聖ちゃんの覚悟を彼女の視線から感じ、
僕は何も言うことが出来なくなってしまった。
ただーー、
彼女の誠意を受け取ったと言う印として膝の上に置いてあった彼女の左手を誰からも見えないように僕の手で強くしっかりと握りしめた。
*
「優さ、そんなこと今更聞いてどうすんの?」
香坂からの実際の中学時代に何が起こったのかと言う質問ぜめで答えに悩んでいた聖ちゃんの返答待つことなく割り込んだのは岩崎だった。
「興味本位?だって私が黒岩と末永を再会させてあげたも同然でしょ?だったら知る権利あるかなーって!」
僕は完全に香坂に対して切れていたと思う。
これ以上聖ちゃんを困らせたくなくて僕は割り込んだのに・・・
聖ちゃんは僕の言葉を制止してさらに割り込んできた。
聖ちゃんは下で繋がれている手にもっと力を込めて握りしめてきた。
そして、その言葉を聞いて香坂は何か言いたそうだったけどグッと堪えていた。
そんな香坂の表情を受け取った聖ちゃんは話を続けることにしたんだと思う。
( じゃあ噂って本当なの? )
嫌でも耳に聞こえる同級生の声ーーー。
聖ちゃんは僕の手を離し、その場に立ちみんなに深くお辞儀をした。
ーーーまるで自分の行いを詫びるように、涙が床に落ちたのが見えた。
聖ちゃんの涙が何粒も床に落ちていたーーー。
もう良いーーー、
そう思ってオレは席を立って彼女を座らせようとした。
「ーーーオレは素敵だと思いますよ、そういうの。」
「えっ?」
深くお詫びをする形になって頭を下げていた聖ちゃんに九重が声をかけた。
なんでいつも大事なところをこいつに持って行かれるのだろうか不思議でならないけど、
九重の言葉で聖ちゃんは顔を上げた。
「純愛っていうの?オレは中学の時に先生と出会って変わっていく黒岩を目の前で見ていたからすげー応援したいっていつも思ってましたよ!」
「ーーーありがとう、九重くん。」
僕は今度こそ立ち上がって聖ちゃんの肩を引き寄せた。
えっ?、と驚く聖ちゃんに僕は微笑んで驚いてるクラスメイトの方に向いた。
驚いたのはクラスメイトだけではなく、
聖ちゃん自身もだった。
僕は今度こそ用意していた婚約指輪を彼女にひざまずいて差し出した。
女子からの悲鳴、
男子からの応援の声ーーー。
何も耳に入ってこないけど目の前にいる聖ちゃんは嗚咽を鳴らして泣いている。
その言葉で僕は彼女の指に婚約指輪をはめた。
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