次の日の朝、
僕はやっぱり目覚ましの音で起きることは出来なかった。
いつもはギリギリまで寝かせてくれて起こしてくれる聖ちゃんの姿もこの日はいないーーー。
だからなのか、見事に僕は寝坊した。
ギリギリで会社に着いたけど、
ここ数週間の残業による毎日の寝不足と昨日の聖ちゃんの行方知れずで僕の心は仕事どころではなかった。
だけど始業時間を知らせる10時直前、
僕の携帯に一通のメールが届いたことを知らせるピロリン♪という音が聞こえた。

僕は愕然としたーーー。
入院!?
聖ちゃんだけではなくお腹の子たちは大丈夫なのか。
何も知らない俺は不安で、
目の前にいた部長に頭を下げた。

僕が結婚していること、父親になろうとしていることは一部の人間しか知らない。
「黒岩くん、頭をあげなさい。君はとても優秀でまだ2年目なのによくやってくれている。今、奥さんが大変な時ならこちらのことは気にせず有給を使いなさい。有給をきちんと使うことも仕事の1つですよ。私達の仕事はチームで成り立っています、今日の分は普段の黒岩くんの力で補ってもらってます、だから気にしないで付いててあげてください。」
もちろん部長は知ってるしチームメンバーは知ってる。
この部長からの言葉で僕はチームメンバーを見て誰1人嫌な顔をしてなかった。
「早く行けよ、奥さん待ってんじゃないのか?」
昨日残業も早退させてもらったのに先輩達は快く僕を会社から追い出した。
会社を後にして僕はひたすら走ったーーー。
タクシーを捕まえようにも捕まらなく、
ひたすら駅まで走った。
電車で二駅、病院がある駅に着いてまた走った。
ーーー産科に向かい、聖ちゃんの病室を確認する。
そして僕はもうずーと聖ちゃんの検診にも付いてこれていなかったことや、
検診のことを聞いていなかったことに対して後悔の念を抱いた。
*
「痛いね、痛いよね。赤ちゃん頑張ってるからね、お母さんも頑張ろうね。」
中から聞こえる看護師さんの声に足を止めた僕は、
大きな深呼吸をして中を覗いた。
ーーーそこにはお腹を抱えて痛みに耐えて汗を流し苦しそうな表情をしている聖ちゃんの姿があった。
「大丈夫、すぐ良くなるからねーーー・・・」
そう言いながら薬を投与する看護師さんの手を彼女は強く握っていた。
「・・・」
何かを伝えたいのに言葉に出なく、痛みに耐えてる姿を僕はこれ以上見ていられなくてその場を去ってしまった。
コメント