【 中学聖日記_妄想 】#108. 母の思い*

中学聖日記_妄想
昌
ーーー澪はいつから言葉を?

程なくして澪と潤を母さんに頼んだ僕たちは今、
ホテルの中のロビーのベンチに座っている。

聖
数日前からパパって言うようになったの。ママって先に言って欲しかったのに(笑)潤は晶くんが出張に出かけてすぐに歩き始めて今もヨチヨチだけどゆっくりなら目的地まで転ばないで行けるようになったの。

聖ちゃんの話では澪は言葉、潤は運動の成長が早い。
澪はまだハイハイなのに潤は歩いているんだから。
そう考えると同じ母親から生まれたのにもこんなに個人差があることに僕は驚いた。

*

昌
僕は嬉しかったです。澪がーーー、パパって・・。あんな小さい体で僕に向かって・・・

そう思うだけで涙腺が崩壊しそうで僕はそのまま言葉を飲んだ。

聖
教えてあげられなくてごめんね。次に会った時に驚かせてあげたかったの。それと急に来てごめんね・・・

少し小さくなって僕に語る聖ちゃんは僕の手を握った。

昌
どうして謝るんですか?連絡取れなくて正直焦りましたけど、それだけは少し怒ってますけど。でも会いに来てくれて凄く嬉しかったです。
聖
ーーーなら良かった。

僕に微笑を浮かべて少しだけ目に浮かんだ涙を彼女は自分で拭った。

打ち上げの開始時間が来て僕たちはすぐさま会場内に向かった。
会場内に入ると土屋部長夫婦はもちろん、
福岡でお世話になったメンバーに僕がしらないような人たちがたくさん集まっていた。
「こんなに大きなイベントなんだ、知らなかった」
「それだけ大きな仕事を手がけたってことだよね、晶くん頑張ったね。」
その言葉だけで僕は胸がキュンとなった。
嬉しくてくすぐったくて、
ここがイベント会場でなかったら今すぐ聖ちゃんを抱きしめていただろう。
そんな気持ちを我慢して僕たちは1時間半を過ごし、
子供達が泣いたと母さんから連絡を受けたのでそのまま聖ちゃんは授乳へと向かった。

*

「多分、聖ちゃんが母さんに付いて来て欲しいって頼んだんだよね?仕事もあったのにありがとう。」
僕は聖ちゃんが子供達におっぱいをあげている間、
久しぶりに母さんと2人の時間を過ごした。
「何言ってんの、私が付いて行くって言ったのよ。晶の会社の部長から福岡に一緒に行かないか、と連絡を受けて悩んでた彼女に私が一緒に行くことを提案したのよ。じゃないと小さい子供2人を連れて1人で飛行機は乗れないわよ。」
「ーーーありがとう。」
「晶、母さんは間違えていたのかしら。」
「えっ?」
「さっきのあなたと聖さんの姿を見てて、凄く幸せそうに話していたわね。母さんはーーー、あの時あなたたちのこの幸せを奪ってしまったのかしら?あの時、ちゃんと晶と彼女の気持ちを受け入れて認めてあげていたらもっと早く一緒になれていたんじゃないかしら。晶のためって思っていたことだけど、母さんは2人を不幸にしてしまったのかしら。」
母さんはいつからか聖さんと呼ぶようになった。
「あの時母さんが反対してくれたから今の僕たちがあるんだよ。母さんは僕たちのことを考えてくれた、あの時は理解できなかったけど今では感謝してるよ。ありがとう。」
僕は母さんの瞳から落ちた涙を見逃さなかった。
本当のことだからーーー。
あの時認めてくれていたらどんなに良かったか、
それを思うことは確かにある。
だかどあの時母さんが反対してくれたから、
僕はこうしてきちんと働いてそれなりの地位を貰うことができている。
あの時ーーー、聖ちゃんと一緒になっていたら。
きっと聖ちゃんを養うどころか澪と潤にも出会っていなかった。
ーーー辛い過去だったけど、
僕のためを思ってしてくれた母さん。
聖ちゃんを思ってしてくれた母さん。
今は感謝しかない。

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