結局次の日も僕は聖ちゃんの顔を見ることなく朝を迎えたーー。
早く起きて「おはよう」と言おうと思うのに、
早く起きれない自分が悔しい。
*
僕はコーヒーを片手に、
テレビを見ながらふとここ数ヶ月のことを思い返してみたーーー。
聖ちゃんが新しい職場で働き出してからまともに会話してない。
職場が遠いこともあり朝は早く、
逆に残業の多い僕が遅くて先に寝てることもしばしばある。
ーーーこのすれ違いが聖ちゃんに何か不安をもたらしているのではないかと僕は考えた。
早く帰ってきちんと話そう、そう思ったのに・・・
僕が帰った時、既に聖ちゃんは布団に入ってた。
ーーー違う、正確に言えば玄関に入った音を確認してパタパタと逃げるように寝室に入る聖ちゃんの足音が聞こえたんだ。
頭に血が上った僕は聖ちゃんのかぶる布団を取り上げた。
本当は怒って怒鳴りたかったーー、
なのに嗚咽を殺して必死に声を我慢してる聖ちゃんを見て僕は何も言えなかった。
ただ彼女の側に座って聞いたんだ。
聖ちゃんはただ首を横に振り、
僕は彼女を起こし、抱きしめてーーー。
背中をさすることしか出来なかった。
しばらくして落ち着きを取り戻した聖ちゃんが発言した一言は信じがたい言葉だった。
何で?オレ、何したの?
感情的のぶつかり合いがとまらないーーー。
聖ちゃんは僕に訴えるように僕の胸ぐらをドンドンと叩き、また涙を流したーーー、
僕には止められないくらいの大粒の涙を。
聖ちゃんの抱えていた感情を知って、
僕を求めていたことを知ったーーー。
僕は聖ちゃんの気持ちを尊重して自粛していたつもりだけど、それが逆に彼女を傷つけてしまっていた。
「ーーーごめん。顔洗ってくる・・」
立ち上がる彼女の腕を掴んで僕は強く彼女を後ろから抱きしめた。
聖ちゃんは彼女の胸元にある僕の腕に軽く触れ、
ギュッと握った。
「ーーー取り乱してごめん。どうかしてたよね、うん。」
「ーーー聖ちゃん、僕は今すぐあなたを抱きたい。」
話はその後で、というのはやめておいた。
聖ちゃんの不安は全て受け止めたつもりだから。
聖ちゃんは合意のサインを出すように、
僕に向き直して「黒岩くんが好き・・」。
そう言ってキスを落としてくれたーーー。
その先のことはもう僕は雷を落としたように、
彼女に襲いかかったと思う。
久しぶりの感触、
彼女の嬉しさから出る涙も、
僕を見つめるその瞳も。
全てが愛しいーーー。
まるで天使みたいだ。
ーーーいつぶりにこんな幸せそうな彼女を見るのだろうか?
僕は彼女の両頬に手を添えて、
またキスの嵐を降らせた。
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