【 中学聖日記_妄想 】#11. 黒い影*

中学聖日記_妄想

人間のこういう時の勘って凄く当たるものだと思う。
オレは必死で聖ちゃん、
いや、その影を追いかけたーーー。
だけど金曜日の繁華街は人だかりが凄く、一瞬で聖ちゃんどころかその影をも失った。

不安で不安で仕方なかった、
もし本当に聖ちゃんを付けていて彼女に何かあったら。
ぼくの変なプライドのせいで聖ちゃんに何かあったらと思うと不安でいてもたってもいられず僕は聖ちゃんのアパートに急ぎ足をした。
最寄りの駅から何度電話しても出ないーー、
不安がどんどん強くなる。
だから何度も何度もオレはドンドンと彼女のアパートを叩いた。

聖
黒岩くん?どうしたの?

だけど聖ちゃんはいつもの聖ちゃんで・・・
力の抜けたオレはその場に座り込んだーーー。

昌
何もなくて・・良かった・・
聖
とにかく上がって?お茶入れるね?

お風呂に入っててすぐに出られなかった、と言い訳していた聖ちゃん。
無事なのかを確認するので必死だったオレは今頃になって聖ちゃんからの風呂上がりの濡れた髪と匂いに緊張を覚えた。
そしてお茶を入れてくれた聖ちゃんに経緯を話した。
「教えてくれてありがとう。」
聖ちゃんは知っていたかのように、何か諦めているようにニコッとオレに微笑んだ。
「ーーー知ってたんですか?」
「・・これ、見て」
そう言って聖ちゃんは自分の携帯をぼくに見せた。
そこには無数のメールが届いており吐き気がするほどの内容だった。
「ーーー誰だか分かってるんですか?」
「うん。同系列の先生だと思う。だからね・・仕事を変えようと思ってるんだ。」
「それで昨日あの人に会ったんですか?」
「えっ?何で知ってるの?」
「見かけたんです、楽しそうに話しているところを」
「だからあんなに怒ってたの・・?また先生を辞めることになってしまうから黒岩くんには迷惑かけたくなくて仕事決まってから伝えたかったの。くだらないって言われるかもしれないけど、やっぱり私は黒岩くんにはダメな自分は見せたくないって思ってしまうの」
どんなダメな聖ちゃんでもぼくは見たい、素の聖ちゃんを見せて欲しい。

聖
黒岩くんが好きだから、大切だから。あなたとずーと一緒にいたいから自分に自信を持っていたいの。私にとって先生はどうでも良くて、黒岩くん以上に大切なものはないの・・だからこの気持ちを諦めたくない。
昌
ーーーゴメン聖ちゃん。ぼくは勝手に嫉妬して、許せなくてイライラして・・・プライドが邪魔して会いたいのに連絡取りたいのに自分から取れなくてイライラして。同じことばかり繰り返して。ぼくは15の時から何も変わってない、感情に生きていくことしか出来ない。
聖
わたしは変わらない黒岩くんが好きだから。15の気持ちにまっすぐな黒岩くんも18歳のちょっと落ち着いてる黒岩くんも23歳の甘々の黒岩くんも全部大好きなのよ?
昌
ぼくはもっと聖ちゃんに触れたい、会いたい。ーーーもっと連絡を取りたい。

そしてぼくは聖ちゃんにキスを落とした。

「ねえ、私が嫉妬しなかったとでも思ってる?」
「えっ?ぼくに嫉妬なんかしたことないでしょ?」
「ほら(笑)いつも岩崎さんに嫉妬してたんだよ。」
「岩崎に?オレ好きになったことないよ?(笑)」
何度目かのベットで聖ちゃんは僕に抱きついて言った。
肌と肌が直接触れ合うのは本当に気持ちが良い、
特に聖ちゃんだから。
ぼくの大好きな大切な人だから、
ぼくの初めての人だから。
こんなにも愛しくて切なくなるんだ。
ーーー片思いも辛いけど思いが通じ合うと辛いこともたくさんある。
でもやっぱり想い人がいるってことはとても幸せなことなんだと思う。
そう噛み締めながらぼくは何度も何度も聖ちゃんを抱いた。

根本的な問題は解決してないけど、
ぼくたちの関係は少なくとも修復できた。
今はーー、それだけで良い。
それで満足だ。

 

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