【 中学聖日記_妄想 】#10. 聖を追う存在*

中学聖日記_妄想

不思議と普段鳴らない携帯は、こういう時に限って何かと音を立てたりするものだ。
九重から中学の同窓会の誘いだったり、
こんな時に限って聖ちゃんだったり、と。
「ーーーはい」
ぼくは無視することも出来なくて電話を取ってしまう。

聖
もし予定なかったら土曜日・・明後日会えるかなって思って電話したんだ。ーーー黒岩くんに見せたいものがあって。

聖ちゃんからの用件は大したことではなくて土曜日に予定があるかの確認だった。

昌
土曜は中学の同窓会で会えないと思います。

ーーー嘘は言ってない。
同窓会は昼間だし聖ちゃんには全然会える時間だとは思うけど、なにも感づかない聖ちゃんに無性に腹が立った。

聖
そっか、なら仕方ないね。同窓会、楽しんでね。
昌
はい。用はそれだけですか?用がないなら、失礼します。

まだ聖ちゃんは何かを話したそうだったけど、ぼくは半強制的に電話を切った。
ーーー電話の向こうで彼女が苦しんでいるとも知らず。
自分のことだけで精一杯だったぼくは、
彼女の気持ちなんて考える余裕も、
電話越しに何かを伝えようとしていたのにも気が付きもしなかった。

*

最近喧嘩するたびに思う。
聖ちゃんと話すとイライラする、こんなに好きなのに優しくなれない。
まだ片思いだった時の方が優しくなれたーーー。
やっと想い合ったと思ったら今度は周囲によって引き離されて・・・
それから自分の気持ちに蓋をして、やっと迎えにいけたのに・・・
これじゃ同じことの繰り返し。
分かってる、
頭では分かってるのに気持ちが付いていかない。

聖
ーーー今、黒岩くんの会社の近くのTully’sにいます。仕事が終わったら連絡ください、会って話そう?

何も手につかない状況で俺の仕事終わりを待っていたのは聖ちゃんからのメールだった。
行かないーー、行かないーー。
そう思っているのに僕の苛立ちはまだ治ってないのに勝手に足が聖ちゃんのいる方向に動き出す。
だけどオレは店内に入ることは出来なかった。
きっと今会ったら僕の浅はかな感情でまた聖ちゃんを傷つけてしまう、
そう思ったから。

昌
ごめんーー、行けない。

ぼくは聖ちゃんを外から眺めながら電話した。

聖
ーーーなら1つだけ教えて、黒岩くんの描く未来に私はいる?
昌
どうしてそんなこと聞くんですか?逆に聖ちゃんの描く未来にぼくはいるんですか?

この前どんな思いで聖ちゃんにプロポーズしたと思ってんだよ。

聖
私は、ーーーそう思ってた。一緒に今後のことを考えたいと思ってた。でも今は黒岩くんが分からない。黒岩くんが怒ってる理由も何を考えてるのか、どうしたら良いのかも、何もわからない。話したいと思っても会ってくれない、私どうしたら良いの?

外から見る聖ちゃんが涙しているのが見え、ぼくは何も答えられなかった。
ただ呆然とその場に立ち動けなかった。
ーーー聖ちゃんが感情的になって物を言ったのが初めてだったから。
「ごめんなさい・・」
その言葉を最後に聖ちゃんは電話を切り、
店を後にした。

ーーーそしてオレは一つの影に気がついた。
聖ちゃんが店を出たと同時に動き出した一つの影に。

コメント

タイトルとURLをコピーしました