お酒の弱い僕は福岡の人たちのパワーに負けそうになりながらも、
無事に日付を超えてホテルに戻った。
*
人生で初めて頭痛を抱えて目覚めたーーー。
こんな経験2度としたくないと思うほど頭が壊れるくらいに痛く、体もだるい。
だけどすでに癖になってる枕元にあった携帯を手にして僕は聖ちゃんに連絡を取ろうとした。
だけどそれ以上に体のだるさが勝り、僕はまた眠りに落ちた。
結局、僕が目を覚ましたのは夕方6時前。
時計を見て焦った僕は急いで携帯を開いて聖ちゃんからの何回かあった着信に愕然とした。
ーーー大好きな会いたくて仕方ない彼女からの着信にすら気がつかないほど寝ていたなんて、
自己嫌悪に陥った。

すぐに折り返した電話ですごく申し訳なさそうに彼女は言っていたけど、僕には前科があるから彼女を不安にさせてしまったんだと思う。


反論しようとした聖ちゃんだけど、澪に電話を奪い取られて僕たちの会話は途中で中断された。
その代わりに澪が喃語と呼ばれる赤ちゃん特有の言葉を発していてぼくは頰が緩んだ。
ちょっと離れていてもこんな幸せな気持ちになれる、
それがすごいなと感じた。
家族という大切な人たちと電話越しで会話するだけでこんなに幸せな気持ちになれることがただ嬉しかった。
*
「1週間、出張を伸ばしてもらえないか?」
そう提案されたのは月曜の朝のことで、ぼくは頭が真っ白になった。
「えっ・・・」
「黒岩くんは新婚さんだと聞いたよ、お子さんもいると。そんな時にこんなことをお願いするのは心苦しいんですけど、ダメでしょうか?」
「いえ、大丈夫です。」
ぼくは幸せだった気持ちからどん底に落ちたけど部長直々のお願いであれば聞かないわけにはいかない。
向井さんが言うにはシステムが完成してきちんと作動することを確認出来たら大きなイベントを開くという、
そのイベントに僕たちも参加して欲しいと頼まれたと教えてくれた。
「ちなみに土屋部長も来るらしいぞ。」
と、東京でお世話になってる僕たちの部長もこのイベントに参加することを教えてくれた。
出張が1週間長引いたとはいえ、仕事は仕事。
ぼくは気持ちを切り替えるように仕事に専念した。

聖ちゃんの心温かい言葉がどれだけぼくを救ってくれたか計り知れない。
聖ちゃんの「頑張って」という言葉だけを糧にぼくはひたすら仕事に没頭した。
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