「えぇぇぇ!当時から怪しいとは思っていたけど結婚かぁ、おめでとうねぇ!」
僕たちは以前もお世話になった父さんの釣り仲間の家にも挨拶に出かけたーーー。
山小屋で遭難した時にまともにお礼も言えなくそのままだったことを聖ちゃんは気にしていた様子だったから。
当の本人たちはそれよりも僕たちを祝ってくれ、
突然訪問したのにも盛大にご飯を用意してくれた。
「ここは田舎だからねぇ、めでたいことがあると自分のことのようにみんなでお祝いするのよ」
なんておばさんは言っていたけど、
僕は周りに祝福されて結婚できることがこんなにも嬉しいことだとは思わなかった。
*
晩餐も終わり父さんの家に戻った僕が風呂から戻ると前回と違う光景が見られたーーー。
「俺の布団は?」
「お前は2Fに寝なさい、夫婦になるんだからもう良いんじゃないか。」
僕の布団がなくてーーー、
でもそれはつまり聖ちゃんと一緒に寝ることを意味していてなぜか急に緊張を覚えた。
聖ちゃんが待つ部屋に行くとちょうどドライヤーをしている最中で、
またそれがなぜか色っぽくて・・・
僕はグッと拳を握りしめて抱きしめるのもキスするのも我慢した。

僕が戻ったことに気づいた聖ちゃんは視線をずらしながら焦り口調で話すーーー。
緊張してるのは僕だけじゃない、それになぜかホッとした。

けどやっぱり聖ちゃんの寝間着姿と一緒にロングヘアを乾かす大人の色気を我慢できなかった僕は、
彼女が微笑を浮かべたタイミングで抱きしめた。
山江島に来て初めて彼女を抱きしめたーーー。
たった数時間触れていなかっただけなのに、
彼女を胸に収めるとこんなにも安心する自分に驚きを隠せなかったーーー。

僕の胸に収まってる聖ちゃんはそう言って、
いたずらっ子に彼女の人差し指を僕の唇に触れた。
何度も僕の唇に触れては離す行為を繰り返す聖ちゃんに僕は少し苛立ちを込めて強く言った。

その言葉に驚いたのかピタリとやめた聖ちゃん、

そう言ってシュンとした聖ちゃんは子猫のように縮まって、
無性に可愛かったーーー。
年上の女性に使う言葉じゃないのかもしれないけど、
本当に可愛かったーーー。
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