【 中学聖日記_妄想 】#34. 父さんに会いに*

中学聖日記_妄想

思い立った時の聖ちゃんの行動は本当に早い。
僕は3日の有給をもらうことが出来て、
週末を挟んで計5日間も休むことが出来た。
こんなに長い休みをもらったのは仕事を始めてから初めてで少しの罪悪感を残しながら、
聖ちゃんと過ごせる日々に幸せを噛み締めていた。

有給初日の朝から聖ちゃんは大忙し。
数日家を空ける予定だからと掃除洗濯、
そしてボストンバックには結構なほどの荷物を詰め込んでいた。
船は夜だからそれまで少しのんびりして、
僕たちは午後一番で都内を出発したーーー。
船に乗ってしまえば到着するのを待つのみ、
僕は緊張と同じくらいワクワクがあった。
久しぶりに会える父さんへの報告の緊張と嬉しさもあったけど、
なによりもこうしてみんなに認められてから初めて聖ちゃんと旅行というものに出かけているんだから。
彼女がそのことに気がついているかは別としても、
僕は聖ちゃんと過ごせる5日間の方がなによりも楽しみだった。

*

山江島に着いた僕たちを迎えてくれたのは言うまでもなく父さんで会った瞬間にギュッと抱き締められた。
ただ僕は何も伝えてないのになぜ父さんがここにいるのが不思議で。
でもそれは聖ちゃんしかいなくてーーー。
そんな僕の気持ちもお構いなく父さんは言った。
「先生も疲れたでしょう?相変わらずの汚い家ですけど、いくらでも泊まっていってください」

本当に相変わらず汚くて動く場所が限られている父さんの家、
だけど僕はそこがとても居心地が良いんだ。
「父さん」
僕は父さんが家具を作ってる作業場に顔を出して声をかけた。
ちょっと振り向いただけでまたすぐ作業に取り掛かった父さんは相変わらずのツンデレだと思う。
「ーーー元気そうで安心したよ」
「父さんこそ。オレ・・・立派な男になったよ。母さんを何年かけてでも説得する努力したよ。聖ちゃんを1人で守れるような男になったよ。」
「そうか・・・ーーー」
「だから、聖ちゃんと結婚したいと思ってるんだ」
父さんは何も言わなかったーーー。
ただ黙々と作業を続けていたから、僕はその場を去ろうとした。
「ーーー今度こそ、先生を幸せにしてあげなさい」
作業場から出る瞬間、
優しい父さんの声が耳に響いた。

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