【 中学聖日記_妄想 】#19. 思い出の花火大会で・・・*

中学聖日記_妄想

聖ちゃんとの暮らしは思っていたよりも楽しく、
時に言い争うというより僕が勝手に怒ったりすることもあった。
それでもやっぱり大好きな人からの「おかえり」という言葉は最強で、
その日どんなに辛いことがあったり疲れていても彼女の言葉だけで元気になるのが不思議だ。

昌

そうだ!九重から連絡が来て小星平花火大会が週末にあるそうです、一緒に行きませんか?

聖

えっ?私が行ったら黒岩くんがまた・・・

聖ちゃんはあまり乗り気ではなかったーーー。
聖ちゃんの気持ちも分かる、
卒業生に会うかもしれないこと、そして見回り隊で自身も駆り出されていたように当時の先生が残っているかもしれないという不安。
でも僕にはどうしても聖ちゃんと一緒に行きたい理由がある。

昌

僕は誰に見られても良いんです!それにもう24ですよ?誰にも止める権利はないですよね?僕はどうしても聖ちゃんと一緒に行きたいんです。

聖

ーーーそうだよね、一緒に行こうか。私もあの夏を最後に見てないから・・・

彼女が言ってるのはきっと9年前のことだろう。
少し遠い目をした聖ちゃんはあの時のことを思い出していたかのようにハッとして僕に笑顔を浮かべて「楽しみにしているね」とだけ言って僕の仕事の話に話を切り替えた。

*

僕は入社3年目に入り、
突然に仕事の量が増え残業の日々だ。
去年には入って来なかった新入社員も来て、
とにかく毎日を過ごすので精一杯な状態だ。
聖ちゃんはそのことで僕の体をとても心配し、
自分の分と一緒にお弁当を作ってくれるようにもなった。
聖ちゃん自身も先月から予備校で国語の先生として働いている。
正直ーーー、僕からしたら不安要素しかない。
だって聖ちゃんは日に日に美しくなるし、
相手にするのは高校生だから。
ーーーそれでも僕は言わない。
週末に堪能する彼女自身でどれだけ自分を必要としてくれているかを感じられるから。
それは僕だけの、
これから先もずーと僕だけの特権だから。
花火大会の日まで僕はとにかく忙しかった。
聖ちゃんを喜ばせたくて、
過去の嫌な思い出から全てを取り去りたくてーーー。
全てはそのためだけに1週間仕事をこなした。

*

昌

ーーーじゃ、6時にあの海で待ってますね。

この日、僕は九重たちといつものカフェでお昼を食べる約束をしていたために先に家を出た。

聖

ーーうん、後でね。

聖ちゃんは少し不安そうな顔を浮かべながらも、
微笑みながら僕を見送ってくれた。
大丈夫かーーー、という不安を抱えながら僕は向かった。
オレだって本当は聖ちゃんと一緒に向かいたかった、
だけど僕にはやるべきことがあったからーーー。
申し訳なさを吹き払って自分のやるべきこと行動に集中した。

*

待ち合わせの海で待つこと10分ーーー、
聖ちゃんが来る気配がなくて僕に不安が募る。
「黒岩くん!遅くなってゴメンね!」
それと同時間に背後から聞こえた方に目をやると、
そこには愛しの聖ちゃんの姿があったーーー。
髪の毛をお団子一つにアップして、
いつもと違うお化粧をしてるように感じる。
なによりも初めて見る聖ちゃんの浴衣姿に僕はただ見つめていることしか出来なかった。
「ーーー黒岩くん?おかしいかな?」
「いえ、とても似合ってると思います!」
「良かったーーー。せっかく黒岩くんと行くなら着てみたかったんだ」
照れ臭そうにいう聖ちゃんを見て僕は自分が恥ずかしかった。
聖ちゃんはこんなに美しいのに、
僕はーーー。
僕はーーー。
お洒落をしたわけでも甚平を着たわけでもない、
動きやすいようにと普通の格好だったから。
「どこで見る?少し屋台回る?」
浴衣を着てテンションが上がったみたいで、
ボグが家を出る前に抱いた不安は彼女から一つも見えなかった。

屋台を回って、
焼きそばと焼き鳥、
それぞれが欲しいと思うものを購入して海に戻って来た。
花火大会の時間が近づけば近づくほどに人だかりが増え、
しばらくしてから花火が上がり始めた。
「ーーーあの時は見回りできちんと見れなかったけど、すごい綺麗だね」
そう感動する聖ちゃんに僕はうなずいた。
小星平の花火なんて都会と比べてしまえば小さいものですぐに終わってしまう、
僕は気が気ではなかったーーー。
「ーーー黒岩くん、何か予定でもあるの?」
「えっ?」
「さっきから時計ばかり見てるから・・もし予定があるなら行って?私なら大丈夫だから」
僕はこれから起こることに対して自分が思ってる以上に緊張してるようで、
時計ばかりを確認してしまっていたようだーーー。
「いえーーー。」
いつもハッキリ言葉を発する自分が、
こんな大切な時になるとオドオドしてしまうことを自分自身も初めて知った。
「帰ろうかーーー。」
花火が終わり人が散り始めたところで、
聖ちゃんもハッキリしないオレに苛立ったのか、
その場を去ろうとしたーーー。
「待って!すぐだから!」
僕は時計を見て去ろうとする聖ちゃんの腕を掴んだ。

* 🎆🎆バーン!🎆🎆 *
その時に勢いよく打たれた花火の音に、
周辺にいた人が釘付けになる。
もちろん聖ちゃんもーーー。

それはーーー、
予定にはなかったはずの水上花火。
「えっーーー?」
一つ一つが文字となり火がつけられていく。
最後に火が灯されて出てきた言葉は僕の一世一代の聖ちゃんへの愛の印。

“ 聖ちゃん、僕と結婚してくれませんか?”

コメント

タイトルとURLをコピーしました