僕が帰宅したのは夜中2時過ぎ、
久しぶりのタクシーでの帰宅となった。
もちろん聖ちゃんはもう夢の中だった。
次の日の朝ももちろん僕は目覚ましでは起きられず、
聖ちゃんに起こしてもらって焦って支度をした。
朝ごはんも詰め込むように食べ、
聖ちゃんが作ってくれたお弁当を持って急いで会社に向かった。
ーーーいつも玄関先で送り出してくれる彼女を待つこともなく。
「行ってきますも言わないで来てごめん。電車に乗りました!」
それだけ自分の罪悪感を晴らしたいために送ったメール、
いつもなら一言でも返ってくる聖ちゃんからの連絡はどんなに携帯を確認しても既読済みとなるだけで返事が来ることはなかった。
その日の残業が決まったのも8時頃、
今日こそは早く帰りたいーーー。
そう思っていたのにまた僕の希望は崩れ落ちた。
多分、聖ちゃんは今の僕に早く帰ってくることを期待もしてないだろう。
それでも僕は残業を伝える電話をするーーー。
ワンコールで出る聖ちゃん、
でもこの日は出なかった。
何度も何度もコールを待っても出ず、
一度切って何度も掛け直してもこのコールが彼女の元に届くことはなかった。
*
僕は急に不安に襲われたーーー。
聖ちゃんは妊婦、何かあったんじゃないかと。
普段返ってくるはずのメールが来ないのも、
電話に出ないのも何かあったからなのではと急に不安に襲われた。
先輩に頭を下げて残業を早引きして、
無事に会社を出れたのは9時半ーーー。
無事でいて欲しい、笑顔でおかえり、と迎えて欲しいと願いながら10時過ぎに僕は自宅に帰った。
「聖ちゃん!」
玄関のドアを開け、ガムシャラに自宅に入ると・・・
僕の目の前には真っ暗な静かな部屋だけがあった。
ーーー寝室を見ても、狭いマンションの中を探しても、家から出て周辺を探しても聖ちゃんの姿はどこにも見当たらなかった。
そう、彼女は僕と一緒に暮らすマンションから姿を消した。
何かの事情があったのか、
自分の意思で出て行ったのかまでは分からない。
だけどーー、1つ分かることは彼女の持っているボストンバックが消えているということだ。
それでも僕はーーー、
繋がる可能性が低いと分かってても何度も電話して、
彼女が行きそうな思い当たるところを何時間も探し回った。
ーーーでも見つからなかった。
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