どうしてよりによってこんな日に限って残業なんだ。
聖ちゃんが待っているーー、
急ごうとすればするほど空回りしてうまく進まない。
待ち合わせの海に着いたのは9時過ぎ、2時間以上の遅刻だ。
待つわけないと僕は携帯を取り出そうとしたーー、
んだけど浜辺に座っている1人の女性が見えたんだ。

昌
聖ちゃん!
暗闇の中、僕は彼女のいるところに走った。

聖
あっ、黒岩くん?来てくれたんだ・・・

昌
なんでまだいるんだよ?!

聖
ゴメンね?あと10分、あと10分って思いながら待っていたら2時間もたっちゃってて・・。

昌
なんで無茶してんだよ。風邪ひくよ?どこか入ろう。
どんなに暖かくなって来たとはいえまだ5月だ。
当たり前だけどこの辺は何もないーーー。
僕は彼女の冷えた手を無理やり繋いで自分のコートのポケットに突っ込んだ。
僕たちが行き着いたのは電車のホーム。
生暖かい待合室に入り2人隣り合わせで座る。
小刻みに震える聖ちゃんは、
ずーと待っていたせいで体が冷え切ってしまったんだろう。

昌
連絡出来なくてゴメン。今日に限って仕事が立て込んじゃって、電車の中とか連絡しようと思えば出来たのにゴメン。

聖
大丈夫だよ。待ってるって言ったのはわたしなんだから。
聖ちゃんは僕にニコッと笑った。
ーーーそして僕は聖ちゃんを強く抱きしめた。
何か分からないけど、
愛しくてたまらなくて。
抱きしめずにはいられなかった。
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