「よろしくね、黒岩くん」
聖ちゃんはたった一言、そう言った。
*
昼前に起き上がった僕たちは、
とにかくのんびりその日を過ごした。
目的もなく河川敷に散歩に出かけたり、
一緒にスーパーで買い出しをしたり。
平凡な1日だったけどその時間が何よりも幸せすぎて、
僕は聖ちゃんが隣にいることに感謝をした。

昌
聖ちゃん、聞いても良いですか?

聖
ん?
夕方の散歩道、僕は思い切って気になっていたことを聞いてみた。

昌
昨日の夜、僕があげたハチマキを握りしめて寝てましたよね。この前も・・あげといてなんですけどどうしてそこまで大切にしてくれるんですか?

聖
えっ?それは、だって・・・
僕たちは近くにあったベンチに座った。
「聖ちゃん、僕は知りたいです」
「ーーー黒岩くんから初めてもらったモノだから!」

昌
捨てようとしたのに?(笑)

聖
それはそうなんだけど・・・
なんて言うのかな。あの頃、中学生相手に恋心を抱いて自分でもバカだと思ってね。だから捨てようとしたはずなのに・・・楽しそうに友達と笑う姿も、一生懸命私の授業を聞いてくれる姿、それに周りの目を気にしないまっすぐな姿ーーー、いつも思い出すのは黒岩くんで。気づいたらゴミ箱からこのハチマキ、引き戻してたの。いつか思い出にできた時にタンスから出そうとずーと眠ってたのにその出番が来ることなく再会してまた出して・・そしたらね、もう眠らせることが出来なくなってて。黒岩くんにとっては単なるハチマキだったかもしれない、だけど私にとってはかけがえのないもので強く一人で生きていくためには必要なものだったんだ。
なんて言うのかな。あの頃、中学生相手に恋心を抱いて自分でもバカだと思ってね。だから捨てようとしたはずなのに・・・楽しそうに友達と笑う姿も、一生懸命私の授業を聞いてくれる姿、それに周りの目を気にしないまっすぐな姿ーーー、いつも思い出すのは黒岩くんで。気づいたらゴミ箱からこのハチマキ、引き戻してたの。いつか思い出にできた時にタンスから出そうとずーと眠ってたのにその出番が来ることなく再会してまた出して・・そしたらね、もう眠らせることが出来なくなってて。黒岩くんにとっては単なるハチマキだったかもしれない、だけど私にとってはかけがえのないもので強く一人で生きていくためには必要なものだったんだ。
深いーーー、
聖ちゃんのハチマキに対する思いがすごく深いことに正直驚いた。
当時は” 好きな人からハチマキをもらうと幸せになる “ という岩崎の言葉を信じて軽い気持ちで聖ちゃんのサイドミラーに掛けたけど、
まさかここまで大切にしてくれるとは思わなかった。

聖
ごめん、重いよね(笑)ーーーまた眠らせるね、もう出すのやめるね、ゴメン・・
僕が言葉を出さないから聖ちゃんは必死で弁解してて。
違う、違うよ、聖ちゃん。
僕はーー、ただただ嬉しいんだ。
その気持ちを言葉に表すのが難しくて、
思いっきり彼女を抱きしめた。

昌
ーーー持ってて。もうボロボロかもしれないけど、聖ちゃんがここまで大切にしてくれていることがすごく嬉しいんだ。だから・・・
「ーーーありがとう、黒岩くん。」
そう言って聖ちゃんは僕に微笑んで、
ニタっと笑ってーーーー。
僕にキスをしたんだ。
公の場所、公園で。
エヘっと照れて直ぐに離していたけど、
ここ数日の大胆な聖ちゃんに僕の心は少し置いてきぼりな気がする。
それと同時に彼女をそうさせているものはなんなのか、
という変な不安に襲われた。
*
平和だった日曜が終わろうとしている風呂上り、
聖ちゃんは僕に問いかけた。
「私のこと好き?」
と。
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