結局、その日の業務は向井さんの補佐をすることで無事に終了した。
だけど僕の心はーーー、
言葉に表せられないほどの悔しさでいっぱいだった。
自分自身も、もっと仕事が出来ると思っていたから余計に。
*
聖
まだ初日でしょ?そんなことでめげていたら2週間も持たないよ?(笑)
僕は向井さんと夕飯を食べてからホテルに戻って、すぐに聖ちゃんに連絡した。
時間的に子供達は寝てしまっていたけど、
どうしてもモヤモヤするこの気持ちを彼女に聞いて欲しかった。
昌
そうですけど、ご飯一緒してても全然先輩との話も頭に入ってこなかったですし・・・
聖
晶くんは私と似てるところがあるよね。
昌
似てるところ?
聖
自分で言うのも変だけど真面目なところ。一つを考え出してしまうと何も耳に入らない。だから今の晶くんの気持ち分かるよ、私も経験したことある。
昌
聖ちゃんも?
聖
境遇は違うけど似たことはあるよ。でも経験したからこそ言えるのは、向井さんも晶くんと同じ道を通って来たと思うよ。悔しい思いをしてそれをバネにして努力して今の地位を得たんじゃないかな?悔しい、自分はダメだって思ってしまう気持ちも分からなくはないけどそこで何もかも諦めてしまったら本来の晶くんじゃないでしょ。それで終わっちゃうってもっと悔しくない?諦めないことに対して晶くんは誰よりも自信を持つべきだと思うよ。1人じゃないよ、私たち家族がいて。頼りになる先輩も上司もいる。教える立場もあるかもしれないけど、まだまだ教えられる立場でもあるんだよ。だから頼れる人には頼っちゃえ。
久しぶりに長電話する聖ちゃんとの会話、
本当に心地よくて嬉しくて胸がくすぐったい。
子供達が生まれてから2人で並んで話すことはあったけどこうして電話で話す機会は減った。
だからすごく新鮮で、
彼女の声は本当に僕の胸に響いた。
*
次の日からの僕は分からないことは先輩に聞くようにした。
元々の担当だった僕の邪魔をしないように先輩なりに気を使ってくれていたようだけど、
僕が先輩に率先して聞きに行くから苦笑いをして僕の隣でフルサポートをしてくれるようになった。
そんな日々を迎えて1週間、
一つのシステムがもう少しで出来上がろうとしている。
一つのチームとなって完成に向けてあと一歩。
「この週末は休んで、完成に向けてあと少し頑張りましょう!」
決起つけるかのように金曜の夜は、
福岡のチームのみんなと飲みに行った。
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