家族みんなでご飯を食べ、
僕は久しぶりに潤にご飯を食べさせた。
たったこれだけのことなのに本当に嬉しくて幸せを感じたーーー。
そして、僕は聖ちゃんにお願いをした。
ダメになってしまった彼女のお誕生日をもう一度お祝いさせて欲しい、と。
*
1週間、2週間と過ぎ年末年始の多忙な時期を終え僕たちはやっと平和な時間を取り戻しつつあった。
僕も平常業務に戻り、
聖ちゃんも休むことない育児に追われる毎日に戻った。
そして約1ヶ月も遅れて僕たちはお誕生日と結婚記念日をお祝いする約束を取り付けた。
前回と同じお店ーーー。
ここのお店は予約が取りにくくて有名なイタリアン、
ただ幸いにも部長の知り合いが勤めているレストランだったので僕は融通をきかせてもらった。
僕は愛しの聖ちやんに微笑んで会社を出た。
どうか今回は何事もなく無事にお祝いできますように、と祈りながら。
*
予約時間よりも早めに到着した僕は緊張を隠せないでまるで小さな子どものように胸をドキドキさせて彼女の到着を待った。
普段行かないような小洒落たお店でシャンデリアなんて付いていてお店自体も暗い。
その雰囲気が僕を余計に緊張させた。
暫くして聖ちゃんが到着すると僕は目を疑った。
髪の毛をアップにして真っ黒いドレスを着用した普段見慣れない彼女の姿が目に入ったからだ。
普通に答えたつもりが声が裏返って彼女に笑われた。
話を逸らしたくて僕なぶっきらぼうに彼女にドリンクメニューを渡し、
聖ちゃんはノンアルカクテルを頼んだ。
やっぱりどう考えてもこのシチュエーションは不思議だ。
大好きな聖ちゃんと僕がこうしてお酒を共にする日が来るなんてーーー。
想像することさえ許されなかった当時から、
現実に物事が動いている、
だから嬉しさ以上に不思議という気持ちが強かった。
続々と前菜からメインまで運ばれて来て、
これ以上食べられないと言うほどまでに僕たちは食べた。
特にデザートに関してはお店からのプレゼントということでメッセージプレート付きのホールケーキまでも用意されていたから胃が破裂するんじゃないかと思ったくらいだ。
着々と子供たちを実家に迎えに行かなければならない時間が迫って来た時に聖ちゃんからお礼を言われて僕は泣きそうになった・・・。
僕の言葉に聖ちゃんはニコッと微笑んだ。
滅多に見ない聖ちゃんのアップ姿、
そして真っ黒なワンピースにそそられてーーー。
僕は帰りたくない・・・、と心からそう思った。
子供たちも大切だけど、
今は2人だけの時間を大切にしたい、
そう思ってしまったんだ。
だから気がつかなかった、
自分の心の声が出ていたことなんて。
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