【 中学聖日記_妄想 】#114. もう少しだけ時間をくれ*

中学聖日記_妄想

僕たちは程なくして空港に向かった。
向井さんと僕に遠慮して聖ちゃんは別々に向かおうとしていたけど、
「あれだけ見せつけて今更遠慮?(笑)」と向井さんに言われたことでみんなで一緒に空港に向かった。

*

僕の座席は向井さんの隣。
流石に座席ばかりは聖ちゃんも遠慮していたし、
子供たちもいたので迷惑かけたくないということで母さんと聖ちゃんたちは後ろの席に座った。

「ーーーなんか巻き込む形になってすいません。」
飛行機が離陸すると同時に僕は先輩に謝罪した。
「モテる男は辛いよなぁ(笑)」
佐々木さんに関して言えば明らかに昨日は向井さん目的だったのに突然僕に切り替えていたから僕自身も心の整理がついていなかった。
女心は秋の空、という言葉の通りだと思う。
女の人の心は変わりやすい、そう言った意味でも聖ちゃんは珍しいタイプなのかな。
「まぁ珍しいものも見れたし良かったよ。」
「珍しいもの?」
「お前・・・奥さんに相当愛されてんだな(笑)元教師だって言うしもっとしっかりしてる人だと・・・お前が守られてるんだなって思っていたけど・・・聖さんは黒岩が守ってるんだなって2人を目の前で見て思ったよ。きっとこの先にライバルが現れても誰も入る隙間もないくらいにお前たちは繋がってると思ったよ。」
先輩は少し遠い方を向いて言ってたーーー。

以前僕が先輩を会社で呼び出した時、彼は言った。
聖ちゃんに惹かれてしまったと。
だけど邪魔するつもりもない、とも。
今、先輩の気持ちはどこにあるのだろうか。
「ーーー先輩は・・・」
そんな僕の言葉を遮って先輩は続けて言った。
「お前たち夫婦を見てると俺も恋をしたくなる。お前の奥さんに惹かれたのもきっと相手が黒岩だからだなぁ。完全に吹っ切るまでには少し時間をくれ、だけど邪魔は絶対にしない、そこは約束する。」
先輩はそのまま目をつぶって眠ったフリをしたんだと思う。
「ーーーありがとうございます。」
僕の言葉が耳に入ったかどうかまで分からないけど、僕は先輩として向井さんを持てたことを誇りに思った。

きっとーーー、普通の恋ならば譲ったかもしれない。
先輩の気持ちの方が強かったなら譲ったかもしれない。
だけどーーー、
聖ちゃんだけは。
彼女だけは何かを犠牲にしても譲れない。
ーーー僕が最初に愛し、最後に愛する女性だから。

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