目的地に到着すると、
僕たちは真っ白く覆われた屋敷に目を奪われた。
許された者たちだけが入ることが出来る、
古代の屋敷のような感覚だった。
*
中に入るとすぐに担当の方が案内を始めてくれた。
式場内はとても可愛らしいデザインになっていて女性受けが良さそうだと僕は感じた。
事前に予約していたこともあって実際の式で出されるいくつかのコース料理を試食することも出来た。
シェフが直々に挨拶に来て話をしてくれ、
元々はホテルレストランでオーナーシェフをしていた方がここに移動して来たと話してくれた。
小さい式場だけど、
その分愛情込めて作れることに誇りを持っている、
とまで話してくれ僕はより一層ここで挙げたいと思った。
聖ちゃんはーーー・・・
すごく楽しそうに担当の方とも話しているし、
シェフの方の話も真剣に聞いていた。
僕が気がつくこと出来なかったウェディングドレスの持ち込みの話だったり来客人数や、その他のオプションのことも詳しく話を聞いてはメモを取っていた。
そんな聖ちゃんを見て僕は彼女も気に入ってくれたと思って安心した。
なのに・・・

その場で決めれば色んな特典をもらえて僕は希望日程も伝えて申し込む気満々だったのに、
彼女は保留にしたいと言った。
どんなに説得しても意見を覆さなかった僕たちの討論を見かねた担当者さんが・・・
「10日以内であれば大丈夫ですので、またご連絡致しますね!」
明るくそう言ってくれたことが逆に申し訳なく思った。
*





僕がタメ口になる時は基本的に怒ってる時。
何年も過ごして来たから聖ちゃんもそれは知ってる。
だからハッとしたかのように僕の方を見た。
これ以上話していてもラチが開かないと思った僕は大きく深呼吸をしてそのまま車を発車させた。
その時聖ちゃんが何を考えていたのかは知らない、
だけど僕たちは家に着くまでの約2時間、
一言も口を聞くことはなかった。
*
僕は直接子供たちを引き取りに行くか一度自宅に戻るか迷ったーーー。
そして後者を選んだ僕は聖ちゃんと向き合おうとした。
彼女がコーヒーを入れている、
きっと彼女も同じ気持ちだったと思う。


聖ちゃんらしい答えだとは思った。
僕みたいに自分本位の考えではなく、来てくれる人のことを第一に考える人。
彼女はそう言う気配りの出来る人だから。

聖ちゃんの言うことも分かる、頭では分かってる。
だけど僕は相手を優先しすぎる彼女に苛立ってた。
それが彼女の性格でもあり良いところでもあるのに僕は寄り添うことができなかった。
きっとそれが聖ちゃんにも伝わった。
ーーー彼女は僕を見て悲しそうな顔をした。

僕はーーー、声もかけなかった。
本来なら自分も行くべきだったのに。
クソっ!
思い通りにならない苛立ち、理解してもらえない悔しさに僕はテーブルにあった造花を潰して投げつけてしまった。
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