住職さんの話はなかなか興味深く、
聖ちゃんも真剣に聞き入っていた。
住職さんの話では東京からわざわざ来て結婚式をすると言う人は少なくて、
地元の人が多いから参列者とかホテル状況とかまでは流石に分からないと言うことだった。
*
昌
ーーー結婚式は2人でして東京でみんなを呼んで披露宴にしませんか?
山江天満宮を後にしてお昼休憩を取っていた僕たちは、
小さな定食屋に入った。
聖
黒岩くんはそれで良いの?みんなを呼んで式をしたかったんじゃない?
聖ちゃんは箸を持った手を止めて僕を見た。
昌
僕は山江天満宮で聖ちゃんと結婚式をしたかっただけで、それ以外のこだわりは特にないです。
聖
そっか、ならそうしようか。
聖ちゃんは僕に微笑んで、
目の前にある生姜焼きに箸を進めた。
僕たちが定食屋を後にしたのは午後1時、
まだ父さんの家に帰るには時間が早すぎる。
聖
黒岩くん、行きたいところある?また商店街でも行く?
2人こうして手を繋いでいるだけでも良いかもしれない。
でも僕は・・・
昌
ーーー僕は聖ちゃんと2人きりになりたい。
昨日からずーと我慢していた、とにかく2人になりたい。
誰にも邪魔されることなく、
人の気配を感じることなく抱きしめるだけでも良いからただ、彼女に触れたい。
ーーーたった1日でも触れられないと言う現実が今の僕には辛い。
聖
2人きり?どこかあるかな・・・
真剣に悩みだす聖ちゃんが微笑ましい。
大きな瞳をクリクリさせて、アヒル口になって考える姿が愛しい。
ーーーどんなに聖ちゃんが考えても僕の行きたいところは1つだけど、彼女にはまだ伝わらないようだった。
昌
あの山小屋に行きませんか?ーーーあそこは僕と聖ちゃんの大切な場所だと思ってます。あそこで・・・あの時出来なかったことをしたい。ーーー聖ちゃんを抱きたいです。
ギュッと掴んでいた彼女の手を強く握りしめ、
イエスという返事の代わりに聖ちゃんも強く握り返してくれた。
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