僕はこの花火が1番綺麗に見えるであろう会場に聖ちゃんを連れていきたかったという一心で、
彼女の気持ちを全く考えていなかったことに今やっと冷静になって気がついた。
ただーーー、聖ちゃんの喜ぶ顔が見たかった。
それだけことだったのに。
*
聖
ーーー飲む?
僕たちの沈黙を破ったのは聖ちゃんで混雑を予想して彼女は自宅からペットボトルを持って来ていた。
昌
あっ・・・いただきます。
僕は彼女からそれを受け取って勢いおく口にした。
聖
怒ってる?
昌
怒ってないです、自分が情けないだけです。
聖
ーーーゴメンね、せっかく楽しませようとしてくれていたのに。でも私はさっき晶くんが言ったような過去は過去として割り切ることが出来なくて。女と男の違いなのかな・・・だから、ゴメンね。
聖ちゃんは何度も僕に謝った、
謝るべきは僕の方なのにーーー。
聖
もしーーー、あの時私たちがここで偶然にでも会っていなかったら今の運命は変わっていたのかな?
そんなこと僕に聞かれても分からない。
だけどこれだけは言える、きっとあの時別々の道を選んでも僕はずっと聖ちゃんを想い続けていたと思う。
昌
それは僕も分かりません。あの時あの場所で会わなかったら聖ちゃんはあのひとと結婚していたかもしれない、そう考えるとゾクッとします。
聖
あの日ーーー、立場も忘れて晶くんに感情をぶつけて今思うと大胆な行動だよね(笑)晶くんーーー。
突然聖ちゃんが僕の方を向いて、握りしめてる手に力を込めた。
昌
何ですか?
聖
あの時ーー、諦めないでくれてありがとう。私とーーー、出会ってくれてありがとう。
その言葉と同時に7時になったようで、
花火が打ち上がったーーー。
僕は聖ちゃんの言葉に涙が出そうになり、
花火を見るふりして涙をこらえた。
お礼を言うべきなのは僕の方ーーー。
ーーー僕と出会ってくれてありがとう。
ずっと一緒にいてくれてありがとう。
花火が終わったら、そう伝えようという気持ちを込めて力強く繋がれた手を握った。
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