僕は必死でーーー、
信号も無視したくなるくらい急いで帰った。
*
でも僕が自宅に戻った時にはちょうどお風呂に入っていた。
仕方なしに僕は聖ちゃんがお風呂から出て来るまでテレビを見ていることにした。

聖
あれ?帰っていたの?早かったね。
聖ちゃんは僕の存在に気がつくと冷蔵庫から飲み物を2人分取り出して僕の横に座った。
お風呂上がりの聖ちゃんはいつも無防備で焦る。
こんな姿、誰にも見せたくないーー。
それにもしかしたら妊娠しているかもしれない聖ちゃんを見て愛しくて想いが込み上げて、
僕は彼女を抱きしめていた。

昌
ーー聖ちゃん、正直に答えてくださいね?

聖
えっ?何?
彼女は僕から顔を離し、微笑を浮かべて話しかけてきたけど僕はもう一度強く彼女を抱きしめた。

昌
嘘つかないでくださいね?分かりましたか?

聖
分かりました、何ですか?

昌
ーー妊娠していますか?
僕の問いかけに驚きを隠せなかった聖ちゃんは顔を上げた。
僕も力を緩めて彼女と向き合った。

聖
何でそう思うの?

昌
岩崎達が言ってたんです。お酒は控えてるし時々気持ち悪そうにしていたって。僕もお酒を飲んでなかったのは気になってましたけど体調悪かったんですか?

聖
ーーー分からないの。

昌
えっ?どういう・・

聖
1週間遅れてるのは本当で、時々気持ち悪くなるのもあるけど・・・前回と同じようなことになったら嫌でお酒は控えていて。期待させたくなくて言えなくて・・・
僕はもう一度彼女を抱きしめた。

昌
月曜の朝、一緒に行きましょう。

聖
えっ?

昌
午前休取るので、一緒に病院に行きましょう!僕がついてるから大丈夫です!
僕は早急に会社にメールを出し、
月曜は午後出勤にしてもらった。
もしーーー、
もし聖ちゃんが妊娠していたとしたら。
僕と聖ちゃんの思いが通じあった山江島での山小屋で宿った可能性が大きい。
もちろんその後も何度も抱いたけど、
可能性として一番大きいのは山小屋なんだ。
だからーーー、
僕はまだ何も分からないのに大丈夫なようにしか考えられなかった。
いや、そう確信を持っていた。
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