週末、僕は子供たちを母さんに頼んで聖ちゃんを家から連れ出した。
行く先はただ一つ、式場見学だ。
*
あの日を境に聖ちゃんも自分の睡眠を削ってでも調べてくれているのなら、
僕も昼休みを削って聖ちゃんが好んでくれそうな式場をいくつかピックアップした。
そしてそのうちの一つに今向かっているーーー。
僕たちが住む都心部からは片道2時間という少し遠い場所にあるけど、
決して行けない場所ではない。
それでも聖ちゃんはすぐには賛成しなかった。
素敵な場所だけど自分たち本位で結婚式は出来ない、来てくれる人達のことを1番に考えて欲しい、と。
だけど僕はーーー、彼女を一瞬で愛したようにこの式場にも一目惚れした。
僕のこの直感を無駄にしたくなかったから聖ちゃんに頼み込んで見てから決めて欲しいと付いてきてもらった。
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都内から少し離れ神奈川の奥地にその場所はある。
海・夕日・距離を考えに考えた結果、見つけたのがここ。
海辺に立つ白くて小さな可愛らしいお城みたいな結婚式場。
まるで汚れを知らない場所のようーー。
そんな素敵なこの場所でーーー、
聖ちゃんのウェディングドレス姿を想像しただけでも我慢できる自信がないのに。
1日1組が限定だと言う点、
そして料理がどれもこれも美味しそうだということに惹かれた。
僕と聖ちゃんだけの2人だけの空間ーーー、
この場所で挙げたいと強く思ったんだ。
絶対に彼女は気に入る、そう確信した。
*
もうすぐ到着すると言う時に横目で確認すると、
そよ風に吹かれながら微笑み、口笛を吐いている聖ちゃんが見えた。
寒くないのかなーーー、とか僕は現実的なことを考えながら彼女の横顔を見つめる。
長い髪の毛が風になびかれて車内を飛んでいる。
不思議だな、
たったそれだけなのにどうしてこんなにも愛しさが湧いてくるんだろう。
ーーーきっと相手が聖ちゃんだから、だ。

座席に取り残されていた聖ちゃんのもう片方の手に僕は自分の手を添えて彼女に伝えた。
突然のことで驚いてはいたけど、
なんだかとても嬉しそうな表情に見えたーーー。
今、この瞬間が幸せすぎてーーー。
堪らなく怖く感じた。
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