俺は、
まだまだチキンなんだなと思う。
*
聖ちゃんと分かれて会社に到着しても、
僕は誰かに言いたくて仕方ない衝動に駆られた。
でも心拍を確認するまで妊娠成立とは言わないと主治医にも言われたことから母さんにも黙っておこうと二人で決めたばかり、
だから僕は仕事で使ってる手帳に今日というこの素敵な日の出来事を書き込んだ。
ーーー何事もなく生まれてくるように、
そう願いを込めながら。
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