【 中学聖日記_妄想 】#31. 溢れ出した感情*

中学聖日記_妄想

結局次の日も僕は聖ちゃんの顔を見ることなく朝を迎えたーー。
早く起きて「おはよう」と言おうと思うのに、
早く起きれない自分が悔しい。

*

僕はコーヒーを片手に、
テレビを見ながらふとここ数ヶ月のことを思い返してみたーーー。
聖ちゃんが新しい職場で働き出してからまともに会話してない。
職場が遠いこともあり朝は早く、
逆に残業の多い僕が遅くて先に寝てることもしばしばある。
ーーーこのすれ違いが聖ちゃんに何か不安をもたらしているのではないかと僕は考えた。
早く帰ってきちんと話そう、そう思ったのに・・・

僕が帰った時、既に聖ちゃんは布団に入ってた。
ーーー違う、正確に言えば玄関に入った音を確認してパタパタと逃げるように寝室に入る聖ちゃんの足音が聞こえたんだ。
頭に血が上った僕は聖ちゃんのかぶる布団を取り上げた。
本当は怒って怒鳴りたかったーー、
なのに嗚咽を殺して必死に声を我慢してる聖ちゃんを見て僕は何も言えなかった。
ただ彼女の側に座って聞いたんだ。

昌
オレ・・・なんか嫌われることしましたか?僕のこと避けてますよね?

聖ちゃんはただ首を横に振り、
僕は彼女を起こし、抱きしめてーーー。
背中をさすることしか出来なかった。

聖
黒岩くん、わたし、しばらく留守にしても良いかな・・?

しばらくして落ち着きを取り戻した聖ちゃんが発言した一言は信じがたい言葉だった。
何で?オレ、何したの?

昌
何で・・?オレ、聖ちゃんに嫌われたの?
聖
違う。黒岩くんのこと好きだよ。
昌
だったら何で・・・?
聖
辛いの!今ーーー、黒岩くんと一緒にいるのが辛い。
昌
なんで!?オレは嫌です!聖ちゃんと一分一秒とも離れたくないです!そんなの認めない・・・
聖
黒岩くん、わたしのこと女として見てないじゃない!赤ちゃんがダメになってから黒岩くん、私に気を使ってばかり。顔を伺ってばかり。言いたいことも言えてないでしょ?ーーーそんな黒岩くんを見てるのが辛いの。
昌
離れたらそれが改善されるんですか?
聖
分からない。少なくとも自由になれるんじゃない?
昌
オレは自由になりたいなんて思ってないです!ただ聖ちゃんと一緒に居たい、そう思ってるだけです!

感情的のぶつかり合いがとまらないーーー。

聖
だったらなんで私に気を使うの?あんなに抱いてくれてたのに何で一度も抱いてくれないの?!・・・何で?・・・何で好きって言ってくれないの・・・?不安で押しつぶされそうになるの。こんな自分が・・・嫌なのよ。黒岩くんといるのが辛い・・・。

聖ちゃんは僕に訴えるように僕の胸ぐらをドンドンと叩き、また涙を流したーーー、
僕には止められないくらいの大粒の涙を。

昌
ーーーどうしたら聖ちゃんの不安を止められますか?僕に何ができますか?ーーー聖ちゃんを抱いても良いんですか?

聖ちゃんの抱えていた感情を知って、
僕を求めていたことを知ったーーー。
僕は聖ちゃんの気持ちを尊重して自粛していたつもりだけど、それが逆に彼女を傷つけてしまっていた。
「ーーーごめん。顔洗ってくる・・」
立ち上がる彼女の腕を掴んで僕は強く彼女を後ろから抱きしめた。

昌
聖ちゃんと引き離された時、僕は感情を表に出すことをやめました。ーーー気づいたら感情の出し方を忘れてしまいました。でも僕は聖ちゃんが大好きで誰も見えなくて聖ちゃんさえいれば良くて、それはあの頃と変わらなくてむしろもっともっと大きくなってて。聖ちゃん、それだけは信じて欲しいーーー。

聖ちゃんは彼女の胸元にある僕の腕に軽く触れ、
ギュッと握った。
「ーーー取り乱してごめん。どうかしてたよね、うん。」
「ーーー聖ちゃん、僕は今すぐあなたを抱きたい。」
話はその後で、というのはやめておいた。
聖ちゃんの不安は全て受け止めたつもりだから。

聖ちゃんは合意のサインを出すように、
僕に向き直して「黒岩くんが好き・・」。
そう言ってキスを落としてくれたーーー。
その先のことはもう僕は雷を落としたように、
彼女に襲いかかったと思う。

久しぶりの感触、
彼女の嬉しさから出る涙も、
僕を見つめるその瞳も。
全てが愛しいーーー。
まるで天使みたいだ。
ーーーいつぶりにこんな幸せそうな彼女を見るのだろうか?
僕は彼女の両頬に手を添えて、
またキスの嵐を降らせた。

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