次の日、僕たちは東山江海水浴場付近の洞窟に行った。
ーーー6年前のあの洞窟だ。
何も変わってないこの洞窟になぜか安心感を覚える。
前回は聖ちゃんが飲み物を買ってきてくれたけど、
今回は僕が買って来たーーー。
いつもの「紅茶タイム」と「コーヒー」だ。
洞窟から海を眺める聖ちゃんの姿がなんだかとても寂しそうで、
また太陽から灯される光がちょうど彼女を照らしており引き込まれそうでーーー。
僕は急ぎ足で彼女の近くに寄った。
*

聖
ーーーこのあと神社に行かない?
僕が隣に来たのを確認した聖ちゃんは僕の手を握り少し不安そうな表情を浮かべて言った。

昌
神社?ーーー山江天満宮のことですか?

聖
うん、黒岩くんそこで結婚式をしたいと言っていたよね?まだ結婚式とかよく分からないけど、ここを選ぶにしても納得してから選びたいからちゃんと話しを聞きたいと思っていたの。ダメかな?
どうしてそんな目で見つめるんだろうか。

昌
ダメな理由なんてないですよ!むしろ嬉しいです、聖ちゃんが前向きに考えてくれていて・・

聖
そりゃ私だって・・そろそろきちんとしないとって思ってるんだから。

昌
ーーー東京に戻ったら都内でも良さそうなところ探してよう。

聖
うん、そうしようか。
ホッと撫で下ろすように安心した聖ちゃんを見て僕も心が落ち着いたーーー。
そして、軽く彼女にキスを落とすと僕は神社へと歩き出した。
*
山江神社は父さんの家から歩くと少し遠い、
フェリー乗り場からの方が近いことが分かった。
来客者のことを考えるとフェリー乗り場から近い方が良いが、
その場合は1日1便しかないフェリーに対してどう対応するのかを考えなきゃならないーーー。

聖
例えばだけど山江天満宮は親族だけ、もしくは私たちだけで式をして・・・都内で披露宴だけやるとかも1つの手だよね。式と披露宴は別に出来ると思うしそこは融通効くと思うんだ。確か安くても300万とかで・・・

昌
それは経験からですか?

聖
えっ?あっ、違うの。その・・・なんて言うのかな・・・
勝太郎さんのことだとは分かってるし、
聖ちゃんも悪気があったわけじゃないのも理解してる。
聖ちゃんが婚約していたことも知ってるから、
この経験があったことも理解してるーーー。
理解してるけどやっぱり悔しい自分もいるのが事実。

昌
嘘です、怒ってはないです。

聖
本当に?

昌
怒ってない、でもふて腐れています。

聖
ーーーゴメンね。
また猫のようにシュンとした聖ちゃん。
昨日自分でも気づいたことだけど、
このシュンとする聖ちゃんの姿が僕は好きなようだ。
とーーても可愛く思えるようだ。

昌
ほら、行きますよ!
僕は聖ちゃんの手を繋いで山江神社の中に入り、
そこにいた住職さんに話を聞きに行った。
コメント